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わたしたちみんなの『青春』「けいおん!!」第20話 その3

泣いてもいい、泣いてもいいんだよ「けいおん!!」第20話 その1
ここにいるみんなと一緒にバンドが出来て、最高です!「けいおん!!」第20話 その2
 
その3は重箱の隅をつつくように、小ネタやモブを拾い上げながら、今まで「けいおん!」シリーズを見てきた人にアプローチしていたシーンをピックアップしてみます。

ではネタバレ有りなので収納。

ペロペロ(^ω^)
 
 

しろいうさぎとくろいうさぎ

スーパー深読みタイムになります。邪推もあると思いますのでご了承ください。
すっごい引っかかってたのは軽音部と関係ないこのシーンでした。
 
手品で白いうさぎを黒くするシーンなんですが、これって「しろいうさぎとくろいうさぎ」ですよね。

今までもカメに意味を持たせ続けてきた「けいおん!!」なので、わざわざここでうさぎを持ってくるあたりどうしても深読みせざるをえません。
しろいうさぎとくろいうさぎ」は、今を楽しむか、未来を憂うかを描いた傑作絵本です。人間同士の距離感と、何をどう感じ取るかを描いた作品。
 
今を楽しむかどうか、というのは「けいおん!!」のテーマの一つでした。
未来を考えて憂うキャラの代表はやはり梓でしょうか。立場の違いもありますが、黒いうさぎのようにこれからどうなるんだろう、と悩んで前に進めなくなってしまう彼女はまさに黒いうさぎ。髪型も含めて。
逆にあらゆることを考えずに、ただひたすらに今の「楽しい!」を願うのが白いうさぎ。ムギなんかは白いうさぎですよね。
絵本のオチをここで書くのは無粋なので伏せておきますが、二匹の選んだ選択肢は結末こそ違えども、彼女たちに似ている気がします。
 

●モブキャラたちを掘り下げてみる●

今回は、軽音部だけじゃなくても全キャラが青春していた回でした。
もうモブなんて呼び方失礼なんじゃないかなと思えるくらい。みんなちゃんと学園祭で個々が楽しんでるんですよね。
一番グッとキたのはこの子です。

手前のメガネのポニーテールの子。
奥にいる姫子や春子は割と声を出せる子なのでライブを楽しんでいるのですが、手前の子、声出せないんですよ。出そうとして、出せないんですよ。
一歩踏み出そうとして、できなかったこの子、きっと今までこういう場で踏み出せなかった子なんだと思います。今回は踏み出せなかったけど、踏み出そうとしたくなるくらい夢中になってたんですよライブで!
すごいじゃない! そのくらいいいライブだったんだな!
この子が自分の心を開けるようになるまで、あっという間だと思います。あとはちょっとの勇気だよ!
 
おとなしめチームだとこれもいいですね。

後ろの三人、ムギコールと、ムギの必死の叫びにめっちゃ反応しているんですよ。多分お嬢様で、ムギの知人なんじゃないかと思います。制服が違うのでこの学校の子ではないんですよ。
もしこの子達が、クラシックピアノだけのころのムギを見ていて、バンドでここまで楽しそうに叫べているのを目の当たりにしたとしたらどうでしょう。
多分今後出てくることはないと思いますが、彼女たちもHTTの熱気に当てられて「楽しい!」を手にしたんじゃないかと思うだけで、ワクワクします。
そして手前にいるメガネ二人が、19話の時に仲良くなったオカルト研の子。
見に来てね、って言ったら、ちゃんと展示を抜けだして見に来てくれた!
おいおいおい、なんだよ、うれしくなっちゃうじゃないか!
あんなトラブルがなければ、絶対接触のない仲間だったと思われるので、なおのことこの絆はあったかい。
 
元気な子チーム。

自分が大好きなチカちゃん(枝持ってる、普段ジャージを腰巻している子)もノリノリですが、手前のメガネさんと鬼太郎ヘアーのちび子さんは、19話の学園祭で、トラブルを共に乗り越えたことで絆が産まれた大切な仲間です。
もう「モブ」って言葉じゃくくれないよね。唯達の大事な友達じゃん。
 

これ動画じゃないとちょっと分かりづらいんですが、手前にいる瀧エリ、手拍子あってないんですよ。
作画的にはひとりだけ逆にあってないってすげー面倒くさい事だと思います。音も彼女だけちょっとずれているんですよ。
いきなり最初に聞いた音楽に全員があうわけがない、というのは非常にまっとうなことで。
リアルな学園祭らしさが相当意識されていたと思います。
 
そして「プロの観客」という面々。

最近クラス内でも絡みが多いので、ものすごくHTTメンバーとも、先生とも仲いいんでしょうねこの子達。
クラスの子がわー!ってステージの側までよっていく演出を見て、学生時代を思い出した人は相当多いんじゃないでしょうか。
先程も書きましたが、もうさいっこうの内輪受けライブなんですよ。
たとえ内輪でも、本当に楽しんでいるのが全力で溢れている場合は、他の観客をも飲み込む潮流になります。それが上で書いたメガネの子の心を動かしたんだと思います。この輪の中に入りたい!
MCとか進行はグダグダだけど、演奏の一体感、コツコツと積み重ねてきた技術、「今最高に楽しい!」という思いは間違いなく溢れていたからこその、「いいライブ」です。
 

