ニュージーランド首相、銃撃犯の名前は今後一切口にしないと誓う
約100人が死傷したニュージーランド・クライストチャーチのモスク(イスラム教礼拝所)銃撃事件を受けて、ジャシンダ・アーダーン首相は19日、銃撃犯の名前を今後一切口にしないと誓った。
アーダーン首相は議会で、「男はこのテロ行為を通じて色々なことを手に入れようとした。そのひとつが、悪名だ。だからこそ、私は今後一切、この男の名前を口にしない」と、気持ちをこめて演説した。
「皆さんは、大勢の命を奪った男の名前ではなく、命を失った大勢の人たちの名前を語ってください。男はテロリストで、犯罪者で、過激派だ。私が言及するとき、あの男は無名のままで終る」
ニュージーランド・クライストチャーチで15日に発生した銃撃の被害は、死者50人、負傷者50人に達したほか、2人が重体という。
白人至上主義者を自称するオーストラリア国籍のブレントン・タラント容疑者(28)は、殺人容疑で訴追された。
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19日の特別議会で、アーダーン首相は「あなたの上に平穏がありますように」を意味するアラビア語の挨拶 「アサラーム・アライクン(Al-Salaam Alaikum)」で挨拶した。
銃撃犯は自分の犯行の様子を撮影し、フェイスブックでライブ配信した。
これを受けて首相は、ソーシャルメディア各社に対し、テロに対抗するために追加策を講じるよう求めた。
「こうしたソーシャルメディアのプラットフォームはただ存在するだけで、そこに掲載される内容に、プラットフォームは何の責任も負わないなど、私たちは甘んじて受け入れるわけにはいかない。各社は出版社でだ。単なる郵便配達人ではない。利益だけ得て責任は負わないなど、あり得ない」と首相は強調した。
米フェイスブックは19日、犯行動画のライブ配信中の視聴回数は200回未満だったと明らかにした。動画が削除されるまでに合計で約4000回も視聴されていたという。同社は最初の24時間のうちに、世界中で問題の動画を約150万本削除したが、そのうちの約120万本はアップロードの最中にブロックされたという。
遅れる埋葬
アーダーン首相は、銃撃犯は「最大限の法の力」で裁かれるだろうと断言した。銃撃から1週間後の22日はイスラム教の礼拝日にあたる。首相はニュージーランド国民に対し、この22日にイスラム教徒コミュニティの悲しみに寄り添うよう働きかけた。
イスラム教の伝統では、死後できるだけ早く遺体の洗浄と埋葬をしなければならないが、身元確認などが進まず、いまのところ遺族の元に返された遺体はない。
15日に2つのモスクで殺害された50人の中には、パキスタン、バングラデシュ、インド、トルコ、クウェート、ソマリアなどからのイスラム教徒の移民、難民、そして住民が含まれる。
アーダーン首相は18日、銃規制法の強化に内閣が「原則合意」し、詳細は25日までに明らかにすると述べた。