読みにくいフォントで文章を読むと、意見が中立的に

  • author 福田ミホ
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読みにくいフォントで文章を読むと、意見が中立的に

スラスラ読めない方が、良いことも。

一般的には、意見にバイアスがかかっているのは良くないこととされます。もちろん、意見を持つこと自体は問題ありませんし、ときにはそれを強く主張することも必要になります。でもその意見にこだわるあまり現実認識まで歪めてしまうようになると、困ったことになります。

そんな我々を救うのはフォントかもしれません。社会心理学の学術誌「Journal of Experimental Social Psychology」に掲載された論文によれば、文章を読みにくくすると、個人の持っているバイアスを低減できるそうです。

その研究では、ある一定のバイアスを持った人たちを被験者とした実験を行いました。被験者のうち一部の人たちは死刑について賛成の主張、別の人たちは反対の主張が書かれた資料を読みました。

その結果、読みやすいフォントで読んだ人は、読んだ資料に基づいてより極端な主張をし、読みにくいフォントで読んだ人はより中庸な意見を述べたのです。

別の実験では、ある模擬裁判に関して、一部の被験者には被告を称賛する証拠資料、別の被験者には被告を非難する証拠資料を読ませました。その後両方の被験者に、被告の罪を示すには不完全な証拠を見せました。

すると、被告を非難する資料を読んだ人たちが「被告は有罪」と主張する一方、称賛する資料を読んだ人は「被告は無罪」と判断する傾向が見られました。でも、被告に関する資料を読みにくいフォントにした場合、証拠を見たあとの判断はより中庸になったのです。

つまり、読みやすい資料を読んだ人には与えられたバイアスを鵜呑みにする傾向が見られ、読みにくい資料を読んだ人たちはより懐疑的で穏健だったのです。

読みにくい文字を読むのは、苦痛に違いありません。でも文字をがんばって読むことによって、書かれた内容についての深い思考を促す効果もあるようです。自分が書いたものを推敲するときにも、あえて読みにくい文字に変えてみるとアラが見えやすくなりそうです。逆に言うと、プレゼン資料などでは奇をてらったフォントを使わず、読みやすさ重視にするのが吉ってことかもしれません。

[Science Daily]

Eric Limer(原文/miho)