文具王こと高畑正幸さんが作ったその名も「文具王手帳」。ある意味で究極の“全部入り手帳”だった――。
文具王こと高畑正幸さんが手帳を作った。考え得る限りの機能を盛り込んだというこの「文具王手帳」を分析してみよう。
結論から言えば、これはある意味で究極の“全部入り手帳”である。まずはこの“全部入り”のゆえんをチェックしたい。
基本的な事項を確認する。文具王手帳は手帳と命名しているが、実際はリフィル入れ替え型のバインダーといったほうが分かりやすい。サイズは224×115×20ミリ(縦×横×マチ、折りたたみ時)。バイブルサイズのシステム手帳よりは数センチほど縦に長い。リフィルには市販の各種タイプか、自作のリフィルをとじるスタイルである。
この手帳が既存のものと一線を画す最大の特徴がバインダー表側の通称ベルクロ、いわゆる面ファスナーだ(実はベルクロは米ベルクロの商標、マジックテープはクラレの商標なのである)。
ベルクロハック(その1、その2)は文具王のお家芸でもある。iPhoneや手帳、MacBookなどの手荷物にはすべて面ファスナーをつけておき、移動するときにはそれらを貼り付けて持ち運ぶという知恵だ。文具王手帳の表紙に付けた面ファスナーもそのための工夫である。
自作の手帳は、作った本人が最大限に便利に使える工夫が施されているもの。文具王手帳もその例にもれず、作った人、すなわち高畑さんが便利に使うための手帳だといえる。もちろん、文具王流にベルクロハックを駆使する人にも歓迎できる工夫だろう。
バインダーを開くとさらに驚く。中央にはバイブルサイズのリフィルをとじるための6穴リング(15ミリ径)。右側のポケットには、「カンガルーホルダー」をセットしている。
「『超』整理手帳」のユーザーならご存じだろうが、カンガルーホルダーは「超」整理手帳を特徴付けるパーツで、8週間を一望できるスケジュールシートは、蛇腹に折りたたんではさみこめる。A4用紙をはさんでおくにも使える。
なお、カンガルーホルダーの下には、大小2つのポケットを備えた。大きい方の幅はA4に合わせたもので、小さい方は名刺が挟めるサイズだ。バインダーの裏側は、ジョッターになっている。ここにはA4四つ折りの紙や、バイブルサイズのリフィルをはさんでおく。すると、手帳を開かなくてもメモがとれるわけだ。
このほか文具王手帳の特徴として、
などを挙げておこう。
システム手帳とカンガルーホルダーを組み合わせる――。単純なことだが、これは誰もが思いついても誰もやらなかったことではないだろうか。いわば、この文具王手帳においては、リング式のシステム手帳と「超」整理手帳がひとつのバインダーの中に共存しているのである。蛇腹式スケジュールシートの上下をカットして、6穴パンチで穴を開けてシステム手帳にとじている例はどこかのブログで見た覚えはあるが、製品としては初見だ。
その結果、バイブルサイズ用のリフィルと、オフィスでもっともよく使われているA4サイズの紙を同時に保持できるようになっている。とくにシステム手帳は、市販、自作ともにリフィルの選択肢が事実上無限である。それをA4プリント用フォルダと合体させる発想まではできても、カンガルーホルダーの販売元にまで納得させ、単体でおろしてもらうのはなかなかできるワザではない。
バインダーを作るのは、紙を加工するのとは比較にならない手間がかかる。商業ベースでやるとなればなおさらだ。そして文具王手帳は、前述したように販売されている立派な商品なのだ。カンガルーホルダーを特別におろしてもらった「超」整理手帳の販売元である講談社との交渉といい、6穴バインダーと合体させてしまう発想といい、これは実験的なアイデアが本当に実現してしまった好例だろう。
次回以降も文具王手帳の分析を続けていく。この手帳にはどういうメッセージが込められているのだろうか――。
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