Wantedly(ウォンテッドリー)のIPOがいろいろ凄いので考察

夏休み、Enjoyされましたでしょうか。INST石野です。

お盆休み直前の8/10に、皆さんご存知Wantedlyの運営会社、ウォンテッドリー株式会社のマザーズ上場が承認されました。

ビジネスSNSwantedly」運営元のウォンテッドリーがマザーズ上場へ

HRtechの雄として、そして新しい人材採用のプラットフォームとしてスタートアップを中心に絶大な人気を誇るWantedlyの上場ということで、素直に「すごい」と思っていろいろネットなどを調べていくと、

これがまあいろいろと凄い

ことがわかりましたので、私もいっちょブロガー社長の端くれとして筆を執ってみようと思った次第です。

ちなみにですが、私は資本政策やIPOなどには疎いボンクラ経営者でございますので、誤認識や偏った解釈が多いかもしれませんが、それは笑い飛ばしていただき、単なるイチ意見として受け取っていただければ幸甚でございます。

※データなどは東京証券取引所EDInetを参照しております
※もし致命的な誤りなどありましたら、御連絡ください

1.時価総額40億円というのが凄い

ウォンテッドリー株式会社は、皆さんご存知、京大→ゴールドマン・サックス→Facebookという真夏の太陽よりもキラキラした経歴の仲暁子さんが2010年(平成22年)に立ち上げられた設立約7年の会社です。

社長の仲さんは美人でスタートアップ界隈にファンも多いそうです。大きな耳で佐藤藍子を思い出したアラフォー世代も多いハズ。ちなみに佐藤藍子は今年40

※画像の著作権侵害とのことでご指摘いただいたので画像削除しました

累計ユーザー78万人、利用企業数は約2万社ということですので、1社あたりの売上は4.2万円/年→3,500円/月くらいになるという計算になりますが、有料プランは最低3万円/月なので、多く見積もっても有料契約の企業数は全体の10%未満くらいになるのではと思います。


※Wantedlyの料金プラン

するってーと課金企業は大体2,000社未満ということですね。INSTが大体200社弱だから10倍くらいか。すげーな。

上場時の発行済株式数は約480万株。想定時価総額40.2億円。有価証券届出書によりますと、直前期の売上は8.4億、経常利益は1.2億となっております。

参考までに同じくらいの時価総額のマザーズ上場企業と比較してみますと

企業名
時価総額
売上高
経常利益

 

サイジニア株式会社
4,258
606
△158

 

株式会社ソケッツ
4,021
1,709
38

 

株式会社ピーバンドットコム
3,973
1,830
220

 

GMOリサーチ株式会社
3,969
1,628
196

 

株式会社AMBITION
3,943
14,578
268

 

ウォンテッドリー株式会社(予測)
4,020
840
120

 

 

こんな感じになっております。(単位は100万円)
※時価総額はYahooファイナンス8/15 12:30時点、売上高、経常利益は直近の決算情報から

同様にHR系のビジネスをやっている会社の時価総額はこんな感じ

企業名
時価総額
売上高
経常利益

 

ディップ株式会社(東1)
140,678
33,178
9,141

 

株式会社アトラエ(マザ)
28,307
1,312
390

 

JACリクルートメント(東1)
68,627
13,838
4,730

 

株式会社リブセンス(東1)
16.794
4,927
612

 

 

つーかアトラエの時価総額がリブセンスを抜いていたことがびっくりだわ。すげーな。

ちなみにこの40億円という評価額に関しては市場からは「ちょっと高いんじゃないの」という声が多くあがっているようです。まあHRビジネスは今上り調子ですし、女性最年少上場社長というのも話題性がありますし、この評価額に関しては僕は妥当と思います。

2.ダウンラウンドのIPOってのが凄い

まあスタートアップ界隈に生息していなかったり、自分が会社経営してなかったら「上場するんだってね!おめでとう!」くらいしか普通の人は言わないと思います。そもそも上場ってのが何なのかがわかってない人もたくさんいるはず。

