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2011/9/27 10:00 · ニュース解説

さて今日は、話題になっている、KDDIがiPhoneを出すとか出さないとか言う話について、KDDIとAppleの二社の視点から考えてみたいと思います。

まずはKDDI視点。

KDDIとしては、ここ数年絶不調で、とにかく何をやっても当たらないという状態が続き、シェア3位のソフトバンクが純増1位で伸び続け、グループ加入者数では間もなく逆転を許す、と言うところにまで追い詰められていると言う状況。

このような状況の中で、ようやく流行のスマートフォンに力を入れ始めたところですが、それでもいまいち市場は反応しない。おそらく渾身の一作であるIS03が、あっさりドコモ・ソフトバンクから同等機種が出たために平凡な売り上げに終わったあたりから、大きな方向転換を迫られたという事情があるかと思います。

そうなると、純増トップを支える強力なプロダクトであるiPhoneに目が向きます。折りしも、iPhoneはCDMA搭載タイプが話題になりつつあった頃。であれば、CDMAだからと言う理由で土俵にも上がれなかったKDDIにもチャンスがあるということになります。

一方、KDDIとてiPhoneによるトラフィックの増大は看過できない問題です。ソフトバンクがiPhoneトラフィックで四苦八苦している状況を目の当たりにして、iPhoneに手を出せるか、と言うのは微妙な問題。さらに言えば、Androidでも自社による垂直統合を目指す中にあって、完全に他社に主導権を渡してしまうiPhoneはビジネス的にも受け入れがたいものではないかと思います。

とはいえ、トラフィックの問題は、むしろiPhoneよりも通信量が多いといわれるAndroidへの対策を余儀なくされる状況にあり、また、Androidとて、KDDI垂直統合からは大きく外れ、むしろコンテンツ代行収入よりもパケット定額セット率向上によるARPU増のほうが収益向上に資する、と言う状況になってきたのかもしれません。独自Wi-Fi AP 10万局などトラフィック対策を打ち出した以上、最強プロダクトであるiPhoneを迎え入れたほうが得策と考えられたのでしょう。

さて次にApple。

Appleとしては、OSシェアでAndroidに追いつかれた後はあっという間に引き離され、このままではMacOSがたどった「シェアの力に潰される」と言う状況を再現しかねません。まだまだ安泰の人気を誇っていますが、それがいつどんなきっかけで一挙に潰されるか分からない状況。

その状況の脆弱さの原因は、「単一プロダクト」「取り扱いキャリア限定」であることは誰にも否めません。であれば、どちらも何らかの方法で解消し、常にオプションとバックアッププランを持ち続ける必要に迫られていたと考えられます。

「単一プロダクト」が脆弱性となりうるのは、やはり、その一つのプロダクトが市場の需要を大きく外してしまったときです。それは失望につながり、その次のプロダクトでの大きなシェア低減を招きます。まだ噂レベルではありますが、次(の次?)のプロダクトでは、新しいハードウェアとともに、現行のiPhone4の廉価版とも言うべきものを出す、とされていますが、これは、今現在確実に売れている、支持されているものを再生産し、新プロダクトの大ゴケに備えている、とも考えられます。

「キャリア限定」が脆弱性となるのは、もちろん今のソフトバンクのように、ネットワークが弱くユーザエクスペリエンスが低下するような状況。ネットワークに強く依存するプロダクトであるスマートフォンにおいては、ネットワークの品質低下はそのままスマートフォンプラットフォームの悪評にさえなりかねません。それを避けるためにも、あらゆるリージョンで2つ以上のネットワークの選択肢を提供すべく戦略転換している、と言うのが今の状況だと思います。

そして、キャリアを限定することにはもう一つのリスクがあります。それはテクノロジー、つまり「方式」のリスクです。もちろん、WCDMAとCDMA2000を比べて、WCDMAが負けて廃れて消えるということは絶対無いと言い切れますが、先進技術についてはどうでしょうか。つまり、LTE。日本でLTEを導入するのは今のところドコモとKDDIだけです。ソフトバンクは例によって口だけで、導入可能帯域はWCDMAで使い果たし、導入するかどうか自体に「?」マーク付き状態。となると、LTE導入が確実で、しかも日本では最もエリア充実が早いであろうKDDIを、LTE対応iPhoneの展開先として確保しておくことは、Appleにとっても重要なリスクヘッジの一つと言えます。もちろんネットワーク依存プロダクトとしてのスマートフォンにとっては、先進技術LTEがそのユーザエクスペリエンスを大きく改善する最大の武器ともいえますから、LTEキャリアを世界的に押さえていく必要があるという状況であるはずです。

と言うことで、強力なプロダクトが欲しいKDDIと、ネットワーク的なリスクヘッジとLTE展開先が欲しいAppleの思惑が一致した結果として、KDDIからiPhoneが発売される、と言うところに結びつくのは自然であると考えられるわけです。個人的には、KDDIの旧態依然とした体質が異質なiPhoneを受け入れられず退けてしまうだろうと考えていましたが、そうも言っていられない状況なのかもしれません。

と言うことで、KDDIとAppleについて、auネットワークでiPhoneを展開する理由を考えてみる一言でした。でわ。

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2011/9/27 10:00 · ニュース解説 · 4 comments
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4 Comments to “iPhoneにからむKDDIとAppleの思惑”

  1. […] Androidに関する、はてなブックマーク新着情報です。 iPhoneにからむKDDIとAppleの思惑 | 無線にゃん […]

  2. […] iPhoneにからむKDDIとAppleの思惑 | 無線にゃん […]

  3. ここは酷い第三国定住制度ですね…

    「農業やりたくない」 就職拒否のミャンマー難民夫婦が会見 – MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/news/110929/asi11092900180000-n1.htm ミャンマー難民:「事前説明と異なる長時間労働」改善訴え – 毎日jp(毎日新聞) http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110929k0000m040101000c.html そもそも政治難民になるのは向こうではそれなりの階級な……

  4. […] 先日、iPhoneに関してKDDIとAppleの思惑について書いたところ、やっぱり多かった反響は、Appleの思惑を満たすのであればKDDIよりドコモが適切ではないか、と言うものです。 […]

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