高橋洋一の嘘 “民主党政権で自殺者が増えた”というデマ

ブコメで散々指摘されていますので今さらですが、コメント欄で推奨してくる自称「右でも左でもない」人がいましたので。そういえば、高橋洋一氏も「筆者は右でも左でもない。」とか自称してたな・・・。

誤った経済政策で自殺者を増やした罪を忘れたか 間違い続ける民主党に安保の議論をする資格なし!

2015年08月03日(月) 高橋 洋一

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44506

という記事を高橋洋一氏は書いています。
要するに、“民主党政権で自殺者が増えた”と主張しているわけです。

該当する記載はここ。

ちなみに、金融緩和していなかったなら、ある意味で、戦争よりもっと悲惨になっていたかもしれない。間違った経済政策は人を殺すのだ。過度な緊縮財政は人々の健康を害し、その結果死亡率を高めることも知られている。また、金融政策は失業率に影響するが、失業率の変動は自殺率にも関係する。結果として、金融政策は人を生かしも殺しもする。
民主党時代の2010年から3年間における平均の自殺者数は28300人/年、自殺率は10万人あたり22.4人だったが、安倍政権の2013年から2年間におけるそれらは、25200人/年、20.1人と大きく改善している。これらの自殺者数の減少は、金融緩和によるものであり、事前に予想された通りの効果である。
安保関連法案に対して、一部野党からのA.「戦争になる」、B.「徴兵制になる」という批判は、集団的自衛権が戦争リスクを減少させるという国際政治・関係論の常識から、間違っている。それは、金融政策について無理解で、間違った金融政策を行い、結果として人を多く殺したのと、人の命を大切にしないという点において、筆者にはダブって見える。
民主党政権は、年間自殺者数を3000人以上も安倍政権より増やしておきながら、今度も、戦争リスクを減らす安保関連法案に反対するのは、命を大切にする観点から、二度目の間違いになるのではないか。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44506

この高橋氏の主張が間違いであることは、自殺者統計を見れば一発で分かります。というか、高橋氏が自身で挙げているグラフでも明らかですけどね。よほど読者を舐めているのか、本気でアホなのか。「「非人間的」と言われて」ってのは、知能レベルのことじゃないのとか思ったり。

http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2015/pdf/honbun/pdf/1-1-1.pdf

自民党橋本内閣の1997年から急速に自殺率が上昇し、小渕内閣(1998/7-2000/4)森内閣(2000/4-2001/4)、小泉内閣(2001/4-2006/9)、安倍内閣(2006/9-2007/9)、福田内閣(2007/9-2008/9)、麻生内閣(2008/9-2009/9)とほぼ毎年自殺者数3万3000人程度で推移しています。
この自殺者数がようやく下がり始めたのが、民主党政権になった2010年以降です。鳩山内閣(2009/9-2010/6)、菅内閣(2010/6-2011/9)、野田内閣(2011/9-2012/12)と毎年自殺者数は減り続け、第二次安倍政権になったときには既に3万人を大きく下回る状況でした。
第二次安倍政権はその流れに乗っかったに過ぎません。

少なくとも自民党政権下だった1998年から2009年までの間、その間安倍晋三官房長官、首相を務めた時代があるわけですが、その間、ただの一度も年間自殺者数は3万人を割らなかったわけで、民主党政権になってようやく自殺者数が3万人を割ったわけですから、通常なら自殺者数について言えば、民主党は評価されるべきでしょう。

また、高橋氏は「民主党政権は、年間自殺者数を3000人以上も安倍政権より増やしておきながら」とも表現していますが、この“民主党政権は安倍政権より自殺者数を増やした”という表現からは、時系列的に安倍政権の後に民主党政権が来たように読めます。実際そういうミスリードを狙っているのでしょうが、これを第一次安倍政権とみなすと、この時期の自殺者数は32000人に上り、「民主党時代の2010年から3年間における平均の自殺者数は28300人/年」よりも4000人近くも多かったことがわかります。

そもそも、民主党政権時代は一貫して年間自殺者数が減り続けたわけですから、「民主党政権は、年間自殺者数を3000人以上も安倍政権より増やしておきながら」という高橋氏の表現自体が捏造というにふさわしいでしょうね。意図的としか思えませんから。

こういう捏造をする論者の主張は、基本的に一歩引いて論旨のごまかしがないか確認する必要があります。