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「匿名性は信頼性の欠如ではない」、アメリカの匿名掲示板「4chan」創設者がFacebookのマーク・ザッカーバーグを批判

by D I L L W E E D

SXSWの基調講演で、アメリカの2ちゃんねる同様の匿名掲示板である「4chan」の創設者Chris "moot" Poole氏が、「マーク・ザッカーバーグの匿名性に対する認識は間違っている」という旨のスピーチを行いました。

マーク・ザッカーバーグと言えば、現在破竹の勢いで拡大を続ける実名登録型のSNS「Facebook」の創設者ですが、「Having two identities for yourself is an example of a lack of integrity.(2つのアイデンティティを持つことは整合性の欠如の一例だ)」という匿名性に対する厳しい意見を表明しており、Poole氏はこの点について「誤った認識だ」として批判しているとのこと。


インターネットにおける匿名性は、日本でも賛否両論分かれるところと思われますが、アメリカでも匿名性について見直そうという意見が出ているようです。講演の詳細は以下から。Privacy and Security Fanatic: 4Chan Founder Moot: 'Anonymity is authenticity,' Zuckerberg 'wrong'

Chris "moot" Poole氏は日曜日に行われたSXSW(South by Southwest)の基調講演で、匿名性とプライバシー、創造性についての講演を行い、その中で、Facebookのように実名でユーザーがログインした場合「失敗したときの代償が大きい」と語っています。

実名登録を標榜するFacebookに対して、Poole氏が創設した4chanは完全匿名制の掲示板。同じくユーザーが集まって作り上げるメディアでありながら、その姿勢は対照的です。

Poole氏は表現における匿名の自由を信じており、「知らない人同士が一緒になってひとつのものを共有する」ことで、ユーザーはより「柔軟かつ創造的に」なり、実名のもとでは行わなかったようなことにも取り組もうとすると語っています。

また、Poole氏は「ザッカーバーグは匿名性を臆病や信頼性の欠如と同一視しており、それは完全に間違ったことだ。私は匿名性をひとつの信頼性だと捉えている。匿名性によって、なんのフィルターもかかっていない生のままで情報を共有することができる」とザッカーバーグ氏を批判しています。

下の動画はPoole氏による基調講演の様子。

YouTube - moot gives a speech with a hangover @ SXSW part 1/3


YouTube - moot gives a speech with a hangover @ SXSW part 2/3


YouTube - moot gives a speech with a hangover @ SXSW part 3/3


しかし一方で、Poole氏が新たに立ち上げた「Canvas」という画像共有・共同制作のプロジェクトは、これに参加するためにFacebookにログインしてプロフィールを作成する必要があります。Poole氏はこれについて「すべてのユーザーのIDは匿名のままだ。ただ、4chanと違うのは、すべてのコンテンツがアーカイブされ、個別のプロフィールに記録されるということ」と語っており、またこの登録によって潜在的なトラブルメーカーの約20%を排除でき、荒らし行為とスパムを防止することができるとのこと。ビデオの中でPoole氏は「匿名で投稿できる」と語っていますが、これはFacebookにログインしなくても投稿できるということではなく、あくまでログインは必要なようです。

4chanは最初20人未満のユーザーから始まりましたが、今では月間で2500万人のユーザーがいます。しかしそれは、Facebookの6億人にも及ぶと言われるユーザー数に比べればわずかなもの。ザッカーバーグ氏の言う「2つのIDを持つことは整合性の欠如」という主張に対抗するには、まだ弱いかも知れません。

「4chan」の日本語で書かれたトップページ。「4chanは誰でも気軽に参加できます。しかし、このサイトでの争いごとはやめてください。争いはみんなの雰囲気を悪くするだけです。それさえ守っていただけるならば是非友達に教えてあげてください」というメッセージが書かれています。


米上院多数党院内幹事のRichard Durbin氏は、政治活動のために匿名でFacebookを利用できるようにして欲しいとザッカーバーグ氏に求めていますが、Facebookはすでに巨大なIDの生態系を築いており、あたかもインターネットの運転免許証を発行しようとしているかのような様相を見せています。

さらに、匿名性を抹殺しようとしているのはザッカーバーグ氏とFacebookだけではないようです。20年前に「全地球カタログ全地球カタログ)」を発行したスチュアート・ブランド氏は、Facebookがしたように匿名性を排除しようとしました。スチュアート・ブランド氏はBBCのインタビューで「匿名性は重要なことを言う人たちを自由にすると思われているようだが、私には悪口を言っても報復されることが無くなって気軽に相手を侮辱するようになっているようにしか見えない。非常に責任ある立場のビジネスマンや科学者が、匿名で語る場になると、他の人と同じように悪質さと狂暴さを発揮したのを見て、私は愕然とした」と語っています。

また、Googleの元CEOであるエリック・シュミットは、「インターネットには将来匿名性が無くなる」という意見を明らかにしています。シュミット氏はさらに、匿名性は危険なものであり、政府は将来その排除を要求するだろうとも述べています。

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in ネットサービス,   動画, Posted by darkhorse_log

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