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朝日新聞がツイッターガイドライン公表 報道活動の一環と認定

 朝日新聞社はデジタル社会の進展にともない、ソーシャルメディアの情報空間でいっそう重層的な発信と対話をめざして、各部門、総局、取材チームなどのグループや、記者個人によるツイッター活用に踏み出すため、ガイドラインを定める。このガイドラインは2010年8月に定めた「Twitter利用に際しての注意」を補完し、記者活動としてのツイッター活用のルールを定めたものである。記者が朝日新聞記者と名のって発信することは、報道活動の一環であり、ソーシャルメディア委員会の承認を得たうえで、各種法令、従業員規則、行動規範、記者行動基準に則って行動する。
[PDF]⇒朝日新聞社編集部門ツイッター・ガイドライン(暫定版)

 2012年4月27日現在、27個の記者実名ツイッターアカウントと63個の部署・支局単位のアカウントをウェブサイト上で紹介する朝日新聞社は、朝日新聞記者と名乗ってツイッターを利用したり、部署や支局、取材チーム単位でツイッターを利用して情報発信を行う際に指針となるガイドラインを発表した。4月16日からの施行で、「暫定版」という形ではあるものの、朝日新聞ウェブサイトの「Twitterアカウントの紹介」ページからリンクされている。
 A4用紙2ページの短い文章であるが、簡潔かつ具体的な内容が盛り込まれており非常にわかりやすい。概要は以下の通り。

  1. 記者が朝日新聞記者を名乗ってツイッターを利用することは「報道活動の一環」であり、ソーシャルメディア委員会の承認が必要
  2. 編集部門内に「ソーシャルメディアエディター*1」を置き、デジタル編集部内にサポートチームを設け、アドバイスやトラブル相談を行う
  3. プロフィールに明記する内容や情報発信のルール
  4. プライベートなアカウントでは取材情報は発信しない

 特に、3番目の「情報発信のルール」では、「事実と意見を分けて書くよう努め、『知らない』ことへの謙虚さを忘れず、つねに学ぶ姿勢を保つ」など、ソーシャルメディア上では上から目線ではなく対話こそが重要ということを説明している。また、「誤った内容を書いてしまったときは、できるだけ早く訂正する。冒頭で【訂正】と書き出し、ケースによっては、繰り返し発信する」という、「訂正を出してはならない(間違えてはいけない)」ではなく、ソーシャルメディア上では時には訂正することがありえるという前提のもとに「速やかに認め、削除するだけでなく訂正した事実を発信する」という、現実的な対応策を説明しているところは好感が持てる。
 支局や部署単位で発信するときの「もう一人の目ルール」も参考になる。個人ではなくグループ単位で発信するアカウントの場合は記者個人と違った視点が必要だろう。これにも「もう一人」がみつからないときは、自分自身が「もう一人」になったつもりで読み直してから発信するという、現場の実情に合わせた解決策が提示されているところが面白い。
 総じて平易な文章ながら、ツイッターとのリアルな付き合い方を熟知した人の手による実用本位なガイドラインだ。昨年読んだ藤代裕之さんの「発信力の鍛え方」で触れられていた情報発信の技術やトラブル対処の方法と重なるところもあったように感じる。これからツイッターのガイドラインを作成しようとする同業他社にとっても参考になるだろう。

*1:部長相当の職位か