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夏目房之介の「で?」

さそうあきら『ミュジコフィリア』完結

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さそうあきら『ミュジコフィリア』は、現代音楽をやっている若者たちの話で、僕はといえば現代音楽には全然興味がない。けれども、この作品は面白い。現代音楽を作ったり聴いたりする場面を読むと、登場人物たちの体験している「音」や「音楽」を疑似体験できる。音楽は体の中に育っていて、流れている、という実感が、マンガの読みを助けてくれる。さそうあきらは、人が何かを表現してしまって、それを共有したり反発してしまうことを描いている。それを人間関係や社会の中でいきかう「音」の体験として物語化している。現代音楽という、あまりなじみのない世界を描きながら、それに興味を持たない人間にも感動というものをさせてくれる。さそうあきらのマンガは、稀有だと思う。

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