キヨシローに憧れた『ずっとウソだった』

斉藤和義の『ずっとウソだった』がネット上でえらく話題になっている。

自身のヒット曲『ずっと好きだった』の歌詞を反原発のものに書き換えた替え歌であり、正式なリリースはなく、作品はyoutubeで発表された。アップされた映像は帽子を深く被り、サングラスをかけた男が替え歌を歌っていたため、斉藤和義のそっくりさんではないか?と言われていたが、ビクターが正式なコメントを発表。「意図しない形でアップされた」として本人であることが発覚した。

「本人の意図しない形で動画がアップされてしまい、アーティスト側も困惑している」というようなアナウンスだったので「斉藤和義も発表したくない作品を勝手に発表されて大変だなぁ」という認識があったのだが、なんと4月8日のUstreamライブにて、『ずっと好きだった』を歌い切ったあとにそのままアウトロから本人がこの替え歌を披露するというサプライズがあった。その瞬間にアクセスが集中して映像がフリーズし、演奏がストップするというアクシデントがあったが、そこでやめることなく、アクセスが落ち着いてから再び演奏しなおすという英断もあり、そのライブ映像も様々な形でyoutubeにアップされ続けている。

ちなみにそのUstのライブにて、映像がフリーズしたことがスタッフから告げられると、斉藤和義「フリーズ?どゆこと?止められちゃったの?(アクセス数が多くて……)フリーズしたんだ……なんちゅうタイミングで……何それ?誰かが意図的にやってんじゃないの?なんだよーそれー。いいとこだったのにー」とぼやいていた。画像のアップが本人の意図しない形かどうかその真意は不明だが、このコメントからも分かるように別に画像のアップ自体に本人は困惑してるわけではないようである。

さて、この『ずっとウソだった』に関してさまざまな意見が飛び交っている――――ぼくが見た限りでは批判的なコメントがやや多めといったところだろうか、もちろん賞賛するコメントもかなりあった。

もちろん個々の意見はとてもよく分かることだが、ぼく自身この替え歌を聴いて素直に思ったのは「今この時代に改めて「キヨシローを聴こうぜ」というメッセージ」であった。

もうすでにいろんなところで指摘があると思うので後だしジャンケンであることを承知で書くが、この『ずっとウソだった』は忌野清志郎の反原発替え歌『ラブ・ミー・テンダー』と『サマータイム・ブルース』の歌詞にとてもよく似ている。さらにそれらが収録された『カバーズ』のそれぞれの収録曲の歌詞のフレーズを思わせるところもあり、しかも原曲のフレーズをうまく使ってるあたりも『ラブ・ミー・テンダー』を「何言ってんだー」という風に変えた韻の踏み具合を彷彿とさせる。

忌野清志郎は他にも反原発の歌をオリジナルソングとして発表しているが、やはり一般的に有名なのはこの替え歌によるものだろう。

斉藤和義があえて自身のヒット曲を反原発の替え歌に使ったのはキヨシローが有名な曲を替え歌にしたことになぞらえたのではないだろうか。そしてそこに「ほうれん草くいてえなぁ」というようなフレーズを滑り込ませることで、キヨシローへのリスペクトを誰にでも分かるような形で提示したのだと思う。

それが証拠に斉藤和義はキヨシローのイベントに参加したり、寺岡呼人とゆずと共にGOLDEN CIRCLE名義で『キヨシローに憧れて』という曲を発表したりしている。

もちろん本人にも原発への強い憤りがあったりするのだろうが、もしキヨシローへのリスペクトがなければこの形では提示してないはずである。「今更このやり方で」という批判もあるし、国民的な生き物係を務めている方は「俺は斉藤和義さんの音楽が大好きだけど、「ずっとウソだった」は大嫌いだよ」という風につぶやいているが、もしこのやり方に対して嫌いだという風に感じているのであれば、あんたはホントに斉藤和義のことが好きなのだろうか?ちなみに斉藤和義は『青い光』という反原発の作品をとっくに発表しているよ。それからキヨシローの替え歌にはどうコメントしてくれるのかな?


ちなみに書いてから気付いたが、すでに似たようなことはここでも書かれているのであった。

キヨシロー「Love me tender」のアンサーソングとしての斉藤和義「ずっとウソだった」の無力感[絵文録ことのは]2011/04/08

ただ、この一曲だけで背景を知らずにぶっ叩かれるのは少しばかり早計かな思ったから補足として書かせていただいた次第である。ぼく自身はこのスタイルは好きだし、やってくれたぜ!と思ったのだった。もちろんこのやり方についてどうなの?という意見もよく分かることではあるが、あういぇ。

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