氷水で頭を冷やしたら、寄付とよりよい世界について考える

(寄付をしないのなら)次のチャレンジャーを指名してバトンを渡しつつ、氷水を浴びる動画を撮影しろという、爆発的に広がったキャンペーンで、筋萎縮性側索硬化症*1という難病について、僕は知ることになった。バケツをひっくりかえして、冷たくてあわてる姿は、すこしかわいい。ザッカーバーグもやってたし、ゲイツもやってたし、山中教授もやったらしい。動画を観ている僕らだって楽しいし、とても大きな寄付が集まったと聞く。企画は大成功を収めた。


Ice Bucket Challenge - The ALS Association
http://www.alsa.org/fight-als/ice-bucket-challenge.html


どうしても、今回のイノベーションについて、もっと考えたくなる。どんな発展があるだろうか。寄付を必要とする、他の分野にも応用できないだろうか。残念ながら、妙案は浮かんでこなかった。秋冬に向けては、とびきり熱い風呂に浸かって広告するキャンペーンも有り得るかもしれないが、二番煎じの感は否めない。有名人による我慢大会の面白動画がYouTubeを埋め尽くしたとして、それが素敵なことだとも思えない。


僕らは、難しい病気や難しい状況に、いつだって立ち向かいたい。困っている人々が、よりよく暮らせたらと思う。困ってしまう状況が、改善されたらと思う。


比較的わかりやすい形で消費され、分業と報告が仕組みとして成立している分野では、「儲かりそう」なところに資源を突っ込むことで配分は行われている。ところが寄付を必要とする領域は、なかなか簡単でない。僕らは、どんな難病がどのくらい存在しているのか、よく知らない。困難な状況が、どんなふうにあちこちに蔓延しているのか、よく知らない。それらのひとつひとつが、どのくらい解決が近いのか遠いのか、よく知らない。そこに投じられたマネーが、金額あたり、どのくらい力を発揮するのか、よく知らない。どんな素晴らしい連中が問題に取り組んでいるのか、どんなインチキな連中が巣食っているのか、よく知らない。


氷水をかぶるキャンペーンは、僕らが抱える無数の困難の中でも、突出した結果をこの夏に生み出した、実に素晴らしい成功だった。難病への対処が、すこしでも進むとよいなと思う。そうした柔らかな嬉しさを含む均衡について、どうしても考えたくなる。困難なチャレンジへの寄付と、物やサービスを受け取る消費と、儲かるかもしれない投資と、それぞれ僕らは比較しながら、お金を投入する先について探り続ける。綱引きは終わらない。