紺色のひと

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僕は妻の背中に嘘をつく

これから僕が書くことは、全て一片の曇りもない嘘である。こんな生活を送っている「僕」はこれを書いている僕とは何の関係もないし、「妻」も僕の妻を指さない。全ては四月馬鹿の日に書かれた、僕のエアー妻(空気嫁)との生活や旅の出来事についての創作である。その点、お含みいただきたい。



僕が妻と結婚して、今月の末で3年目になろうとしている。すぐ近くにあったお互いのアパートを行き来して結婚への準備を進めた。婚姻届を出しに行った日と妻のアパートの立ち退き日が一緒で、妻は明るい日光の下、むやみやたらにスキップしていた。アパートの近くを通ると、お菓子工場の甘い匂いは変わらないけれど、閉店したパチンコ屋がコンビニになっていたりして、街の移り変わりのほんの一部を垣間見たような気持ちになる。



届けを出して一緒に暮らし始めてすぐ、僕が友人の結婚式で長野に行くことになって、当然のように妻もついてきた。事実上の新婚旅行みたいなもの。新宿駅で落ち合う。妻の背中に迷いが見えたことは今のところ、ない。8時ちょうどのあずさ5号に乗ったので、ふたりで狩人の「あずさ2号」をデュエットした。



披露宴が諏訪湖のほとりであったので、そのまま妻と旧中山道・妻籠宿に向かう。古くからある町に訪れるのが僕も妻も好きで、お互いの写真を撮り合って進む。記念写真的なものは少なく、いつも僕の画角のどこかに、カメラを提げた妻が移りこんでいる。



長野から新潟を抜け、僕が以前住んでいた山形へ。お世話になった方に妻を紹介したりした後、古い温泉街、銀山温泉へと向かった。妻と行く旅先は、そのすべてが僕の中で「また訪れたい場所」としてリストアップされている。
なお、山形県にある日本一のクラゲ水族館、加茂水族館に訪れた際のことはこちらのエントリに詳しい



山形から仙台に向かう途中、山寺へと寄る。元体育会系の妻は、芭蕉がヒイヒイ言いながら登ったという立石寺の石段など余裕綽々である。




札幌から遠い海に行ってみたりもする。僕は海にあまり縁がないが、妻は祖父母が漁師町に住んでいることもあって、なんだか海が似合う。写真は僕の雨具を着て、アウトドア誌のモデルぶる妻。



海の次は山。天気がよかったので、妻と一緒に大雪山に登ってみる。僕は野外活動が好きだけれど、積極的に山を登る趣味はなくて、大雪入りはこのときが初めてだった。よく訓練されたPTA(Perfumeファンクラブ)会員であるところの妻は、こういうときにも宣伝を欠かさない。この大雪行は僕たちの結婚式の一週間前で、妻は義母に電話で「式の前になにやってんの!」と怒られた。



あっという間に秋が来て、結婚式を挙げた。隣接した公園で写真を撮っていると、通りがかりの女子中学生に注目される。僕はタキシード姿でそれを撮っていた。後に妻は「一日にあんなに『かわいい』と言われた日はなかった」と振り返っている。妻かわいいよ妻。




冬の間、僕の仕事が忙しいことや、僕が冬道の運転を苦手としていることから、僕たちはあまり外へ出かけずに過ごす。家に帰る時間が少し遅くなって、妻の作ってくれた晩御飯を食べ、手を合わせてごちそうさまをした後、横に並んだ各々のパソコンに向かって巡回行為をしたり、音楽を聞いたりする。
結婚前、妻はあまり料理が得意ではなかった。包丁捌きからフライパンの扱い、味付け、皿洗いの手順に至るまで、全てがおぼつかなかった。妻は自分のそういう点を冷静に分析した後、僕に「根拠はないけど出来るようになるから」と言い、その言葉通りできるようになった。二年が経った今、料理は僕よりも上手になったし、レパートリーも増えた。いつもクックパッドとにらめっこをして品目を増やそうとしている。
それでも生来のドジっ娘気質はなかなか直らないらしく、今日のチヂミはつけタレの分も一緒に生地に入れてしまっていた。さすがに塩と砂糖を間違えるレベルのをやらかしたことはない。以前、僕がメシマズ(嫁のメシがまずい)スレまとめを読んでいたら、その後妻も読んでしまったらしく、絶対にああはなるまい、と反面教師にすることを強く誓っていた。こういう意志の強さが魅力のひとつだと思っている。



結婚して一年目の春、僕と妻は初めての海外旅行に出かけた。旅行の模様はこちらのトルコ旅行記エントリに詳しいが、残念なことに妻は帰国後、僕と二度と海外旅行に行きたくない、と言った。理由を聞くと「思い込みでひとを責めるから」「お腹が空くと機嫌が悪くなって話を聞かなくなるから」とのこと。最近はそうでもないらしく、また行ってもいいかと思い直してくれたようで、僕としては一安心である。



さて、北海道にもまた春が来た。連れ立ってマガンの渡りを見に出かける。妻は野鳥観察などに興味はないと言うが、僕が好きなことなら興味が沸く、と言ってついて来てくれる。一緒に出かけて、色々なものを見ることができるのが何より嬉しい。




僕の母や叔母、祖母ともすっかり仲良くなった妻。一緒に山菜取りに出かけ、祖母の庭に植える花などを買うのに付き合った。僕はカメラを振り回してあちこち歩いた。妻も同じくカメラを振り回していたが、ポーズが明らかにおかしい。




道内では代表的な観光地のひとつ、登別温泉は地獄谷へ。僕は初めて訪れる場所だったが、トルコへ行って吹っ切れて以来、観光地らしい観光地も楽しめるようになった。やはり妻とおしゃべりしながらであったり、写真を撮り合いながらであったり、一緒に楽しんでくれるひとがいるのは素敵なことだと改めて思ったりする。写真はかっこいいポーズで記念撮影する妻。左下の「JIGOKUDANI VALLEY」の文字が可愛げ。



僕たちは先日、ネコの養女を迎えた。プッセが我が家に来てからは妻の顔は緩みっぱなしである。たまに太ももの上で爪を立てられて「ミギャーオウウオワァ」と声を挙げるものの、ソファで一緒に昼寝をしているところを見ると表情がそっくりで、もう似てきたかなどと思うことしきり。



僕のエアー妻の魅力は写真だけでは到底表現しきれるものではなく、嘘とは言え大変もどかしいのであるが、今日はこのあたりで勘弁させていただこうと思う。僕が妻の話をするとき、ひとによく惚気話と言われるのだけれど、僕にそのつもりは毛頭なかったりする。ごく当たり前のことだと思っている。これからもごく当たり前に、一緒に出かけて、風景の中にいる妻と、妻のいる風景の写真を撮って、こうやって掘り出して、妻と思い出しては話をしていたい。
できれば、エアーでなくて、本物の妻と。



〜編集後記〜

妻「これ、惚気じゃなかったらなんなの?」
僕「* ゚・*:.。.:*・゜+ d(*´∀`)b うそです +.:*・゜゚・*:. *」