「プリウス」上回る燃費性能要求 米大統領が新規制案
現行基準の2倍、1リットル23キロに
オバマ米大統領は29日、自動車の新たな燃費規制案を発表した。2025年に燃費性能を1ガロン当たり54.5マイル(1リットル当たり約23キロメートル)前後に高め、現行の約2倍の厳しい基準に設定した。環境重視をアピールするとともに、電気自動車(EV)など環境対応車産業の米国内での育成を図る狙いもありそうだ。
オバマ大統領はワシントン市内で新規制案を発表。同案を巡る自動車業界との合意について「輸入原油への依存度を減らすための大きな一歩」と意義を強調した。
今回発表したのは17~25年の規制案で、乗用車と小型トラックが対象。自動車メーカーが扱う各車種を販売量で加重平均して算出した燃費が基準を満たす必要がある。米政府は既に燃費基準を段階的に引き上げ、16年には現在より約3割高い1ガロン当たり35.5マイルとすることを決めている。
オバマ政権は当初、25年に1ガロン当たり56.2マイルとする方向で調整に入った。米メディアによると、自動車業界から激しい反発が出たため、引き上げ幅をやや縮小。これにより、主要メーカーの多くから基本的な合意を得られたという。
オバマ大統領の発表にはゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、クライスラーの米自動車大手3社の首脳や全米自動車労組(UAW)の幹部も同席した。
米国トヨタ自動車販売(TMS)のジム・レンツ社長は同日、声明で「(今回の燃費規制値は)非常に野心的な目標だが、達成へ向け努力する」と述べ、新規制を支持する意向を示した。既にホンダも27日、米現地法人のジョン・メンデル副社長の声明で、「今回の取り組みは顧客にとっても環境にとっても良いもので、前向きに対応する」と表明していた。
ただ、メーカーにとっては新規制への対応は大きな挑戦となる。トヨタのハイブリッド車「プリウス」の現時点での燃費(1ガロン当たり約50マイル)をやや上回る性能を各車種の平均で求められ、年間では約5%の燃費改善が必要になるという。
自動車業界が10年以上も先の技術や経済情勢などを予測するのは困難と主張したことを受け、規制を将来見直すことがあり得るとの内容も盛り込まれる方向だ。
オバマ大統領は15年までにEVなど環境対応車100万台普及の目標を掲げる。今回の規制や車載電池など技術開発への支援強化を通じて、国際的な技術開発競争に対応したい考えとみられる。
(ワシントン=御調昌邦)