写真●日経SYSTEMSの森重和春副編集長
写真●日経SYSTEMSの森重和春副編集長
[画像のクリックで拡大表示]

 「仮想化インフラの導入に積極的な企業がいま、“企業クラウド”に取り組んでいる。企業クラウドを支える基盤は仮想化サーバーの単なる進化形ではない点に注意が必要だ」---。

 2010年10月18日に東京ビッグサイトで開催した「ITpro EXPO 2010」のメインステージに日経SYSTEMSの森重和春副編集長が登壇(写真)。「企業内ITインフラが変わる~クラウド基盤最前線」と題して講演した。講演で森重氏は「企業クラウド基盤」の実現に向けて乗り越えるべき三つの課題と対応策を先進ユーザーの事例を挙げて説明した。

パブリッククラウドのよさを自社システムに取り入れる

 企業クラウド基盤の課題に入る前に、森重氏は企業システムにおける仮想化の現状と課題を指摘した。「企業クラウド基盤は仮想化の課題を解決するという意味合いがある」(森重氏)からだ。

 サーバー仮想化をはじめとする仮想化技術の利用は、コスト削減につながる、シンクライアントやディザスターリカバリーなど幅広い用途に適用できる、システム構築の柔軟性が高まる、といったメリットがある。「2年前には、仮想化技術は主に開発環境に使われている程度だったが、ここ1年で急速に普及している。ERP(統合基幹業務システム)やデータベースを仮想化環境で利用している企業もある」(森重氏)。

 一方で、「企業システムでの仮想化の普及に向けた課題は多い」と森重氏はみる。開発や移行が困難、信頼性やセキュリティーを確保するのが難しい、性能確保が困難、運用管理が難しい、などを克服する必要がある。

 企業クラウド基盤により、こうした仮想化の課題を解決できるのではないか、という見方を森重氏は披露する。ここでいう企業クラウド基盤とは、「パブリッククラウドのよさを自社システムに取り入れた企業システムの形態」のこと。「仮想化によるサーバー統合」と「ITリソースのサービス化」を可能にする基盤(プラットフォーム)を提供する。

 前者ではリソースのプール化やプロビジョニング(自動設定や割り当て)、性能/構成管理といった機能を、後者ではプラットフォームの標準化やサービスのメニュー化、ワークフロー、課金体系などを実現する。冒頭の言葉にあるように、森重氏は「クラウド基盤は、単なる仮想化サーバーの進化系ではない」と強調する。