中国鉄道事故、温首相「昨晩は眠れず」 指導部、対応急ぐ
中国の技術力をアピールする目玉事業である高速鉄道での事故は中国指導部にも衝撃を与えている。中国は来秋に指導部の世代交代を控えて大型プロジェクトを相次ぎ推進しているが、高速鉄道を巡っては汚職や相次ぐトラブルに国民から批判も出ていた。温家宝首相は24日、北京で会談した河野洋平・日本国際貿易促進協会会長(前衆院議長)に対し「昨晩は事故対応でほとんど眠っていない」と明かした。
温首相は人民大会堂で日本からの訪問団と面会。同行筋によると河野会長が「昨晩の事故に心からお見舞い申し上げる」と語ると、温首相は顔をしかめ「すぐに張徳江副首相を現地に派遣した。雷でエンジンが止まったという話もあるが、とにかく原因をしっかり調査している」と現状を説明した。
国内外で信頼が失墜する事態に直面し政府は対応を急いでいる。胡錦濤国家主席と温首相は政府を挙げて救出作業に当たるように指示。24日午前に現地入りした張副首相は、死傷者を最小限に抑えるよう指示した。
中国は来秋の共産党党大会で胡氏から習近平副主席への指導部世代交代が予想される。今年7月の共産党創設90周年とも相まって国威発揚の大型プロジェクトが相次ぎ、高速鉄道も中国の勢いを象徴する事業だった。
鉄道省は24日夕、上海鉄道局の局長ら幹部3人の更迭を発表。犠牲者への賠償手続きもすぐに始めると表明するなど対応を急いでいる。(北京=森安健)