●きちんと「グダグダ」を描くのは難しい。●

さて、唯達のライブですが、やはりグダグダだったことには変わりありません。
とはいえ、決して「物語がグダグダ」なんじゃなくて「ぐだぐだな彼女たちが最高だというのを描いた」という点は注目すべきだと思います。
グダグダになる演出をしているんですよね。

このシーンとかさりげないですがまあほんと、ずっと見ていた人泣かせというか。2期5話の、ギターの指ストレッチ(純ちゃんいわく「ブタ」)ですね。細かいよ! めいどっ!
唯を唯らしくきっちり描くためには、普通のしっかりした進行だったら、それは軽音部のリアルではない。純ちゃんに「グダグダ」と言われることまで含めての「最高のライブ」なわけで。
ほんとあったくて丁寧に描かれたグダグダでした。まさに、「けいおん!」シリーズを見続けてきた視聴者のためのライブでした。
 

●やさしいドラム●

演奏シーンが極めて少ない音楽アニメですが、やはり今回は思いっきり入れてくれましたね。
個人的にもうたまらなかったのが、律のドラムのシーンでした。

もう、動画で見て!としか言いようがないんですが、ハイハット(左のシンバルが二枚くっついているやつ)の動きが、今までと全然違うんですよ。りっちゃん練習しまくったな!最高だよ!
あとクラッシュの、手に負えない様なめんどくさい動きの再現。そうなんよなあ。叩いた後ゆらゆら揺れて、暴れ馬になるのが愛しいんよなあ。そのへんの物理的な動きをよくぞ再現したなと。

そして、リズムにあわせて波打つバスドラ。ほんと細かい部分ですが、ちゃんと彼女たちの息使いまで感じるような演奏を描いているのは素晴らしいです。
演奏シーンはもう感情の説明いらないんですよね。演奏そのものが彼女たちの感情そのものだから。
 

●律とムギから見た風景●

基本的にライブシーンは観客側から見た景色が描かれていますが、今回は「放課後ティータイムの結束」を描いているため、視点がちょっと違うんです。このアングルの使い分けはよくなされているなあと感嘆。
たとえばここ。

後ろから映すシーンすごく多いんですよね。
逆光になっていて、観客が見えないステージ上のカット。これはいわば、後方にいるムギと律の視線でもあります。

これは律視点。みんなを常に背中から見ている、ドラムならではの視線です。
ドラムやっていると、この「みんなの背中」がすごくいいんだよね。
頑張っている仲間の背中ほど最高の光景はないです。……とぼくはおもう。

これはムギ視点。ケータイ振ってペンライト代わりにしているのがみえているのがニクイですね。
また照明のライトが唯にかぶって、キラキラとまぶしいのがいいじゃないですか。
これが、ムギの見ている景色なんです。
「バンドって、すごく楽しいです!」って言っているムギの見ている光景なんです。

これもムギ視点。終わった後の唯。
ムギは全員のことが好きだし、誰と一緒にいても楽しいけれども、唯が眩しくて仕方ないんです。
 

これは和ちゃん視点。ハッスルしている唯にフォーカスが行っているあたり、さすが和ちゃんです。

そして、観客のクラスメイト視点。
こんなに近くの高い位置で、普段よりも思いっきりかっこよく決めている友人がいる。
彼女たちがテンションマックスで「最高!」って叫ぶ気持ち、わかるでしょう!

ライブに入る前の、追いかけていく後ろ姿。背景も動きます。
これだれの視点かというとおそらく梓だと思います。根拠はないんですが、唯の背中を見て追いかけていくのは梓しかいないじゃないですか。
最後の学園祭に向かっていく三年生の背中を見られる立場にいるのは梓だけじゃないですか。
 
とにかく全部追っていくとキリがないくらい視点が意識されている30分弱でした。それを意識しながら見るだけで、セリフとのシンクロが相まって込み上げてくるものがあります。
 

●そして時は流れて行く●

今回どこをとっても「最高」を楽しんでいた、としか言えないんですが、あえてその中でもいいなあと感じさせられたのを挙げるとしたら次回予告でしょうか。

あんだけワンワン泣いて、最終回級の盛り上がりを見せていたのに、すっげーいつもどおりなんですよ!
これ、これなんだよ、彼女たちが「今」を楽しんでいるってのは。
 
そりゃ、見ていてこっちも寂しかったし、次がないのは残念だし、悲しいし、最終回近いって考えると切ないけど、でも逆にまだ数話もあるんですよね
あまりにもクライマックスすぎてここで終わってもいいと思ったくらいなんだけど、まだ「最高の」「いつもの日々」が見られる。
恐ろしいほど幸せじゃないか。
 

学校に止まっていた5羽の鳥は。

飛び立って行きました。
実際には梓はまだ卒業しないことを考えると、鳥が飛び立つ=卒業ではないです。
そうではなくて、彼女たちが一つ絆を手に入れて、飛び立っていけるだけの力を手に入れたということだと思うのです。
みんなで演奏して、みんなで思いっきり泣いた日々のことは絶対忘れない。
ぼくも、彼女たちのことを絶対忘れない。
 

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