板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ITAKURA’s EYE 「経済リスクの高い環境下でのビジネスモデル」

現在のように経済見通しが不透明であるとき(=リスクが高いとき)ほど、「ダウンサイドリスク限定、かつ、アップサイドリスク(が論理的に)無限大のビジネスモデル」の優位性が高まると感じます。

「ダウンサイド限定&アップサイド無限大」について過去にさんざん書いていますので、ご興味のある方は、このサイトのサイト内検索にて「ダウンサイド限定」といったキーワードで検索してエッセイをご一読ください。

ここで簡単に説明すると・・・

例えば作家というビジネスモデルの場合、ダウンサイドは「書いたが全く売れない」となりますが、この場合でも作家にとっての損失は「書いた労力」に限定されます。
一方、アップサイドは「ミリオンセラー!」に万が一なったとすれば、印税がっぽり、かつ、増刷による流動費ゼロですから、まさに経済リスクが高い環境下で優位性の高いモデルです。

例えば貸金業というビジネスモデルの場合、アップサイドは「すべてがうまく行った場合」でも、お金を貸すときに契約した内容の範囲・・・つまり期間と金利・・・に限定されてしまいます。一方のダウンサイドは、100%の貸し倒れの続出に限定されず、現在では「過払い金請求」までダウンサイドが広がる可能性があります。
つまり、一見儲かりそうなビジネスモデルであるはずの貸金業は「アップサイド限定」ですから、経済リスクが高い環境下では、劣勢のビジネスモデルと言えるでしょう。
(注意:「武富士」の経営破綻の場合は、それ以上に政策の犠牲という側面の方が強いと思います。)

ちなみに、経済リスクの高い現在、以上の理論では非合理的と言える「債券」に投資資金が集まっている現象は、市場が「債券にはアップサイドが無い上にダウンサイドは突然やってくる」ということを「利回りに関する契約があるから」ということを理由に忘れているからなのだと僕は思います。あくまで推測の範囲ですけれど。

金融の世界でも、イクイティー市場については、ダウンサイド回避の動きを感じます。
例えば投資銀行の自己売買部門の縮小などがそれにあたると思います。
自己売買では、売買実績が同社のダウンサイドにもアップサイドにも影響を与えますが、自己売買ではなくブローカレッジ業務(取引業務)だけに専念すれば、「誰が儲けようが損しようが自らのダウンサイドは限定され、その上、取引量さえ増えればアップサイドになる」というモデルに移行できる訳ですから。

これから経済リスクの高い環境の中で「起業を」と考える方がいらっしゃるのならば、「ダウンサイド限定&アップサイド無限大」のビジネスモデルをお勧めします。
このモデルでなければ絶対に儲からない、という意味ではありませんし、このモデルならば絶対に失敗しない、という意味でもありません。

参考エッセイ:

2010年9月28日 板倉雄一郎


PS:
本と現在の世界経済は、その因数に占める「政策」の割合が高すぎて、全く読めないですよね。
こういうときは、そんな環境を打開することと同時に、長引く場合に備えて、環境に逆らわないビジネスモデルを構築すべきだと思う訳です。

PS^2:
それにしても台風以降、秋を通り越していきなり冬の入り口になったようですよね。
読者の皆様も体調には十分お気をつけ下さい。




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