誰しも「自分の言葉に責任を持つ」ことは基本ですが、特に、政治家や企業の社長など、多くの人々を導く立場にある人は、その影響力の大きさゆえ、言葉に対する責任をきちんと持つ必要があります。

一方で、彼らの言葉を受け止める側にとっても、その言葉の真意を見抜く目を養うことは大切かもしれません。そこでこちらでは、企業のCEOのスピーチを詳しく分析し、彼らの言葉に潜む「ウソ」の傾向を明らかにした、米スタンフォード大学の研究結果をご紹介しましょう。

米心理学誌「Psychology Today」では、「CEOがウソをついているのをどうやって見分けるか?」をテーマとした、米スタンフォード大学のDavid F. Larcker氏とAnastasia A. Zakolyukina氏による、研究結果を紹介しています。

この研究では、2003年から2007年の企業経営者による、29,663のカンファレンスコールを分析。CEOが自社の事業状況や事業計画について、メディアや一般に語ったスピーチを、一語一語、文字に起こして詳しく分析したところ、ウソが潜みやすい傾向として、以下の3点が明らかになったそうです。

 

1: 一人称で語らない

一人称ではなく、「我々」とか「チーム」、「グループ」など、複数を表す語が多用されている場合は要注意。相手をだますようなことになりかねない場合、うまくいかなかったときの矛先が自分に向けられるようなことは、一番したくないはずだ。

2: 過剰にポジティブに語る

過剰にポジティブな言葉に気をつけよう。CEOが企業の見通しを述べる際、美辞麗句が並べられたときは、懐疑的になったほうがよい。ちなみに、エンロン社の元会長ケネス・レイ(Kenneth Lay)は、「fantastic」、「amazing」、「wonderful」、「superb」といった語をスピーチで多用していた。

3: 絶対的な自信がある

絶対的な自信には警戒しよう。多くの人々は、リーダーが自分の意思決定に対して自信に満ち溢れていると、あまり心配しないものだ。しかし実際は、将来、経済状況や政治情勢がどうなるか? をわかった上で、意思決定できる人はいない。絶対的な自信を示す言葉が多すぎたり、ためらいを感じさせる言葉がないスピーチには、ウソが潜んでいることが多い。

もちろん、これらのいずれかがあるからといって、一概に「ウソ」と決め付けるのは適当ではありませんが、人が発する言葉の表面的な部分だけを受け止めるのではなく、その奥に潜む真意をきちんと捉えることが大切、といえそうですね。

ちなみに、このスタンフォード大学の研究結果についての詳細レポートは、こちらのページ(※PDFファイル)でご覧いただけます。ご関心のある方は、あわせてどうぞ。

Clues to When CEOs and Politicians Are Lying to You [Psychology Today]

Whitson Gordon(原文/訳:松岡由希子)