ブックナビゲーター(リフレ派田中ヴァージョン)

 なんでも高橋是清が昭和恐慌のときに日銀に国債の直接引きう受けしてそののちその大半を短期間に市中に売却した、ということが、リフレ派批判になるらしい(リフレ派はその事実を知らないとか、そんなに早く市中に売却したらマネーが減少しているだろうとか)。そんな珍説がどうもネットでもリアルでも広まっているという噂を聞いた。それは非常に驚くことである。

 なぜならまさにこのエピソードは、リフレ派を批判するものどころか、リフレ派の主張の核心部分を形成するものだからだ。

 これについては、岩田規久男編『昭和恐慌の研究』や僕と安達誠司さんの『平成大停滞と昭和恐慌』を読んでほしい。Twiiterの過去ログにも説明付であるはずだ。

 で、これも毎回だが、旗幟鮮明な本を出すと、なぜかまるでこの問題についての新参者のように扱われるw もうデフレ脱却なんて10年も同じようなことを書いているにもかかわらず、どこの誰ともつかない人に、僕は初心者扱いであるww 

 で、『震災恐慌!』を読んでもらい、今週末のトークイベントに来場されるのがもっとも最短で僕らを知ってもらういい経路ではある。

震災恐慌!?経済無策で恐慌がくる!

震災恐慌!?経済無策で恐慌がくる!

 だがそれ以外には以下の順で読んだらどうでしょか? というのがこのエントリーの趣旨。いつもな他の人たちのブックガイドだけどたまには(5年くらいブログやってて初めての試みでは?w)、いま現時点の僕の本の読み方順序を書いてみます。

1 入門

なんといってもとっつきやすいのは『AKB48の経済学』。ここにも1頁ぐらいでデフレに陥った日本経済のその「真因」を書いている。

で、次にわかりやすいのが、『雇用大崩壊』。これはリーマンショック以前と以降の経済情勢を、現在にまでひろげても通用するもの。記述も語り下ろしに手をくわえるという感じで、文体の大修正をはじめた契機となった個人的にも重要な本。

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

雇用大崩壊―失業率10%時代の到来 (生活人新書)

2 中核

中核の本としては『デフレ不況』。これは10年分の総まとめのつもりで書いたもの。これと対をなす原論的な本は、野口旭さんとの『構造改革論の誤解』。これは文庫にして出してもらいたいほどいまでも99%使える。で、以下はその各論として

歴史:『平成大停滞と昭和恐慌』
雇用:『日本型サラリーマンは復活する』
経済思想史:『経済政策を歴史に学ぶ』、『日本思想という病』
新卒市場:『偏差値40から良い会社に入る方法』(何人もの人が僕の代表作としてあげている。あわわ。そんなw)
経済論壇へ批判:『経済論戦の読み方』&『エコノミストミシュラン
軽いネタエッセイ:『不謹慎な経済学』

デフレ不況 日本銀行の大罪

デフレ不況 日本銀行の大罪

平成大停滞と昭和恐慌~プラクティカル経済学入門 (NHKブックス)

平成大停滞と昭和恐慌~プラクティカル経済学入門 (NHKブックス)


3 応用

学術レベルなもの。先の『昭和恐慌の研究』、『経済政策形成の研究』。特に後者は山形浩生さんが確しかゼロ年代の経済書の代表のひとつとして選んでいただいた記憶が。じっさいに多彩な著者とこの本でしか読めないオリジナルなアイディアが詰まった論集。

経済政策形成の研究―既得観念と経済学の相克

経済政策形成の研究―既得観念と経済学の相克

以上が、リフレ派のだいたいの啓もう読書リスト(田中の関わった本だけ版)。僕の本以外のブックガイドはこのブログでも何度も何度もやったのでそれを参照のこと。

自分として一番好きな本は、『AKB48の経済学』と『沈黙と抵抗』。まあ、後者は専門書だけどw

AKB48の経済学

AKB48の経済学

財政危機を煽る者+デフレを放置する者の組合せが、震災復興を頓挫させる

 国債を「借金」だと単純に理解している人は一般の人のみならず、影響力のある知識人にも多い。もちろんエコノミストや経済学者の中にも少なからずいる。ところで国債を「借金」だと考えてしまう人たちは、なぜか同じ理屈で貨幣を「借金」だとはみなさないようだ。もし国債を「借金」と同じだと考える人がいて、彼らが「借金はすべて返済するのがいい」という理屈を貨幣にも実行するならば、僕はその首尾一貫性を(微笑をうかべつつ)或る意味でご立派だと称賛するだろう。しかしそんな徹底的な「借金」返済論者をいまだかってみたことはない。

(付記)なんと上に書いた皮肉の対象を、僕だと思っている救いようのない人物がtwitterでつぶやいてた! 大笑い。(付記終)

 ただし歴史的には存在していることも付言しておく(日本人ではなく、ある意味でいっちゃてる理屈をいけるところまでロジックをつめることができるのはやはり論理性を重要視する国々の住民に発生しやすい)。おそらく国債=「借金」返済論者は、自分たちの拠ってたっている論理も十分に考えているわけでもないのだろう。

 ケインズの有名な発言を引用しておく。

「イギリスでは、われわれは所得税の受領書を検査官から受け取るが、すぐにごみ箱に捨ててしまう。ドイツでは、受領書は銀行券と呼ばれ、紙入れにしまわれる。フランスでは公債と呼ばれ、家庭の金庫の中にしまわれる」

 ところで国債をすべて返さなくてはいけない「借金」だと単純にみてはいけない見解は、昨日の岩田先生の『経済復興』にもあるが、私たちの共著『震災恐慌!』では後半はそのような見解にとらわれることなく、財政危機の「真相」に迫り、また復興政策は同時に財政危機の回避でもあることを語っている。

 正直、私たちの見解は、国債を「借金」とイコールにしている見解が多数派をしめている状況の中では、「例外」的なものになってしまっている。残念なことではある。しかし私たちの著書を少なくとも単純な借金返済論者の意見ではない、セカンドオピニオン、しかも重要な意見として多くの読者が読まれることを期待したい。そうしないとあまりに日本は救われない。

震災恐慌!?経済無策で恐慌がくる!

震災恐慌!?経済無策で恐慌がくる!

ネイキッドロフトで5月27日(金曜)開催!

http://www.loft-prj.co.jp/naked/

経済評論家!!上念司 presents

震災恐慌〜経済3次災害を阻止せよ!〜

何もしない日銀と増税したい財務省がもたらす最悪の結末。

地震津波原発を上回る最悪のネガティブショックを阻止するために私たちは 何をすべきか?

今こそ求められる震災復興と日本復活に向けた処方箋を徹底的に語ります!

【出演】

上念司(経済評論家)

田中秀臣(経済学者)

OPEN18:30 / START19:30

前売¥1,500/当日1,800(共に飲食代別)

前売りチケットは前売りチケットは4/25ローソンチケット【L:38983】&当店のウェブにて発売!!