株式上場はIPO(Initial Public Offer)といわれ、最初の公開の売り物、という意味です。

会社運営のためには様々な資金調達の方法がありますが、大きく分けてデットとエクイティの2つがあります。わかりやすく言うとデットというのは借金で金融機関や投資家からお金を借りること。エクイティというのは自社の株式を新規で発行して、それを買ってもらうというものです。

もちろんのことながら、借金はある程度の信用を得られないと借りれなかったりしますし、返済可能性を見られますので、スタートアップの多くは投資家向けに「うちの会社は今はこのくらいのビジネスだけど、こんなことをやって将来はこのくらいの収益を生み出すから、今のうち(時価総額・評価額)が低いうちにウチの株式買ってくださいよ」とエクイティファイナンスを行うわけです。

そうしますと、株式を保有する投資家はその企業の価値を高めるという目的の運命共同体になるわけで、通常は最初のラウンド(エクイティファイナンスのこと)から徐々に企業価値を高め、一株あたりの価値を上げて調達していくわけです。

ところが、今回のウォンテッドリーの株式公開はダウンラウンドと呼ばれるあまり聞き慣れないIPOになります。ザーッと調べたところ、ダウンラウンドは株主価値の毀損になるのであまりやってはいけないことだと。。。

有価証券によると、2年前の直前のラウンドでの評価額は90億、そして今回の評価額は40億。時価総額は半分以下になってしまっています。そのタイミングで株式公開する意味って?Postラウンドの時のバリュエーションをふっかけたのでしょうか。。。ちなみに仲さんが在籍していたFacebookが一度だけシリーズDでダウンラウンドの調達をしています。しかも相手はこれまた仲さんが在籍していたゴールドマン・サックス。これは何か意図や裏があるのでしょうか。

今回のIPO時の時価総額は下がってしまっているわけですから、今回の売出しに参加ができるのは創業者で7割弱保有してる仲さんと10%持っていてシード出資したサイバーエージェントくらいではと思います。それ以外の投資家は逆にIPO時点で売ると「上場前に買ったのに上場時に売ったら買ったときより安なってるやんけ!!!」ってなっちゃいます。

3.たった4,000万円調達のためにIPOしてオフィス内装費に使うってのが凄い

前項とも関連しますが、IPOというのは、いわゆる株式市場に対して自社株を発行して、それを買ってもらうことで資金を調達する資金調達手段の1つです。今回のIPOは仲さん・サイバーエージェント以外の株主にはあまりメリットはなさそうですが、果たして何のためにIPOするのでしょうか。

ですが、今回のIPOでは新株の発行は発行済み株式約480万株に対して、

たったの5万株

想定発行価格で全部売れたとしても4,000万円ちょっとの調達しかできないという事になります。しかも利用の用途が

上記の手取概算額39,000千円については、事業及び人員拡大に伴い平成30年8月期に実施する本社オフィス増床時の内装費の一部に充当する予定であります。

ん?

上記の手取概算額39,000千円については、事業及び人員拡大平成30年8月期に実施する本社オフィス増床時の内装費の一部に充当する予定であります。

だったらわからなくない。採用のためにお金使うは最近のIPOでもよく見る。

でも

上記の手取概算額39,000千円については、事業及び人員拡大に伴い平成30年8月期に実施する本社オフィス増床時の内装費の一部に充当する予定であります。

ということは内装費の一部を充当するためにIPO????

これはなんかもやもやするIPOですね。。。

ちなみに新規株式の発行数が少なく、人気が出た場合はプレミアが付くケースが多く、短期的に株価が上がることが予想されるとか。そうなっても今回の売出しに参加できるのは何度もいいましたが仲さんとサイバーエージェントだけの予感。。。これで機関投資家が「ビジネスSNS?は?」ってなっちゃったら仲さん一人勝ちの上場ゴール感が否めなくなりますが。。。

さすが金融出身という感じなのでしょうか。もしやすごく考えられた上場スキームなのか。。。

4.従業員に徹底的にストックオプション発行してなくて凄い

まあちなみにここが一番突っ込みたいところなんだけどね。

見よ!この株主の状況!!!

