日々新しくなっていくガジェットやテクノロジーは、ついつい気になってしまいます。最新のガジェットや技術を取り入れながら、賢く生活するのはいいのですが、中毒のように取り憑かれてしまうと手に負えません。新製品が発売されるとすぐに飛びつく人は要注意です。今回は、ハイテク中毒やハイテク疲れにならないための方法をご紹介しましょう。

ほとんどの人は、最新のガジェットやハイテク製品をまったく使わないか、大量に使いまくるかの、どちらかを選べずにいます。まず最初に、ハイテク中毒やハイテク疲れがどのようにして起こるのかを、ご説明しましょう。そうすれば、どのようにその問題を避ければいいのか見えてきます。

■ハイテク時代の問題点

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●中毒になりかけの状態

テレビゲームが脳内のドーパミンを放出する引き金となるという研究結果には、もはやそこまで驚くこともないでしょう。ドーパミンが放出される理由はいくつかあって、その一つは自分のやっていることが自分にとって得かどうか、ということです。例えば、何かを食べたり、セックスしたりしている時にドーパミンが放出されるのは、人類として生きていくために必要な行為だと、体が認識しているからです。テレビゲームでドーパミンが放出されるのも、生きていくために必要な行為ではないですが、快楽という意味では同じような理由です。他には、ニコチンカフェインでもドーパミンが放出されます。

テレビゲームのように、様々な中毒行動でもドーパミンは放出されるようになってきました。メールをチェックする行為も、そういった中毒行動の一つなのです。メールのチェックに時間をかけたくないと思いながら、しょっちゅうメールをチェックしてしまっていませんか? メールの受信音(もしくはバイブ)が鳴ると、メールが来たというのが分かります。これが実はくせ者で、時間を決めてメールをチェックせずに、受信があった時にメールをチェックするようにしていると、受信を知らせる音が鳴った瞬間に、実際のメールが返信を待っていたものか、どうでもいいスパムかに関係なく、メールに対する期待値がマックスになってしまうのです。

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最初にパソコンを手にしたような時代は、このような問題はまだありませんでした。パソコンは今ほど莫大に普及していませんでしたし、スマートフォンのような、気軽に持ち運べるようなものがなかったからです。前述のように、今では一日に何度もメールをチェックできます。マルチタスクの賢いスマートフォンがあれば、どこにいてもメールをチェックできます。便利な環境を手に入れたからこそ、技術をうまく使いこなして情報を入手、発信したいものですが、逆に、大量に溢れる情報をどう精査すればいいのか? というジレンマに陥ってしまっているのです。

●大量に溢れる情報のフィルタリング

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現在私たちが手に入れられる情報は、50年前の約3倍だと言われています。しかし、情報過多の問題は、今に始まったことではありません。活版印刷の発明のお陰で、1500年頃には人が一生のうちに読む以上の量の本があったといいます。現代では、信じられないほど大量の情報を手に入れることができますし、しかもそれは増え続けています。まるで伝染病のように情報が増殖していく様子を、ただ眺めているような状態です。これは情報過多の問題を、ある意味許容している状態とも言えます。インターネット技術の社会や経済に対する影響について研究している、大学の教師でありライターのClay Shirkyさんは、間違った情報フィルタリングのもたらす問題(英文記事)について、次のように指摘しています。


「インターネット以前から使っている情報に対するフィルターは、現在オンラインで直面する膨大な情報に対して全く有効ではありません。情報過多の問題というのはまったく新しい問題ではなく、むしろ今や問題ですらなく、どの情報にフォーカスするかという、新しい情報フィルタリングの方法を模索する必要があるのです。」

●テック・エチケット

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フィルタリングが必要なのは情報だけではありません。ノートパソコンやスマートフォンを使う時もまた、問題が起こりやすいです。この10年で発売されたデバイスの新製品の数は、膨大過ぎてそれをどのように使うべきか、という社会的なルールがほとんど無いような状況です。運転中に携帯メールを送るなんてバカげた行動は、慎むべきだと誰もが思っていても、それをやっている人はたくさんいますよね。

また、誰かと一緒にいる時は、その相手に対して配慮するのが、当然のエチケットです。にもかかわらず、ディナーの間にメールをチェックしたり、返信したりするのはマナー違反かどうか(英文記事)、未だに頻繁に議論されています。映画の上映中におしゃべりするのはNGでも、携帯電話の画面を光らせて、周りの人の気を散らすのはOKですか? 何かいい解決方法はないものでしょうか。新しく発売されたデバイスにそそられてしまうのは、もちろん問題ではありません。そのデバイスが普及して頻繁に使われるようになって、使うことでドーパミンが放出されるようになると、問題が起こってくるのです

テック・エチケットというのは、周りの人とどう付き合うかという点で重要なのではなく、新しいデバイスや技術をどう使い、どう制限し、どう管理するかという点が重要なのです。四六時中すべてのメールに即レスする必要はないはずなのに、メールにはできるだけ早く返信するのが大人のマナー、というような新しいエチケットが生まれています。リアルの世界の優先順位を無視して、デジタルの方を優先しようとすると、問題が悪化していくのです

 ■解決方法

ここまでハイテク中毒やハイテク疲れの原因となる問題をあげてきましたが、ではそうならないためにはどうすればいいのでしょう? 劇的によくなる方法ではありませんが、きちんと取り組めば、着実にハイテク中毒やハイテク疲れから解放される方法を、ご紹介したいと思います。

