・けっこう一生懸命、仕事をしている

・まわりもそれを認めていて、非難する人はいない

・本人はその行為にまったく疑問を持っていない

・しかし、成果はほとんど出ない

こんな状態に陥っていることに気づいていない人が多いという実態に斬り込んだのが、『仕事をしたつもり』(海老原嗣生著 星海社新書)です。

しかしそれは、「ルールや体裁を整えることこそが自分の仕事だと勘違いして、疑問がわかない状況」に自分を追い込むだけ。本書では、「仕事をしたつもり」から脱却するための具体的な手段が紹介されています。例えば、私が「なるほど」と思ったのは以下の「プレゼン」に関する項目でした。

プレゼンの資料は1枚あれば十分(35ページ)

会議でもプレゼンでも、「相手に伝えたいこと、相手が知りたいことは『本当に簡単なひと言』ですますことができる」というのが著者の主張。ただしそれは、必要なものを省くということではありません。

先方には簡潔でわかりやすいものを提示する一方、それを見た先方から疑問が出てくることを予想して手もとには「何十枚もの資料」をきちんと用意しておき、質問があるたびに資料を随時引き出してスピーディーに返答すればいいという意味なのです。そのために必要になるのが、

キーポイントを簡潔に述べ、相手の興味関心を喚起し、相手からつぎつぎと疑問を引き出していく(39ページ)

という姿勢です。なるほどそれなら効率的ですし、簡潔かつスピーディーにプレゼンを進めることができます。

従来のような「大型資料型プレゼン」→資料を「作る」のに時間がかかってしまう


これに対し、

手間のかからない「一枚型プレゼン」その分の時間を「考える」ことに費やせる


というわけですね。

なお「1枚型プレゼン」は、肝心な部分がひと言で表されていますし、「質問→応答」という会話スタイルですので、大量の資料を編集加工する時間もかかりません。また見出しをつけたり、文字のフォントを選んだり、大きさを変えたりするような、余分な編集加工も不要。そういう意味でも合理的です。

こうして考えてみても、とても合理的なプレゼンテーションスキルであることがわかるのではないでしょうか? 次回のプレゼンに、活用してみることをおすすめします。

本書を手に取った方は、どんな感想をもったでしょうか。Facebookページでも下記のコメント欄でも、ぜひ教えてください。

(印南敦史)