今回の地震に遭われた方々、現在停電や物資の不足により不自由な生活を余儀なくされている方々へ、心よりお見舞い申し上げます。私はカリフォルニアに住んでいるのですが、CNNのような全米ネットワークでも、ローカルのニュースでも、連日日本のことが採りあげられています。どのメディアも、「もっとも地震に対しての心構え、準備をしていた国に、予測不可能なほどの大きな地震が来てしまった。しかし、日本人はエネルギッシュかつ勤勉なので、この危機を必ず乗り越えるだろう」と希望を持って伝えています。

 しかし、連日24時間絶えることのない報道は、被災された方にも、そうでない方にも心のダメージを与えかねません。大切な人の安否を確認するために、ネットを駆使して長時間情報収集していたら、津波が町を飲み込む画像が頭から離れず、夜眠れないという方もいらっしゃるかもしれません。停電するのかしないのか、関係機関のサイトや窓口になかなかつながらず、いらだちを覚える方も多いことでしょう。

今回皆さんにお伝えしたいのは、日本で被災を免れた方だけでなく、報道に釘付けになっている世界中の人々の不安な気持ち、不眠、疲労感、怒りも含めて、aftershock(余震、後遺症)なのだということです。こんなことを聞いても、心の傷、もやもや感はなくなるものではありませんが、自分だけではないと認識するのが、回復への第一歩です

「Psychology Today」 の記事(英文)によると、大災害の後PTSDを経験するのは大人で32-60%、子供では26-95%にのぼるそうです。PTSDと認定されない程度のストレスは、災害後12ヶ月ほどで落ち着きますが、PTSDの場合は、6ヶ月ほど経ってから発症することもあるので、災害を経験してから18ヶ月経っても軽減されないケースもあります。もちろん、症状の程度は人によるので、すぐに日常生活に復帰できる人もいますが、逆に回復までに長い期間を要する人がいるのも事実です。

上記の記事では、神戸の震災のときに日本人は「臭いものにフタ」で自分の中のネガティブな感情に触れないようにし、しっかりしていないのは恥だからという気持ちから、カウンセリングなどを受けなかった人が多かったが、今回の地震を機に、日本のメンタルヘルスに関する取り組み方が変わることを望む、と述べられています。心理学者の中には、喪失感に向き合わずして新しい一歩はない、と強く主張する人がおり、これは主に欧米の研究者が欧米の被験者を対象として行っている研究に基づいています。もちろん、日本人でも同じようなことが言えるかもしれませんが、日本人の中に昔からある価値観を無視してまで、欧米のやり方を取り入れろということではありません。

しかし、twitterやmixiなどで不安な気持ち、怒りなどを共有し、自分だけではないんだ、みんな苦しんでいるんだと知ることは、一人で閉じこもっているよりも心のケアになると思います。どうしても恥ずかしいという気持ちがあるならば、匿名でいいです。実際、匿名希望でラジオ局やテレビ局にメッセージを送る人もいます。直接被害があった人も、なかった人も、今回の地震で心が不安定になっているという点で、世界中の多くの人と同じ気持ちでつながっているのです。自分に一番無理のない形で気持ちを共有して、心をケアしてみてはいかがでしょうか。

(山内純子)