大都市のターミナルエリアは消費のブラックホールへ・・

GWを前にして、渋谷ヒカリエなど新たなショッピングビルがオープンするというニュースを聞きながら、「このしわ寄せはどこに行くのかね」って思いました。

よくよく考えてみてください。日本は人口も減っていて、中でも若年者人口は減り続けています。収入も可処分所得も延びてないし、ということは、個人消費の総額だって伸びてるはずがない。

全体として個人が使うお金の総額が変わらないなら(というか、むしろ減っているのだから)、こんなにどんどん新たにショッピングビルができれば、当然、その分、売上が減っているお店なり、エリアがあるはずです。

過去10年、六本木ヒルズにミッドタウン、その他にも原宿から銀座、新宿、そして東京駅周辺からお台場まで、新たにできたショッピングビルやエリアは数え切れないくらいたくさんあります。大阪だって駅ビルがスゴイことになってるし、ミナミにも新たなお店が増えてます、全部が全部、流行っているわけでないにしても、それらの場所が吸い込んだ「消費マネー」は相当額に上るはず。

ではその分の消費は、どの店、どのエリアが失ったんでしょう?

よく地方では「イオンのショッピングモールができて、駅前の商店街が死んだ」と言われます。それ以外でも、郊外型の大型店によって、駅前小売店の売上がごっそり奪われるのはどの地方でも同じです。では東京や大阪の新ショッピングエリアは、どこの売上を奪ってるんでしょう?


たぶん、ターミナル駅沿線の駅前商店と駅ビルですよね? 新宿に新たなショッピングエリアができれば、中央線の各駅、京王線、小田急線の各駅前にあったレストランや飲み屋さん、あと、雑貨屋や洋服屋、靴屋さんなどが少しずつ売上を失ってるはず。渋谷や池袋、恵比寿からの沿線も同じでしょう。

東京駅周辺や銀座は特に、近隣県の各都市からも売上を奪っています。千葉や埼玉の中途半端に都心に近い町は、けっこうな影響を受けてるのでは? 大阪だって兵庫県のJR,阪急・阪神沿線の各町はもちろん、和歌山や奈良からも消費を奪っているはず。


しかも東京の地下鉄はここ20年くらい、延長だの新規開業だの乗入れだので、めちゃめちゃ便利になってます。郊外の住宅地からターミナル駅の巨大ショッピングエリアに、消費者を運んでくる力がどんどん増強されている。(だから休日でも電車がスゴク混んでいる!)

一方、新宿や渋谷から10駅以内くらいの駅の周りには、安いメシ屋、コンビニ、スーパーマーケット、パチンコ屋、薬屋など、日々の生活に必要な、ごく身近なモノを売る店だけが残り、それ以外は都心のでかいショッピングエリアに行けと、そういう感じになってます。


結局のところ、生産性の低い店が生産性の高い店に客を奪われるという流れは、地方だけじゃなく、都心でも起こってるわけです。というか、たぶん地方で起こっているよりよほど大きな額が、「沿線駅前」から「ターミナル駅付近の巨大ショッピングセンター」に移ってると思います。

ただ、それでも都市部の場合は人口が半端なく多いので、地方における「シャッター通り」みたいな問題は起こらない。

それと、東京の沿線の駅前なら、下手に店を続けているよりは、店を閉じてアパートやマンションを建てた方が儲かるから地主も困りません。むしろその方が楽に儲けられるし、その観点から見れば、ターミナル駅に新たなショッピングセンターができるのは、むしろ歓迎すべきことです。

そうなると、沿線の町はどんどん「住宅地」になっていき、住む場所と、消費する場所がますます乖離していくのでしょう。


都心のターミナル駅周辺では、今でも集中的な大規模開発が続いており、どこもかしこもずっと工事中です。10駅どころか1時間圏内(もしかして、もっと?)から客が呼べると(奪えると)いう目論見でしょう。さらに言えばこの巨大な消費集積自体が、地方から大都市への人口流入の動機にもなっていると思われます。

最近の渋谷なんて“行きたくなくなる”ほど多数の人が集まっており、凄いことになってきたなと感じます。最近ちきりんが理解したのは、日本の大都市って、もう十分に開発されちゃったのかと思っていたら、全然そんなことはなかったんだということです。

東京は、まだまだ全く発展途上です。日本全体は停滞してるのかもしれないけど、少なくとも東京と大阪だけは、今でも高度成長期を続けているというわけです。



そんじゃーね。


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