「幸福3.0」へアップデートしよう ■書評■ 『未来改造のススメ 脱「お金」時代の幸福論』
岡田斗司夫さんといえば、オタキングとして知られる「第一世代」のオタクとして有名な方。
僕は『東大オタク学講座』以来のファンであり、その発想の斬新さや言動には少なからず惹かれるところがある。
一方、小飼弾さんといえば当ブログの読者ならご存知であろう「404 Blog Not Found」を運営するアルファブロガーであり、書評ブロガーなら知らない人はいないであろう方。
『働かざるもの、飢えるべからず。』などに見られる社会観・価値観には共感できるところが少なくない。
本書は、そんなお二人が今の日本社会を語り、未来の日本社会を語る対談であり、個人としてのあり方から社会としてのあり方まで、全編大変に興味深い内容。
副題として「脱「お金」時代の幸福論」と掲げられているように、本書から感じられるのは、われわれの「幸福」に対する価値観のアップグレードが必要な時期に来ているということ。
流行りの言い方をするならば、さしずめ「幸福3.0」といったところだろうか。
どういうことかというと、幸福1.0を「生きられる(生存できる)ことが幸せだ」、幸福2.0を「一生懸命働いてお金を稼ぎ豊かになることが幸せだ」という価値観と置いてみると、幸福3.0は「個々人が生きたいように生きられることが幸せだ」という価値観。
マズローの欲求階層をイメージして描いてみたが、話題となった『モチベーション3.0』などにも通じる価値観の変遷なのではないかと思ったり。
そんな「幸福3.0」な価値観から、個人的にも特に共感している箇所を3つほど紹介させていただく。
これは今まさに僕が仕事に感じていること。
まだ「お金じゃないよ」とまでは達観できていないけれど(お金も大事!w)、少なくとも今の仕事で得られる経験は他では得がたいものだと思っているので、もう何年かボーナスがなくても僕個人は受け入れている(妻は…ごめん)。
お金だけで判断したら別の仕事を選ぶ道もあったんだけど、それは違うんじゃないかと思っている自分がいたわけで。
ただ、これ今は仕事ができることが別の意味で権利のようになってしまっているので、少し混同されてしまうかも。
この価値観の行き着く先には後述するベーシック・インカムという社会があってこそ。
そうじゃない現時点では、やっぱり普通は僕と同じように、お金も大事! という判断軸で考えていく人が多いんじゃないかな(それだけなら割と以前からそうだったはずだ)。
暗黙知を伝えるための家元制度的な組織。
こんな古くて新しい形態の組織が実際に動き出しているということが、本書で語られているような価値観で人生・社会を考えている人たちが少なくないことを表しているのかも。
まだまだ社会全体から見れば小さい動きだけど、後に続くような動きが起こると面白い。
(一歩、間違うと宗教みたいになってしまうような気も…。もし後続が出てきても、そこはきちんと見極めなければいけない。)
個人的には「ベーシック・インカム」をベースにした社会像は直感的にしっくりくるものであり、堀江貴文さんの『希望論』でも小飼弾さんの『働かざるもの、飢えるべからず』でもそう思ったものだ。
ベーシック・インカムの話をすると、「みんな働かなくなってしまう」という見解が出されることが多いけれど、そんなことはあり得ないし、本書でも岡田さんが一蹴してくれている。
ただ、この価値観に基づいてベーシック・インカムに移行するには並々ならぬ高い壁が存在するのが現実。
どういう形で実現に結びついていくのかのロードマップが思い描きにくいんだよな……。
こういった未来に繋がる価値観について、お二人がポンポンと思考の飛躍を見せながら語り尽くす。
思わず笑ってしまうような箇所もあり、ゆるいながらも刺激に満ちた対談。
ただ、僕も賛同するベーシック・インカムだけど、それはみんな平等になりましょうという話ではないし、それがすなわち幸せな社会だと言っているのではないことは強調しておかなければいけない(勘違いされやすいようだけど)。
岡田さんの言葉を借りれば「生きている間に受ける苦痛の総量が減るだけ」のこと。
※岡田さんにとって、この「苦痛を減らす」というのは大きなテーマのようだ。
自らの頭で未来社会を考えたいという気持ちのある人ならば、たとえ思い描く未来像が違うとしても楽しめること請け合い。
僕のように共感するもよし、一つ一つ反論してみるもよし。
常識の枠からはみ出して、明るい未来を考える材料に是非!
■ 関連リンク
岡田斗司夫ブログ: オタキングex
岡田斗司夫Twitter: @ToshioOkada
小飼弾ブログ: 404 Blog Not Found
小飼弾Twitter: @dankogai
■ 基礎データ
著者: 岡田斗司夫、小飼弾
出版社: アスペクト 2010年7月
ページ数: 240頁
紹介文:
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「豊か」であることを素直に認めれば、僕らはもっと楽しく生きられる。
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