気仙沼市立病院ならびに東北大学は1月28日、2008年から2010年にかけて、けいれん患者(頭部外傷や脳卒中などの急性疾患を有さない)の割合が全神経疾患の内それぞれ11%、5%、0%であったのに対し、2011年には患者数が20%と増加したことを突き止め、生命の危機に瀕するような震災を経た後のストレス環境が、けいれん発作の誘発を増加し得ることを示したと発表した。

成果は、気仙沼市立病院 脳神経外科の柴原一陽氏(現 仙台医療センター 脳神経外科勤務)らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、現地時間1月7日付けで専門誌「Epilepsia」オンライン版に掲載された。

これまでに、自然災害後のストレスや環境はけいれん誘発に寄与するという議論がなされてきたが、このことを疫学的に論じた報告はほぼなかった。そこで研究グループは、東日本大震災が発生した3月11日を基準とし、その前後8週の間に気仙沼市立病院で緊急加療を要した脳神経疾患全例を、2008年から2011年の4年間にわたって検討を行った。

その結果、震災前の2008から2010年までのけいれん発作による緊急加療の頻度は0~12%であったに対し、2011年の震災後では20%にまで増加していることが判明したのである(画像1)。

画像1。震災前後における神経救急疾患の内訳。全対象を、Epilepsy(けいれん)、Tumors(腫瘍)、Trauma(外傷)、Stroke(脳卒中)、others(そのほか)の5つに分類しており、2011年のEpilepsyの頻度は20%に達している

画像2~5は、震災日である3月11日を基準とした、前後8週における2008~2011年の週ごとのけいれん患者の内訳。震災直後の1週目にピークを認め、有意差を持って頻度が増加しているのがわかる。

画像2。2008年

画像3。2009年

画像4。2010年

画像5。2011年

震災後、けいれん患者の85%は何らかの脳疾患の既往があったものの、日常生活の自立度を示す「バーセルインデックス」の値は比較的高く保たれていた。バーセルインデックスとは、日常生活の自立度を示す指標の1つで、食事やトイレ動作、入浴、移動などの10項目を、自立や部分介助といった形で数段階に分けて評価する。指標の点数が高ければ日常生活における自立度が高く、低ければ要介護となるというものだ。

加療を要した患者は「低たんぱく血症」を示していたが、これは震災後の栄養状態不良を示唆しており、間接的にストレスの指標となり得ると考えられるという。

また、ストレスは普遍的なけいれん誘発の原因ではなく、脳疾患の既往がありストレスを感じることができる程度に自立度が高い人々において危険因子となる可能性を示唆した。

今回の結果は、ストレス環境下におけるけいれん発症増加を疫学的に示したのみならず、その背景にある病態についての重要な情報を示唆しており、今後のけいれん予防に重要な知見を与えると考えられると、研究グループはコメントしている。