アマゾンと楽天

楽天が本を売り始め、アマゾンが靴や鞄から食品の販売を増やし始め、「アマゾンと楽天の戦いが、おもしろくなってきたー!」と楽しんでいるちきりんです。

このふたつの通販サイト、「自分はこっちだけを使う」という人も多そうですが、どうなんでしょう?

使い分けてる人もいるんでしょうか? 私は家電と本はアマゾン、食品と雑貨は楽天が多いです。というわけで今日は、ミーハー消費者としてふたつを比較した感想を書いておきます。


 VS. 


アマゾンが圧倒的に有利っぽいのは「物流」でしょう。消費者目線の言葉では「配送費」と「配送日数」となります。

今や amazon.co.jp が販売主ならほぼ送料が無料、というのは、思いついた時にアレコレちょこちょこ買いたい人にはメリットが大きいですよね。

また、画面で「在庫あり」となっていれば配送にかかる期日もほぼ一定していて、いつ購入すればいつ頃手に入るか読みやすいです。

これはひとえに、アマゾンが自社の巨大倉庫から一斉配送をしているからです。

配送業者はアマゾンと契約すれば大量の仕事が得られるため、相当に低い単価で配送業務を請け負っていると思われます。そして消費者は、その恩恵を受けているわけです。


一方の楽天では、商品は各ショップから配送されるため、配送業者も各ショップが選んでます。だから業者もバラバラだし、配送料のディスカウントも(店自体が)受けていません。

このためネットショッピングをする客は、数千円から1万円近く買わないと送料が無料にできない場合が多いです。これだと、気に入ったものを一個だけ即買いするのは躊躇されます。


東京在住の客だと配送料は 600円程度の場合が多いのですが、ネットでモノを買うのが一般化すればするほど買う商品の金額は小さくなるので、配送料の比率が大きくなります。1000円の商品に 600円の配送費はかなりつらいですよね。

あと、在庫管理も各店に任されているから、ショップ画面で「在庫あり」になっていても実際に注文したら「ちょっと待ってね」みたいなメールがくることもあります。届くまでの日数も店によってバラツキがあるし、

下手すると「メーカーに注文したけど在庫切れでした。すみません」みたいなメールが来て終わりってこともあります。何日も待ってこれでは次から買う気が削がれます。


楽天のお店の多くはごく小さな雑貨屋だったり食品店だたりするわけで、サイトのメンテナンスもきちんとできていないし、巨大なモンスターロジスティックスセンターを抱えるアマゾンとはオペレーションのレベルも全然違うから仕方ないとはいえ、イライラすることも多いです。

この点も、ネット販売が一般化すればするほど、注文はより小口高頻度となり、アマゾン型の有利さが際だつんじゃないかなーと思います。


★★★


ウエブサイトの作りについては、グローバルに統一してあり、マニュアル主義で、スケールメリットを追求するアマゾンと、「日本のごちゃごちゃな商慣行をそのままネットに持ち込んで商売する」楽天の違いをキレイに反映してますよね。

アマゾンの画面の場合、たとえ売り主が一般店(楽天にも店を出している小売店)であっても、画面は超シンプルです。


一方の楽天ショップの(ほとんどのサイトの)ケバケバしいこと。なんじゃこれ、なショップも多々あります。ドンキホーテ的店づくり=サイト作り(多分意図的?)のお店が多く、あれは好き嫌いがあるだろうと思います。

これ、お店がかってにやっているというよりは、楽天のアドバイザーがそう勧めているらしいです。そういえば情報商材をうるサイトもめっぽうサイトが長いので、「ずうっと読んでいるうちに欲しい気持ちが高まる」という効果が、本当にあるのかもしれません。

いずれにせよ、このサイトのビジュアルの違いは、まさにアメリカ的なるものと日本的なるものの違いにも見えます。


★★★


一方、楽天は、ポイントやカードでの囲い込みがめっちゃ巧く、また、本を除けばカスタマーレビューも楽天の方が圧倒的に充実しているように感じます。

特にポイント制度は強力ですね。

ポイント 10倍セールとか、ポイント山分けセールとか、しょっちゅうやってますが、「セールだとついつい買いに行く」人ってのは、リアル店舗のセールを見ていてもわかるように、相当数いるんです。

アマゾンもセールはやっていますが、こういう客の取り込みに関しては、楽天の方が圧倒的に成功しています。


そもそもアマゾンの場合は「必要なモノを買っている客」が多いのに対し、楽天は(テレビショッピング同様)「ハマってしまって、要らないものもやたら買っている客」がたくさんいるはずです。

つまり、アマゾンでは売れないけど楽天では売れている、という商品や店はたくさんあるはずなんです。

「買うことの便利さ」を提供してくれるアマゾンと、「買うことの楽しさ」を提供している楽天の違い、ですかね。


特に要らないものを買いがちになる洋服と雑貨について、楽天はアマゾンに比べ、圧倒的に充実しています。

洋服って、そもそもリアル店舗でさえ、「要らないけど買っちゃうもの」なんです。買って、家に帰ったら同じような服がたくさんあった、って人も多いはず。もし誰もが合理的に「必要な服以外、一切買わない」みたいになったら、アパレル業界は成り立ちません。

アマゾンは「消費者が探してるものを、できるだけ効率よく買えるように=ワンクリックで買えるように」することには熱心ですが、

この「要らないモノを、ついつい買わせてしまう」という市場に弱いのです。


洋服や靴、アクセサリー、カワイイ雑貨、文具、食器、こだわりスイーツなど、そういう市場って全部会わせると結構でかいので、この市場で楽天が(アマゾンに)圧勝しているのは重要なコトです。

ただし洋服に関しては、もしアマゾンが、試着・返品自由で洋服などを売り始めたら、相当のインパクトがあると思うし、この 2社の関係にも地殻変動が起こると思いますが、それはまだかなり先なのかもしれません。


★★★


もうひとつ大きな違いは、楽天が抱えている店は、基本は超ローカルな日本の小さなお店だってことです。彼らは今それらを世界につなげようとしています。

そもそもね、「世界中の人、死ぬまでに一回くらいは日本のケーキ食べてみた方がいいですよ」ってくらい日本には美味しいモノがあるでしょ。

そして楽天が頑張れば、世界中の人があれを食べられるようになるかもしれない。これって私が最近よく言う「ジャパンバリューのマネタイズ・ビジネス」です。

個々の小さなお店にはそんなことできないので、ぜひ楽天に頑張って欲しいけど、これも先にアマゾンがやり始めたら厳しくなるだろうなと思います。


などなど、
グローバルモデルの世界展開をやってるアマゾンと、ジャパンバリューのマネタイズをやろうとしている楽天のバトル。ちきりん的には超楽しみなところです。


そんじゃーねー



↓実力差を大きさで表してみた・・
 VS. 



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