以前に「折り紙で正七角形を折ってみた - tsujimotterのノートブック」という記事を書いていました。
アクセス履歴を見てみると思った以上に好評で、「正七角形 折り方」などのキーワードで多くの方が見に来てくれているようです。
前回の記事には、折り方までは書いていなかったのですが、せっかくなのでまとめてみました。
折り紙は数学的にも興味深い対象です。
どのように面白いかについては、最後の項で熱く語ってみました。
このエントリを読んで興味を持った学生さんは、よろしければ最近話題の「算数・数学の自由研究」の題材にしてみてはいかがでしょう。
ちなみにこの解説は、サークルの飲み会の余興のために作ったものでした。酔っぱらいながらでも、中々楽しんでもらえましたよ。
完成品はコースターにもなります。笑

手順解説のための準備
使うのはもちろん折り紙です。当然ですが1枚で作ることが出来ます。

正七角形の最終到達目標はこちら。

全14ステップでここまで持っていきます。
半分に折った、一番下の部分が正七角形の頂点1に相当します。

上記のように右回りに頂点1~7を定義します。
また、途中で必要となる点A~Eと、中点Mを定義しておきます。
頂点 2 と頂点 3 を結ぶ辺のことを 辺 23 と呼びます。
きれいに折るためのポイントは以下の3つ。
α. 「斜めの線」
β. 「三本線」
γ. 「クロスの線」

これら3種類の線を丁寧に折ることが重要です!
というわけで、実際に折っていくための手順を紹介しましょう。
ぜひ手元に折り紙を用意して、一緒にやってみましょう。
細かい作業が苦手な方向けに、点線に沿って折るだけで完成できる「折り目付きのガイドシート」も作ってみました。よろしければこちらをダウンロードして使ってみてください。
正7角形を折ってみよう(折り方ガイド付き用紙)
Dropbox - heptagon-guide-20140707.pdf - Simplify your life
完成までの14ステップ
それでは進めていきましょう!
印刷して確認したい方は、こちらのPDFをご覧ください。
正7角形を折ってみよう バージョン1
Dropbox - heptagon-instruction-20140707.pdf - Simplify your life

手順1. 折紙を2つ折りにして広げる。これを縦横2回行う。中点 M ができる。
手順2. 上の辺を中央線に重ねて戻す。同様に左の辺を中央線に重ねて戻す。左側の縦方向に1/4線の折り目ができる。
手順3. 左の辺の中点を中点 Aとして、折り目をつけておく。

手順4. 二点A・Bを谷折りして図のように折り目上に同時に載せ 「斜めの線」をつくる。ここで、点 D が出来る。
手順5. 「斜めの線」に折り目をしっかり付けて、今まで折った部分をすべて広げる。

手順6. 左の辺の中点 C を点 D に谷折りに重ねて、点線部分の折り目を作る。
手順7. 図の点線に沿って折り目を付けるようにもう一度山折りし広げる。(「3本線」が出来る)
手順8. 手順7. の「3本線」(一番右)と「斜めの線」が交わる点 E を通るように下の辺を谷折りし、折り目を作る。

手順9. 「3本線」の一番左と中点 M を通るように谷折りする。戻すと図のような「クロスの線」が2本できる。
手順10. 「クロスの線」に対し垂直になるように図の点線部分を山折りする。すると正7角形の頂点 7, 2 が出来る。

手順11. 頂点 2 と中点 M を通る線で谷折りする。
手順12. 図のように正7角形の辺 23 と34 を山折りする。左右反転の操作を行い辺 67と 65も作る。

手順13. 図のように山折りして正7角形の辺 45 を作る。
手順14. 正7角形のできあがり!
正七角形はアツい!
正七角形はなぜアツいか。
それは定規とコンパスで作図できないにも関わらず、折り紙で作ることが出来るからです。
ついでに言うと、そのような正N角形の中で、最小のNが7なのです*1。
定規とコンパスで正七角形が作図できない理由も既に数学的にわかっています。
正七角形の作図に必要なこの部分

の長さが平方根と四則演算だけを使って「代数的に」表すことができないためです。
実際、半径を 1 としたときの上記の長さを代数的に計算してみると、次のような式となり「三乗根」が出てきてしまいます。
−16+163√72(1+3i√3)+163√72(1−3i√3)
「三乗根を作図する」ということは、代数的には「三次方程式を解くこと」に相当するのですが、定規とコンパスによる作図では二次方程式までしか解くことができないのです。
そこで、折り紙の登場です!
折り紙の最大の特徴は「任意の三次方程式を解くことができる」ことです。
この驚異的な性質により、デロスの問題作図不能問題の1つである「任意の角の三等分線を作ることができるか?」も折り紙では解決することができます。
(2014/07/09に修正しました。デロスの問題は3乗根の解根でしたね。)
このあたりの解説は参考文献に投げますが、
とどのつまり、折り紙で三次方程式が解けるために、正七角形は折り紙で作れるのです!
同様の理由で、定規とコンパスで作図できないことで知られる正九角形も、折り紙では作ることができます。
一方で、正十一角形は作図でも折り紙でも作ることはできません。
その理由は、正十一角形に登場する次の五次方程式です。
x5+x4−4x3−3x2+3x+1=0
一般の五次方程式は、代数的な解法がないので、代数的な操作である「作図」「折り紙」では解決できないわけですね。*2
ちなみに正十一角形は、上記の理由を知ってか知らずか、硬貨にも採用されているのですよ。
参考文献
参考文献はもちろんこの本。手順は基本的にはこちらの本の「7.2.1 作品10:簡単な正7角形の折り方」に従いました。図はtsujimotterが作り直して、説明に合わせて一部修正しています。
ウェブ上では、次のPDFも参考になるかと思います。難しめですが、正七角形の折り方の数学的意味についても触れています。
平成 24 年度 上越教育大学公開講座 折紙の数学
http://www.juen.ac.jp/math/nakagawa/openh24origami.pdf
正七角形の一辺の長さを求める式は次の書籍を参考にしました。
*1:正3角形から正6角形までは、「作図」もできるし「折り紙」でも折れます。作図できる正多角形はすべて折り紙で折れることが知られています。折り紙の方が出来ることが多いのです。
*2:「多重折り」という操作を許せば、折り紙により作図可能だそうです。http://repo.flib.u-fukui.ac.jp/dspace/bitstream/10098/7298/1/AA12509441_3(2012)59-66.pdf