川崎裕一 / マネタイズおじさん

元起業家でスタートアップのコーチやってます。スマートニュース株式会社執行役員。

マネタイズの最初の一歩。ウェブサイト体力測定!(2)

の続きです。

なぜか。

それは、ウェブサイトにおける収益化の重要な手段として広告があり、その広告はウェブサイトのページに表示されるからという原則があるからです。

つまり、ページを変えれば「サイト価値」が変化する。結果として「広告価値」が影響を受ける。そして広告が変化すれば「広告価値」が変化し、「サイト価値」に影響を与える。

分かりやすく言えば、バナー広告をページとの馴染みも利用者との相性も、更にページとの文脈も考えずに巨大化し、複数掲載すれば、広告の収益は短期的には上がるかもしれませんが、結果的に利用者の利便性を損ない、結果としてサイトの価値を下げることにつながることは自明です。

成果の出る広告を出すためには、ページにある広告の表示位置、大きさ、体裁を、常に最適な状態にしておくことが大切です。

そして広告を考える際には、利用者がどのような文脈でサイトに訪れどのような順番でページの中にある構成要素を見ているのか。利用者はどのような経路でサイトを訪れたのか、検索エンジン経由なのか、ソーシャルブックマーク経由か、ブログ経由か、ツイッター経由なのか。こういったサイト価値をしっかり見極めた上で考えなければ最適な広告は提供できません。

更にいえば最適な状態というのは常に変化します。今日の最適な状態は明日にはそうではない。

だからページと広告を同時に変化し続け無ければならないのです。

このように継続的に「サイト価値」と「広告価値」を測定し、理解し、行動しなければ、成果の出る広告は提供できないのです。

「サイト価値」の分析をあるアクセス解析ツールを用いてAチームがやる。「広告価値」の分析をある広告配信システムを用いてBチームがやる。でもAチームとBチームでは情報交換していない。これでは最適な広告を提供することはできません。

しかしながらここでいうAチームとBチームが情報交換が根本的にできにくい理由というものもまた存在しています。それは、「サイト価値」におけるPVと「広告価値」におけるimpのすり合わせに時間がかかることがあるためです。

PVはあるユーザーが見たあるページを一回みれば「1」とカウントされます。そしてその中に広告が2本入っていればimpは「2」です。本来はこのようにシンプルなものです。

しかしながらそもそもPVの定義というのがこと日本においては曖昧です。アクセス解析ツールごとのくせがあり、乙社のアクセス解析で測定したPVと甲社のアクセス解析で測定したPVがそもそも異なっているというのはそれほど珍しいことではありません。

あまつさえこのような状態のPVと、更にアクセス解析と広告システムからもたらされるimpを擦り合わせる作業というのは職人芸になってきます。この結果、サイトの広告のimpを正確に把握し、販売することが難しくなります。

すると広告の販売資料である「媒体資料」に掲載する広告のimpは本来でるはずのimpの70%程度を上限にして掲載されることになります。PVの測定とimpの測定を別々のチームが行い、各々の定義が曖昧で共通化されておらず、すり合わせが困難なことから30%の広告売上を失ってしまうのです*1

このように「サイト価値測定」の手段である「アクセス解析」と「広告価値測定」の手段である「広告システム」の基準を合わせることは実はとても大切なことなのです。これは媒体の大きさ、小ささは関係ありません。しかし、傾向として、大きいところはしっかりやるが、小さいところほどしっかりやられておらず機会損失しているケースが多いかもしれません。

この二つの測定を異なるサービス、異なる基準で行うと、その二つの数字のすり合わせと調整に時間と労力がかかります。あまつさえすり合わせの数字はあまり精度の高いものにはならないのです。(続きます)

*1:もちろん、広告の配信ショートのタメのバッファーとして30%が取られることも多いことは知っています。ですがPVとimpが正確に把握できれば30%のバッファーはいらないと思われたことありませんか?