●目にしないようにする

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何でもできる便利なデバイスを1つ持っているとすごく良さそうですが、何でもそれに頼るような状況になると問題になってきます。携帯電話やスマートフォンを、時計代わりにも使っている場合などは、ポケットやバッグから外に出ていることが多いので、必然的にメールもチェックしたくなります。時間をチェックするのなんてほんの数秒ことなのに、それをきっかけにすぐには必要のない操作(メールのチェックなど)をダラダラとしてしまうことになるのです。これが1つのデバイスに何でも頼らない方がいい、という一例です。

もちろん、ポケットから携帯を取り出せば何でもできるというのは理想的ですし、便利なのは間違いありません。ですが、時間を見るのは携帯以外を使うようにするとか、メールをチェックする頻度を少なくするとか、もう少し携帯を取り出さないように自分を戒めた方がいいでしょう。それができないようなら、いっそのこと携帯は持ち歩かないとか、夜遊びに行く時は電源を切っておくというような荒療治もアリです。最先端のテクノロジーは、何でも簡単にしてくれるように思えますが、そのデバイスを扱うことによって新たな問題が生まれて、逆に困ったことにもなり得るのです。何でもかんでもハイテクなものに頼らないやり方が見つかれば、段々と使う頻度も減ってくると思います。

●マルチタスクをやめる

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マルチタスク神話(英文記事)を信じている人はまだまだいると思います。一度にいくつものことをこなしているマルチタスクの状態というのは、実は異なる行動それぞれにすばやく意識を向けているということです。走りながら音楽を聴いたり、郵便物の仕分けをしながらテレビを見たりするのは、別に同時にやったところでそれほど支障はないでしょう。しかし、技術の進歩によって、同時にできないようなことまでも一緒にできるようになっています

例えば、テレビを見ながらメールの受信箱を整理したりすると思います。そういう時は、多分どちらにも集中できていないことに気付くでしょう。なんとなく寂しいからテレビをつけているだけというような状況であれば、特に問題はないかもしれません。ですが、見たい番組を見ながら何か他の仕事や作業をしていると、おそらく自分の手がしょっちゅう止まっていることに気付くはずです。ありがたいことに、今のご時世録画という機能がありますので、後でいつでも見たい時に見てください。一般的に、一度に一つのことをする方が生産性は上がります

他のことに注意を払いながら何かをしようとしている時は、問題が起こりやすいのです。新しいデバイスやハイテク製品を使い始めるということは、それに掛かりきりになって、他のことができない時間を増やすという意味で、問題をさらに悪化させます。本当にやらなければならないことがあるのに、注意力が散漫になる状態を無視しているようなものです。このことは、テック・エチケット問題が浮上する前から、社会問題として議論されてきました。最先端の技術を使っていい習慣を身につけたいのであれば、一度に使うデバイスは一つと決めてマルチタスクになることを避け、リアルのコミュニケーションをデジタルのコミュニケーションよりも優先させるように心掛けましょう

●即レスできなくても謝らない

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「さっきは、電話に出られなくて/メールに返信できなくて、ごめんね。スポーツジムの中の電波が悪くて...」こんな台詞を、誰もが一度は口にしたことがあると思います。こんな時は、エクササイズの最中に電話やメールをできなかったことも、電波状況が悪かったことも、謝らなくていいのです。いつからか、私たちはすぐに電話やメールができなかったことに対して、謝るようになってしまいました。こういう風に頻繁に謝っているようなら、即レスの奴隷みたいなものです。このようなシチュエーションで謝るのはもうやめましょう。電話もメールも、自分ができる状態にある時に、自由に対応すればいいのです。すぐに返答しなくても、それは友だちや家族、同僚をないがしろにしている訳じゃなく、自分の都合に合わせて返答するということだと、周りの人にも知らせておきましょう。即レスしないのは失礼、というような暗黙の義務から解放されると、過敏にメールをチェックするような習慣からも解放されるようになりますよ。

●手に入る情報を整理する

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情報過多の状態とうまく付き合う方法の一つとして、実際に情報を整理するのも有効です。当たり前だと思われるかもしれませんが、人は実際に整理するよりも、どう整理するか考えるだけということが多いのです。もし、まだ情報を整理していないのであれば、今すぐ始めてください。中でも、メールの整理はかなり大変な作業になるかもしれません。Gmailの新機能「優先トレイ」(記事中盤)は、受信トレイから重要なメールだけを振り分けてくれる便利な機能なので、こういうものを活用するのもいいでしょう。ChromeやFirefoxのアドオン「Boomerang」を使えば、メールの送受信日時を指定できます。また、すべてをメールで行うよりも、スピードやタイミングに合わせてコミュニケーションの方法を変える、というのも楽になる一つのアイデアです。iPadやスマートフォンなど、自分の持っているデバイスに合わせて、情報を整理するというのもいいでしょう。一度情報を整理したとしても、実際に運用し始めたら情報のフローに合わせてシステムを変更して、徐々に進化させていくことも大切です。

新しいガジェットや技術は便利なものだからこそ、適切に使いこなせるようにしていきたいものです。自分でも気付かないうちに、ハイテク中毒やハイテク疲れになっていないか、時々チェックしてみてください。

Adam Dachis(原文/訳:的野裕子)