法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『探偵オペラ ミルキィホームズ』の脚本構成がすごすぎる

1回の放送ごとに複数の物語を入れてネタをつめこんでいくTVアニメに多い手法ではない。最初に提示した要素からキャラクターを転がしていきながら、制限をかけることなく行動を飛躍させていき、それでいてきちんと物語は閉じる。それも1話完結ではなく、ちゃんと前後の話と一定の繋がりを見せる。
しかも、ただのギャグに見せかけて、きちんとメインキャラクターの紹介を1話ごとに1人すませながら、新登場させたキャラクターの説明もこなしていく。ギャグを優先してキャラクターの心情を矛盾させるような描写も実はない。


パロディが主として話題になっている第4話「バリツの秘密」も、地味に構成がよくできていた。
たとえばヨコハマ大樹海について説明する台詞の時点で、後に描かれる一見して脈絡のない出来事の全てが登場している。ただ豆知識を長々と語っているだけに見せて、事件の前提や真実を堂々とまぎれこませる京極夏彦作品を思わせる技法。危機を回避する伏線にいたっては、危機が起きている最中にパロディじみた映像として再提示までしている。単にギャグだから御都合主義でも許される、といった描写ではないのだ。
ミルキィホームズで今回登場しないメンバーを物語から退場させておく展開でも伏線が見られる。警察捜査へ勝手についていって縄で縛られることと、その縛られた縄を食べること。後に監獄へ囚われる前ふりであり、縄を食べるほど飢えているのだから食べ物を利用した罠へ簡単に引っかかり外へ出る気力も失ってしまうことに説得力が出る。この縄を食べる描写はバリツのパロディにまで繋がるのだから、このような伏線を思いついたスタッフには驚嘆せざるをえない。いや普通なら思いついても恐くて使えない。
パロディの選定にしても、ただ宮崎駿関係という趣向かと思わせつつ、ミルキィホームズ登場人物のモデルとなったシャーロック・ホームズかアルセーヌ・ルパンがらみという共通点を持っている。『ルパン三世 カリオストロの城』はもちろんのこと、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』すら宮崎駿が演出家として関わった『名探偵ホームズ』の併映作品という無駄な繋がりがある。
何の意味もない出来事を並べるだけではナンセンスさは機能しない。何らかの基礎の上で飛躍し、固定観念からずらしてこそ笑えるのだ。