CERN、性差別発言の科学者を出入り禁止に

Cern, the World's Largest Particle Physics Laboratory on April 19, 2017 in Switzerland

画像提供, Getty Images

欧州原子核研究機構(CERN)は1日、物理学は「男性によって発明され成り立った」と発言した科学者を即日、出入り禁止処分とした。

ピサ大学のアレッサンドロ・ストゥルミア教授は、CERN主催のジェンダーに関するワークショップでこの発言をした。

BBCのパラブ・ゴーシュ記者が最初に報じたところによると、ストゥルミア氏は物理学が「男性差別的になっている」と述べた。

CERNは声明で、この件について調査する間、ストゥルミア教授を出入り禁止処分とすると発表した。

CERNは、ストゥルミア氏の発表は「受け入れられないものだ」としている。

さらに、「CERNは常に平和的かつ包括的な環境で科学的使命を遂行するよう努力して」いて、同氏の発表内容は「CERNの行動規範に反する」と説明した。

また、CERNと共同研究にあたるピサ大学に所属するストゥルミア教授の視点が「このイベントの重要なメッセージと功績に影を落とす危険性がある」ことを「残念に思う」と述べた。

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ストゥルミア教授はCERNで定期的に活動しており、ジュネーブで開催された高エネルギー物理学とジェンダーに関するワークショップに参加した。

参加者は若い女性物理学者が圧倒的だったが、同教授は研究の結果、「物理学で女性差別はない」ことが「証明された」と述べた。さらに、「しかし、真実はどうでもいいのだ。外部から入り込んだ政治的闘争の一部だから」と続けた。

ストゥルミア氏は複数の図表を使って発表し、男性は女性よりも論文の引用数が多く、それゆえに研究者として優秀なのに、男性より女性の方が多く雇用されていると主張した。

また、キャリアのスタート地点では論文引用数は男女で同等だが、キャリアが進むにつれ、男性の方が引用される回数が多くなると述べた。

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ストゥルミア教授は発表中に「男性が差別されている例」と題したスライドを示した

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ストゥルミア氏が発表で示した図。男性の方が科学者としてのキャリアが進むにつれ、研究論文への引用回数が増えていくと主張している

BBCの取材に対してストゥルミア氏は、「みんなが物理学は性差別的、人種差別的だという。私はいくつかの単純な事実確認をした結果、実際には男性が差別されていることを発見し、そう言ったまでだ」と述べた。

これに先立ち天体物理学者のジョスリン・ベル・バーネル教授はBBCに、女性に対する無意識の偏見が、物理学研究の分野で女性の雇用を妨げていると指摘していた。

また2012年に米科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された研究によると、研究機関における理系研究者は新規採用にあたって、男性名の応募用紙を、女性名のものより高く評価する傾向にあることが分かっている。

CERNは現在、ファビオラ・ジャノッティ氏が所長を務める。女性所長は初めてだ。CERNは当初、ワークショップでのストゥルミア氏の発表内容を事前に察知していなかったと述べていた。

同機構の広報担当者は、ストゥルミア教授の発表は録画があると認めている。これの一部あるいは全体を公表するかどうかは、今後、役員が決定するという。

2015年には、ノーベル賞受賞者のティム・ハント教授が韓国で若い女性科学者たちを前に、研究室における「女子の問題」は「批判すると泣くことだ」と発言したことで、ユニバーシティー・コレッジ・ロンドンの職を追われている。