玖足手帖-アニメブログ-

富野由悠季監督、出崎統監督、ガンダム作品を中心に、アニメ感想を書くブログです。

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創作幻視小説版「夢兄妹寝物語」 2003年9月 第9話 第16節

サブタイトル:第9話 [家庭教師VSニンフェット!頭令兄妹誕生の秘密です!!]
前書き:兄と結婚するため、宇宙人の力で自らの出生の秘密を紐解いた頭令そらは、夢の中の世界で兄が他の女子にモテている事を目撃したのであった。時に2003年9月20日、そらの誕生日の事である。
  
  
そら「レイ!お兄ちゃんが夢の中であたし以外の女子高生にモテてる!他の女とケーキ食べてた!どういうことよ!」
レイ「そら様、落ち着いて下さい。紅茶をかけないで下さい。夢の中の世界の事は我々には認識できません。夢の内容と実際の倶雫様の意識の因果関係についての研究は、そら様も不明瞭だと仰っていたではな」
そら「うるさぁぁああいっ!」
 兄との夢見の後に食べようと残しておいたバースデーケーキの残りの皿をヒステリックな妹が投げつけ、レイの顔面の前のバリアで四散し、砕けたそれはそのままゴミ箱へ宇宙人の見えない力で流された。
そら「あんたのそういう割り切った行動が気に食わないのよ!」
レイ「ケーキが散らばるとそら様も困るではないですか」
 宇宙人は妹がどのような夢を見たか、知ることはできない。知らない夢のせいで八つ当たりをされても対処に困る。
そら「あたしだってわかってるわよっ!でも、よりにもよってあたしの誕生日の日に他の女とケーキを食べる夢を見ることないじゃない!」
 夢の中で兄が女と仲良くする事は、それは男性願望として今までもあったのだが、妹はそれを自分のメタファと感じて喜ぶ事もあれば、このように浮気と考えて激怒する事もあるのだ。特に今日は誕生日という事で妹が異常に盛り上がっていたため、怒りの度合いが強い。宇宙人は何年仕えても、妹のこの不条理な感情への対処には困る。
レイ「…………。あ、あの……。そら様が愛し、そら様とそっくりな倶雫様なのですから、夢の中でも他の女性が放っておかないのも当然なのではないでしょうか」
 とりあえず両方をヨイショする方向で宇宙人の外務省が意見を述べた。
そら「当り前よっ!バカッ!夢の中の女もお兄ちゃんの事を『きれいな人』っていってたわよっ!それくらいでヘラヘラついて行くんじゃないわよ!お兄ちゃんも!女の子とケーキを食べたいなら食べさせてやる!」
レイ「そら様、点滴の中にケーキのクリームを混ぜるのはやめてください。分離するのが面倒です」
そら「もう、やあだぁあああああ!お兄ちゃんは起きないし、あんたは宇宙人だし!誕生日なのに!ちっとも楽しくない!」
ロザリオ「そら様、心拍数が異常です。冷静になって下さい」
 わめく妹の胸元から、たしなめる声が。
そら「あたしはお兄ちゃんを愛しているの!だからドキドキもするし怒るもの!」
ロザリオ「そら様。我々は確かに宇宙人ですが、人間の社先生は『共感と配慮』が大事だと仰っていたではないですか」
そら「なんで社が出てくんのよ」
ロザリオ「そら様が倶雫様を愛しているなら、倶雫様の夢に対しても配慮が必要なのではないでしょうか。それを直感したからこそ、そら様は今月は社先生の授業を受けられたのでしょう?そらさまは我々と出逢った日、倶雫様の夢の中の愛を知りたいとおっしゃいました。愛には共感と配慮も肝要と存じます」
そら「そうよ。でも、男のお兄ちゃんの夢に、女の子のあたしが共感するなんて!」
ロザリオ「そら様、共感して同じ精神状態になるより、まず、それが何か、冷静に見つめ直してください。とりあえず、破壊行為よりは有益です」
レイ「どんな夢でしたか?今度は怒らないで我々に教えてください」
そら「http://www8.ocn.ne.jp/~ikitale/diary/9.20.html
 お兄ちゃんは、勝手なのよ。好きでもない女子高生に好かれて、デートして……。その後、一緒にビデオを見たりするんだけど、その女には心を開かなくってさ、自分のことだけ考えてるの。楽しければいいって思ってるのよ。きっと。
 むしろ、お兄ちゃんには世の中は全部資料で、他人事なのよ。でも、そんな自分自身までも冷たい目で見てて、お兄ちゃんの心を知らないで見た目だけで好きになる女をバカにしてるの。

  ホント、どうしようもないお兄ちゃんっ。でも、あたしもそういうバカな女なのかも……そう思ったら……ううっうううううううううううううううううううううううう」
レイ「そら様、良くわかりました。ありがとうございます。そら様はちゃんと共感できているではないですか」
 言葉が止まらない上に嗚咽も重なって震える妹の背を、レイが手袋に包まれた機械の指で撫でて、それ以上の説明は不要と伝えた。
そら「あたしは泣いてるのよ?冷静になんかなれてないっ」
レイ「そら様は12歳になったばかりです。まだまだ、お心は成長できます。それでいいではないですか」
そら「でも、お兄ちゃんはいつ目覚めるかわからないのよ?今、こんな顔を見られたら……」
レイ「倶雫様の覚醒は我々にも予測不能です。ですから確定した話をいたします。倶雫様は女学生が好きな男性なのですね。そして、倶雫様の心の中を判らないバカな女性は嫌いなのですね」
そら「そうよ!」
レイ「それが判っているなら、充分ではないですか。配慮する意志があれば、無知なバカではないでしょう」
そら「……そうかもしれない、いや、きっとそうだわ!あんた、たまにはいい事言うじゃない!あたしはバカ女じゃないわ!なにしろ、何年もお兄ちゃんの心の夢を見ているんだから!
 知識はあるんだから、あとはちょっと気を使えばいいってことよね!」
レイ「まさしくその通りです」
ロザリオ「さすが、そら様」
そら「よし、判った。まず、あたしは世界最高の女学生になるわ!そしたらお兄ちゃんもあたしを好きになるものね!」
レイ「御心のままに」
 そう宣言する妹は、なんとか前向きになったようで、一安心した宇宙人は恭しく礼をする。
そら「レイ、社はまだ生きてる?」
レイ「社先生はまだ四つの家の客室でミイコの看病を受けております。意識は回復されております」
そら「わかった。じゃ、社にはあたしが最高の女学生になるために働いてもらうとするか」
レイ「了解いたしました。では、そら様、帰宅されますか?サイドバイクロンを置いてきましたので、四つの家の近くまでワープいたします」
そら「ええ、そうして。11の11の11は散らかしたのを片付けといて」
11の11の11「了解し、実行いたします」
そら「それじゃ、お兄ちゃん、また明日。あたし、毎日頑張って、毎日少しずつ、いい女になるからね!いつお兄ちゃんが目覚めてもいいように」
 涙を払った妹は、去り際に兄の右手の甲、点滴管の隙間にキスをした。