仲さんが7割弱保有していて、その他はもはや雀の涙!!!

執行役員以下の従業員にはビタ一文くれてやらんというこの姿勢が素晴らしい!もはや清々しさすら覚えます。

コーポーレートサイトを見て各役員・執行役員の入社時期と上場時予測時価総額計算での保有額を算出しますと

氏名
役職
入社時期
保有株式比率
予測保有額

 

川崎禎紀
取締役CTO
2012年4月
3.26%
1.3億円

 

吉田祐輔
執行役員
2016年6月
0.07%
280万円

 

藤本遼平
執行役員
2013年12月
0.15%
600万円

 

久保長礼
執行役員
2013年1月
0.23%
920万円

 

大谷昌継
執行役員
2014年8月
0.03%
120万円

 

後藤剛一
執行役員
2017年4月
0%
0円

 

仲暁子
代表取締役CEO
2010年9月
68.98%
27億円

 

 

凄い格差!

年収だと考えると仲さんだけメジャーリーガーのスター選手、川崎さんは一流日本プロ野球選手、あとは戦力外通告スレスレが2名でフリーター2人とNEETやないか。。。

ちなみに共同創業者で取締役COOあった萩原学さんが去年の4月に11,940株(もし今も保有してたとすると0.25%の保有)を約5,000万円で仲さんに売却されて退職・辞任されているようです。が、今回の上場時に保有してたらもっと株式価値が下がっていたという。。。これは萩原さんは懸命な判断だったのでしょうか。。。

→twitterでご意見いただき修正します。(8/16 11:41修正)
萩原さんが保有し、仲さんに売却したのは発行体で、10%程度保有していたので、当時の時価(譲渡価格は簿価純資産だそう)で10億、IPO売上ベースでも5億弱はあったのを約5,000万円で仲さんに売却されたとのこと。
※ご指摘いただいた方、ありがとうございました!

余計エグいわw

スタートアップの醍醐味の1つはIPOという1つの目標に向かって安い給料でも社員一眼となって頑張って、その結果IPO後の持ち株の売却益で一攫千金というのがあるのではと思いますが、ウォンテッドリーさんは全く違うようで、執行役員未満の従業員には1mmのキャピタルゲインもないIPOになっているようです。

スタートアップ経営者仲間が「これではココロオドラない」とウマい事を言っていましたが、僕もそこには流石に同意見です。

もしくは仲さんが本当に素晴らしい経営者で、給与や上場益ではなく、仕事のやりがいやより良いサービスを探求していくというビジョンのみで従業員全員を惹き付けてここまで来たし、これからもそれでも人がついてくる、というのであれば本当にあっぱれすぎてぐうの音も出ませんが、僕的にはやりがい搾取感が否めないですね。聞くところによると某執行役員は年収700万円に満たないとか。。。

また、これは噂レベルですが、ウォンテッドリーの社内の人材流動性(入社→離職)は比較的高いらしく、創業7年の会社で平均在籍期間1.5年と少し短いのはこういうところに起因しているのかもしれません。

まあ兎にも角にも1つのゴールを成し遂げられたのは素晴らしいと思いますし、最年少女性上場(しかも美人)は本当におめでたいと思います。

が、僕はちょっとこういう経営はしたくない(能力的に足りずにできないと思うけど)と本当に思いますね。確かにオーナーである社長に好きにしていい権利はあるんですけど、ある程度公的なモノである必要もあると思うんですよね。

ちなみに今でも「Wantedly」でGoogle検索1ページ目ですが、本ブログのせいで「WantedlyにWanted(指名手配)」されるかもしれない、というつまらないオチで皮肉たっぷりの本ブログは締めくくりたいと思います。

以前Wantedlyについて書いた記事はこちら

このブログを書いた人が経営している会社はこちら

それでは。

Kosuke

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