オリンパスの北村正仁 コーポレートセンター IT統括本部 本部長
写真●オリンパスの北村正仁 コーポレートセンター IT統括本部 本部長

 オリンパスは、仮想化ソフト「VMware」を使って仮想マシンを社内に提供する、いわゆる「プライベートクラウド」を運用している。2010年4月にリリースし、当初は1年間で100台の仮想マシン提供を目標にしていた。ところが、わずか5カ月強でほぼその目標を達成した。同社の北村正仁 コーポレートセンター IT統括本部 本部長(写真)は「(9月6日現在で)98台の仮想サーバーをサービスしており、2台を構築中だ」という。開発者向けイベント「X-over Development Conference(XDev)2010」で「オリンパスの“社内クラウド”事例」と題する講演を行い、北村氏は利用拡大の状況を説明した。


事業者並みのサービスメニューを用意

 北村氏は「社内クラウドの利用が広がった大きな理由が、サービス事業者並みのきめ細かいメニューを用意したことだ」と解説した。ニーズに応じて利用部門が好みのサービスを選びやすくしたのだ。

 サービスメニューは「Tier0」「Tier1」「Tier2」と大きく3種類あり、CPUのコア数や、メモリーとHDDの容量などが異なる。Tire0とTier1はCPUコア数が1でメモリーが2Gバイト、Tier2はコア数2でメモリーが4Gバイト。HDDはどれも20Gバイトだが、Tier0はSATA接続、Tier1とTier2はファイバーチャネル接続である。

 さらに停止許容時間やバックアップサービスの有無によって、メニューを細分化した。Tier0はバックアップ無しで停止許容時間は1週間と固定のサービス。料金は1台当たり月額数千円と安い。Tier1とTier2はそれぞれシルバー、ゴールド、プラチナの3種類があり、停止許容時間はそれぞれ8時間、4時間、30分となっている。どれもバックアップサービスは標準で用意する。月額料金がそれぞれ違い、ユーザーが選択できる。

 これらに加えオプションサービスも用意する。CPUコア数やメモリー、HDDの増量、Oracleのライセンスサービス、監視サービスなどである。こちらも、それぞれ細かな料金設定がある。

 北村氏によれば、このように明確な料金体系を定めたのは、同社のグループ戦略が背景にあるという。社内クラウドはオリンパス本社に閉じず、グループ会社全体に提供する。提供主体は、子会社のオリンパスシステムズだ。会社組織が異なることから、利用料金は明確にしておくことが望ましかった。「会社組織を別にしてビジネスライクにやり取りした方が、例外的なサービスを求められて運用が煩雑になるような事態も避けやすい」(北村氏)という。

コスト削減とリードタイム短縮を実現

 社内クラウドを提供するそもそもの狙いは、サーバー統合を進めることでコスト削減を図り、システム構築までのリードタイムを短縮することだった。その狙いはほぼ実現できているという。

 最初に用意した物理サーバーは10台。そこで98台の仮想マシンが稼働している。およそ10台のマシンを1台のサーバーに集約できた計算だ。当初は、ディスクアクセスの集中によって、パフォーマンスが劣化するケースもあることを想定していたが、ほとんど問題になっていないという。「仮想マシンは200台以上稼働させられそうだ」(北村氏)。

 運用の効率化という面では、現状は1人の運用担当者が約20台のサーバーを担当しているが、社内クラウドでは1人で約50台の仮想サーバーを運用できているという。マシンを提供するまでのリードタイムは、従来の1カ月半から平均3日にまで短縮できた。特別に要請されれば、最短2時間で提供可能だ。

 今後は提供するOSの種類を増やしたり、24時間365日のサポートサービスを提供したりするなど、メニューを増やしていく計画である。そうして社内クラウドの利用をさらに広げていく考えだ。