一般に、「手を動かすと脳の働きが活性化する」などというのは、よく耳にする話ですよね。ちょっとググるとたくさん出てはきますが、論拠をはっきりと示したものは少ないようです。

でも、実感として、ディスプレイを見ながらキーボードを入力するときよりも、筆記用具を使って手書きしているときの方が、触覚と視覚との連動感が強く、脳を使っている感覚になるのは確かです。読者の方々も少なからず感じているのはないかと思います。

今回は、手書きだと本当に脳が活性化するのか? 活性化で何かしらのメリットがあるのか? をライフハッカー流に解説していきます。

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 ■脳の一部は、手書きのときだけ活発化するらしい

Web上で検索できる論文等を探したところ、「JWIMA(日本筆記具工業会)」のサイトに筆ペン、ボールペン、キーボード、携帯電話で文字入力を行ったときの脳内の血流変化を光トポグラフィによって計測した例が報告されていました。その内容によると、キーボードと携帯電話での文字入力時には後頭部の脳活動が見られない、つまり脳の血流が変化していないとのこと。その理由として、

  • キーボード・携帯での文字入力の場合
    文章の構築→キーを打つ→(PCや携帯で変換した文字を)目視で確認
  • 筆ペン・ボールペンでの筆記の場合
  • 文章の構築→文字に変換する→手の運動として変換する→ペンを動かし→目で動きを追い→同時に文字を確認

と、脳を使うプロセスが異なることが挙げられています。筆記時に使っていた脳の働きの一部をPCに任せているため、脳を使わなくて済んでいる、と言えるかもしれません。

同じような実験結果の動画版も合わせてご覧ください。光トポグラフィの生みの親・日立製作所フェローの小泉英明氏を紹介する動画で、4:00過ぎから手書きのときと、キーボード入力のときと、脳の血流量が異なると紹介されています。ただし、撮影用の模擬実験らしいことと、この映像だけでは「どの箇所の血流量が異なっている」かは不明のため、参考情報という位置付けに留めておきましょう。

上記2つの話から、少なくとも言えるのは、「脳には、手書きでもキー入力でも活動する部分もあるが、キーボードや携帯での入力では活動しない部分がある」ということです。

■アイデア出しの場合にも、当てはまるのか?

さて、手書きとキーボード入力とで、脳の活動に違いが生じるとは言えそうですが、書くときだけではなく「アイデアを出す」という意識が付随するときにも、それは当てはまるのでしょうか? そのヒントとなりそうな実験結果がこちら(PDF)。『モバイル環境への機器と脳の適応』と題されたこの報告のなかにある、「モバイル機器利用と脳内活動の実験」では、さきほどと同じ「光トポグラフィ」のウェアラブル版を使用した、予備実験の結果が紹介されています。

「新しいテニス技法の考案」を、同じ時間(1分40秒)ずつ、スケッチブックでアイデアを描き出した場合と、iPhoneアプリでテキスト入力した場合とで、脳の活動の違いがあるのかを調べたものです。「主観記録」とある部分はあくまでも被験者の主観ですのでスルーして、血液の流れを示したデータによれば、スケッチブックでアイデアを描き出した場合のほうが、iPhoneアプリでテキスト入力したときよりも、前頭葉に活発な血流があったそうです。

前頭葉の働きについては、Wikipediaこちらの解説がコンパクトにまとまっていますが、この箇所だけが「アイデアを生み出すところ」とは言えないようです。ただ、アイデアを出すのにかかわる「未来の認知」「より良い行動の選択」といったところには関係している可能性は高そうです。

また、キーボードや携帯・スマホでの文字入力のときよりも、手で文字を書く行動のほうが、「脳のより広い範囲に負荷をかけている」という点は確かと言えそうです。

■手書きとデータ化が同時にできる「airpenPocket」はアイデア出しに役立つのでは?

「手書きのほうが脳がたくさん働く」ということは、手書きしながらブレインストーミングなどすると効果があがりそうです。そんなアイテムとしてぺんてるの「airpenPocket」はもしかしたら最適なのかもしれません。その辺、ガジェットに詳しい方々の総本山・ギズモード・ジャパンのゲスト編集長である、いちるさんに、airpenを使ってもらいまして、その感想や使い方をちょっと伺ってみました。

airpenは、夢日記をつけるのに使っています。

アイディア出しのブレストの際など、Evernoteにたまった自分の夢のファイルを眺めていると、イメージが膨らむことが多いからです。紙のノートに書いていると、なかなかいつも持ち歩くこともできないので、ミーティングの時にちょっと参照などすることができないですし、起きてすぐパソコンに向かってキーボードを叩いても、叩いているうちに急速に頭が理知的になっていって、書いてるそばから夢のことを忘れていってしまいます。

朝起きたばかりの半分寝ぼけた状態のときに、airpenPocketを握って、みみずがのたくったような字と稚拙なイラストで、殴り書きのように夢を記録しておきます。その後二度寝したりします。

そして、それをEvernoteに入れておけば、いつでも好きなときに参照することができます。精神世界とテクノロジーの無理のない融合の一例だと思います。何よりも自分の夢は後で見返しても確実に面白いので、オススメです。

精神世界とテクノロジーとの融合とはGIZMODOらしい使い方、と言っても過言ではないかもしれません。さて、次回の記事では、実際にライフハッカー編集部といちるさんとで「airpenPocket」を使ってみまして、手書きで出たアイデアを腐らせない方法について、追求してみたいと思います。


airpenPocket

(常山剛)