着信メロディ、凝ってますか? 私は、結構こだわってます。ストーン・ローゼスだったり、ローリング・ストーンズだったり、恵比寿マスカッツだったり……。

要するに、自分の好きな曲を生活の一部に取り入れたいというか。

だが、この着信音は毛色が違う。モバイルサイト「速報Musicサーチ」で、7月28日より「タバコが嫌いになるメロディ」が配信されている。

第1印象は、「そんなバカな」。着信が来ると嫌煙派になるだなんて……。一体、どういう着メロだというのか。
サイトを運営する株式会社インデックスに伺ってみた。
「このメロディは“正統派バージョン”と“インパクト重視バージョン”があります。“正統派バージョン”の方は、『1/f揺らぎ』(人間の感情を安定させる効果のある音)が含まれたクラシック音楽を流し、それをバックに、喫煙をすることで起こる病名を声優が淡々と読み上げます」

「1/f揺らぎ」とは、美空ひばりや宇多田ヒカルの歌声にも含まれるキモチのいい音。
それなのに、語られる内容は「クモ膜下出血」とか「動脈硬化」とか「肌荒れ・スキンケアの健康被害」とか……。エンディングは「それでも、あなたはタバコを吸いますか?」と、反省会にでも出席しているような一言で締めくくられる。どうにも、優しくない着メロだよ。


“インパクト重視バージョン”は、もっとキツい。バックには不安感を煽るような不協和音。曲の速度も段々と速くなり、聴き手の心拍数を上げていく。ヒッチコックのBGMを参考にしているという。
その上に被さるのは、声優の喫煙家に対する非難。「あなたはどうしようもなく、だらしない人間」と、涙目必至の激しい責め立てが繰り広げられる。


タバコをやめられない人にとっては、心の傷に塩をまぶすような内容だが、実はこの着メロを監修したのは「日本音響研究所」なる正式な機関。同研究所の所長・鈴木松美氏は警察で声紋分析などをされていた方で、今も音に関する研究に取り組まれている。

そんな音響研究所が手がけた着メロは、今回の「タバコが嫌いになるメロディ」だけではない。
たとえば、2005年からは「寝付きがよくなるメロディ」が配信されている。「電車に乗ると、どうして眠くなるんだろう?」という思いから、あの“ガタン、ゴトン”という定期的なリズムが人をリラックスさせると分析。そこから、睡眠の脈拍と合ってリラックスできて集中できるメロディを作ってみせた。


「美肌になるメロディ」は、美肌になるために必要な“血行をよくする”、“リラックスする”、“振動を与えて細胞の代謝機能を高める”の3要素を抑えた音に。「1/f揺らぎ」の効果に加え、ベース音を強くして肌に響かせる。さらにバイブを震わせて、美肌を目指すというメロディ。

「花粉症に効くメロディ」は、「鼻の奥に付着した花粉を音で落とせるんじゃないか」と考案。鼻の穴の空洞に共鳴しやすいメロディにし、携帯電話のスピーカー部分を鼻につける。これで、花粉をボトボトと落としてしまいたいと考えた。


これらのメロディ、実はバカにできない。たとえば、2004年に配信された「赤ちゃんが泣きやむ着信メロディ」のユーザーからは、「使ってみたら、本当に赤ちゃんが泣きやみました!」と、我が子を思う母からの感謝の声が、その効果を証明させる。

もちろん「これを聴けば必ず!」というものではなく、「音響学的にどういうアプローチができるか」という1つの提案として配信されている、エンターテイメント的な着メロ。
だが、意気込みはスゴい。「新しいケータイ音楽メディアの可能性を開拓します!」と、同社は意気込んでいる。頼もしいったらありゃしない。

(寺西ジャジューカ)