マカオ(澳門)の「民間系会社」を通じて1998年にウクライナから購入した航空母艦で、中国が「難題」に直面している。同艦は航空母艦として不可欠な着艦装置など多くの装備をとりはずした形で売られたが、ロシア側が中国に対する着艦装置の売却を拒否する意向を明らかにした。中国側がロシアの一部航空機を「コピー」したことが原因とする見方が出ている。環球網などが報じた。

 航空母艦は滑走路が短いため、航空機に速度をつけて離陸するための火薬や油圧を用いたカタパルト(射出機)や、着陸した機を速やかに停止させるためのフックなどが備え付けられるのが一般的だ。離着艦のための装置が不十分であれば、航空母艦としては機能しないことになる。

 ロシア(含、旧ソ連)で製造された航空母艦の着艦関連装置はすべてロシアの企業が製造している。中国側は着艦装置を少なくとも4セット購入したいと申し入れたが、メーカー側は「かなり大きな困難が出た」と説明。ロシアの軍需工業責任者が、中国には売らない方針を固めたとの情報もある。

 これまでロシア政府は「戦略的武器は中国に輸出しない。航空母艦、原子力潜水艦、核兵器の生産技術などはすべて戦略的武器に含まれる」と説明してきた。しかし、航空母艦に付随する装備を中国に売らない真の理由は、中国が、ロシア製の戦闘機「スホイ33」をコピーして艦載機「殲15(J−15)」を製造していることへの不満があるの見方が強まっている。

 ロシアは2005年、インドに重航空巡洋艦アドミラル・ゴルシコフをインドに売却した。インドは同艦を空母「ヴィクラマーディティヤ」として改装を進めているが、ロシアは着艦装置2セットをインドに売却したとされている。

 空母搭載機はまず陸上の基地で訓練を行う。そのため、陸上でもカタパルトや着艦装置を使った訓練を行うことが普通で、着艦装置なしでは陸上でも十分な訓練ができないことになる。

 中国側は着艦装置をすでに開発したとの情報もあるが、ロシアでは「着艦装置は非常に複雑であり、現在のところ製造能力があるのは米国とロシアの2カ国だけだ」との見方を示す専門家もいる。

 中国が自主開発した着艦装置の実験に成功していたとしても、「実用に耐えるレベル」までに信頼性を高めるには相当な時間がかかるとの見方がある。(編集担当:如月隼人)