2012.02.23
# 雑誌

ぶち抜き大特集 これでは子や孫の世代に申し訳ない いま35歳以下の日本人はかわいそうすぎる
老人3000万人の面倒を見る

時代は「若者はけしからん」から、「若者はかわいそう」論に変わりつつある〔PHOTO〕gettyimages

生まれた時点で借金8309万円

「経済成長も、世界の注目を集める革新的な発明も、これからの日本で起こるとは思えない。ですから、若者たちは『経済的に豊かになる』という価値観を捨て始めました。これまでは親と同等か、あるいはそれ以上に経済的に豊かな暮らしを送るのがひとつの目標でしたが、『もう親を越えるのは無理だし、地元で仲間と楽しく過ごそう』と、価値観の転換を図っています」

 元フリーターで、若者の生きづらさをテーマにした共著もある、津田塾大学の萱野稔人准教授は、若者が置かれている状況をこう説明する。

 若者たちが経済的な豊かさを諦めるのも無理はない。彼らが今後、どれだけの経済的負担を強いられるかはデータや試算をみれば一目瞭然だ。

 2月6日、年金に関する内閣府の衝撃的な試算が明らかになった。現在57歳より下の世代は、保険料を支払う額のほうが、年金を受け取る額よりも多くなるというのだ。

 薄々気づいていたことであるが、具体的な数字を突きつけられると、改めて背筋がゾッとする。

 たとえば1950年生まれ(今年62歳)では生涯の保険料の支払い額1436万円に対し、受取額は1938万円と、502万円ほど「得」をするが、'60年生まれであれば保険料の支払い額が2066万円なのに対して、年金受け取り額は1783万円と283万円のマイナス。その下の世代はさらにマイナス分が大きくなり、'75年生まれだと588万円、'85年生まれでは、実に712万円も「損」をする計算だ。

 払えば払うだけ損になる---。そんな年金制度を信用できるわけもなく、社会保険料を納付しない若者が急増するのも無理はない。事実、35歳以下の若者の半分が、保険料を納付していないというデータもある。

 損をするのは年金だけではない。道路やダムといった社会資本や、医療・介護などの公共サービス全般から得られる「受益」と、そのサービスを供給するのに必要な税金・保険料などの「負担」を世代別に比較する「世代会計」という分析法を用いれば、世代間における格差がくっきり浮かび上がる。一橋大学の小黒一正准教授が指摘する。

「各種のデータをもとに推計したところ、60歳以上の世代は生涯を通じて3962万円、50代では989万円の『受益超過』となるのに対し、40代では172万円、30代では833万円、20代では1107万円、20歳未満からこれから生まれる子を含めた世代では8309万円も『支払い超過』、つまり損をするのです。この数字は'08年時点のものですが、今後、財政赤字が増えれば負担はさらに重くなります」

 わけても悲惨なのは、'76年前後に生まれた、現在35歳以下の世代だろう。日本がバブル経済に沸いた頃、彼らはまだ10代で、その恩恵に与ることはできなかった。大学卒業時は就職氷河期の真っ只中で、希望する企業にも入れなかった。厳しい競争を勝ち抜き、ようやく職に就いたとしても、未来はバラ色とはいえない。明治大学の加藤久和教授が嘆息する。

「私の試算では、会社に入った時点での給料を100とすると、1935年生まれの人なら35歳までに300を超え、退職する頃には600、つまり入社時の6倍まで給料は上がった。しかし'75年生まれの人は、35歳でも200程度、つまり倍にしか上がっていない。それより下の世代は、もっと厳しい状況になるでしょう。彼らは、これから給料が上がるという期待を持てないまま働かなければならないのです」

 給料が上がらなければ、結婚にも踏み切れない。国勢調査によれば、30~34歳での未婚率は1985年時点で男性28・2%、女性で10・4%だったのに対し、2010年では男性47・3%、女性は34・5%までハネ上がっている。

 さらに若い世代になると、「結婚どころか恋愛さえままならない」と言うのは1975年生まれの飯田泰之駒沢大学准教授だ。

「今の学生は学費の足しにするため、学業の合間を縫って隙間なくアルバイトをしています。そんな生活が忙しすぎるせいか、25歳時点で女性の3割、男性の2割近くが処女・童貞であるという推計もあります」

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