杜の都のSF研日記(アーカイブ)

旧「杜の都のSF研日記」http://d.hatena.ne.jp/sftonnpei/ 内容を保管しております

ターゲットは介護用機 〜PS製造拠点強行偵察〜

世界で唯一のサイボーグ型ロボット技術であるパワードスーツ/ロボットスーツHAL。これを生産しているのが株式会社サイバーダイン。つくば研究学園都市内のショッピングセンター、イーアスつくば内にある市民への情報公開拠点、「サイバーダインスタジオ」(内部の撮影は厳禁です)に向かう機会があったのでそれについて。

HAL実演では大きなお友達一名&小さなお友達一名がHAL体験装着を行っている。といってもさすがに毎回ぴたっと足の大きさを合わせるのは難しいようで、片脚部用HALの筋電位センサーを腕部に装着、まず腕を動かすとスーツが同期して動くほか、腕を曲げようと思っても係員に押さえられて出来ない という状況でもスーツが筋電位を検出して稼働する様をデモしていた。
装着権をかけてのじゃんけん予選では3回勝ち抜いたのだが、決戦でパーを出して敗北し、残念ながらHAL装着の権利は得られなかった。パーは何でこういつも負けるかね。
流石に小さい子の手を無理矢理曲げないようにするのは悪いと思ったのか後半でもちゃんと腕と同期して動いていたのが印象的。筋電位は腕でも足でもそう差はないようだ。
展示では技術進歩をバイオ・ソフト・ハードなど複数方面+関連するフィクションの発表で切り取った稼働映像年表はなかなかの力作。ウィキペディアにアクセスも出来たりする。ブリキからマイコンまでロボットのおもちゃ・資料・実物もすごい数だったがどうやって集めたのやら。社長ことアイアンマンのプロモにHALが登場した時のビデオもあった。


そして河森正治プロデュースのミニ映画「TARGET HAL」。これ見よがしにやまとの可変バルキリーとプラモの可変メサイア*1が劇中の研究室に置いてあったぞ!

内容はというとハインライン「ウォルドウ」やホーガン「ミクロ・パーク」、NHK教育「救命戦士ナノセイバー」のように、マスター・スレーブ方式で小型ロボットをコントローラーとして改造したHALで遠隔操縦しようという計画を扱ったもの。ちゃんとスレーブ側に伝わった力は(ある程度加減はされるものの)フィードバックされるほか、飛行機能なども追加されている設定。
大学に侵入した昆虫*2スタンドアローンのサーバーからHALのデータをハッキングをするなど意味不明な描写が多いと思った方も多いだろう。しかし、これは今すぐにも現実になりかねない技術なのだ。決してこれも絵空事ではない。
>>昆虫を偵察サイボーグ化:成虫まで生かすことに成功
http://wiredvision.jp/news/200803/2008032722.html
>>DARPAのサイボーグ昆虫軍計画
http://japanese.engadget.com/2006/03/19/darpa-insecterx/
すでに電極を脳に埋め込んだリモコンラットの実験に成功していることは有名だが、より単純な昆虫ではもっと成果が出るのではと期待されているという。


昆虫サイボーグ技術に熱心な場所と言えば、そして昔HAL開発に協力したいと言っていた国と言えば…
と、ということは…


「山海教授は、ロボットスーツ共同開発を打診しながら拒絶された某国が昆虫制御技術を使用してサイバーダインに対し強硬手段に打って出ることを恐れている!」


さすがに冗談だよな?ま、映画の方はちゃんと明るいオチがある。某国の陰謀とかやっても子供が理解できないし。


教授が軍事部門への協力を拒否したことに関していろんな意見があるようだが自分はこう考える
・軍用PSが物になるかは微妙
いくらPSを装着すれば防御力を強化できるといっても普通に動ける範囲内で自動小銃を確実に跳ね返せる装甲を持たせるのはまだまだ重すぎて困難ではないだろうか。そうまでしてもRPG-7やIEDから保護することはまず無理。それは物性や化学屋の仕事でロボット工学者の仕事ではない
・日本人に(現実的に)出来ることからやればいい
武器輸出三原則・外国為替及び外国貿易法」に基づく輸出規制品とかあるのでまぁゴタゴタするだろう。
先に民生用が普及し、こちらが輸出できるようになれば日本の企業が儲かり、多くの人が救われ、日本人が感謝される。それは別に恥ずべき事じゃない
ダミー会社で不正輸出し、リバースエンジニアリングする馬鹿が出るとか言わない


とりあえずこれで800円(おとな・年末年始特別料金)はギリギリじゃないか?とだけ思った。市民にアピールするならなおさら。でもウチのプロm<<この個所は不適切な表現があるため検閲されました>>

アキバつくばエクスプレス秋葉原から約一時間、研究学園駅裏にある株式会社サイバーダイン本社ビル
さすがにこの時間に入るわけには行かないわな。しかしいかにもな雰囲気がしてかっこいい。


というわけである意味で最も日本的な先進企業について。そのうちHAL生産ラインも整備されるということで、完成の暁には量産もあっという間だろう。その際にはぜひぜひ見学希望。

(ちゃあしう)

*1:無着色なのでおそらく制作見本段階のもの?

*2:戦闘用のクワガタとデータ収集用のカレハカマキリが登場。なんでこんな奴がと思ったら屋外でその擬態能力を存分に発揮してくれる