日本語基礎文法最速マスター

もう何番煎じか知らんけど、日本語の文法についてさらっと説明してみる。
日本語といっても、技巧的になる詩や小説とかじゃなく、説明的な文章を対象とする。

(追記: 2010-02-06: 全体的に文章を見直し、細部を修正)

主語はおまけ、述語こそ主役

英語では「主語+動詞」のペアが文法の主役だけど、日本語では「主語」はおまけであり、「述語」だけが主役である。日本語では、主語はあくまで述語を修飾する存在でしかない


たとえば:

I love you.  # 主語 + 動詞 + 目的語

英語では「主語+動詞」というのは欠かせない存在であり、かつ登場する順番も決まっている(特殊な構文は除く)。

これに対し:

- 俺は おまえのことが 好きだよ。 # 主語+目的語+述語
- おまえのことが 俺は 好きだよ。 # 目的語+主語+述語

日本語では、述語さえ最後に来ていれば、「阿部×三橋」でも「三橋×阿部」でもどっちでもよい。「主語+目的語」でも「目的語+主語」でもどっちでもよい。なぜかというと、日本語における主語の役割はあくまで述語を修飾する存在にすぎないので、同じように述語を修飾する存在である目的語と、文法上の重要さでは同じだから。

もうひとつ:

- 親方、空から 女の子が 降ってきた! # 副詞+主語+述語
- 親方、女の子が 空から 降ってきた! # 主語+副詞+述語

主語である「女の子が」と、副詞である「空から」は、どっちが先にきてもよい。述語である「降ってきた」が最後になっていれば、どちらが先でも日本語としては正しい。
ただ、通常は強調したいことを先にもってくることが多いので、この場合なら「女の子が降ってきた」ことよりも「空から降ってきた」ことにパズーは驚いていると思われる。バルス

主語は省略可能

日本語では主語が省略されることがよくある。だって、おまけなんだからしょうがない。

たとえば:

ただの人間には興味ありません。   # 主語がない

これは「私は」という主語が省略されているけど、日本語としてはまったく無問題。なぜなら日本語では主語はおまけにすぎないから、主語が文脈上明らかであれば、省略しても文法上は何の問題もない。

これが英語だと

I'm not interested in ordinary people.

主語である「I」を省略することはできない。また適当な主語がない場合は「形式主語のit」が使われるけど、これも主語を省略できないことによる苦肉の策みたいなもの。

#映画楽しみやなー。超映画批評で80点なんて、期待してまうわ。

修飾する語とされる語は、なるべく近くに

述語さえ最後に来ていれば、それ以外の要素についてはあまり順番にこだわらない日本語だけど、それでも好ましい順番というのはある。それを決めるルールはいくつかあるようだけど、大事なのはたぶん2つ。

そのひとつは、「修飾する語とされる語はなるべく近くに置く」というもの。そうしたほうが、修飾関係がはっきりしてわかりやすくなる。

たとえば:

(A) 俺は、ああ、この二人は本当に人間じゃないみたいだと思った。
(B) ああ、この二人は本当に人間じゃないみたいだと、俺は思った。

この文章では、主語「俺は」と述語「思った」が修飾関係にあるわけだが、この2つが (A) では離れているのに対し、(B) では隣接している。そのため、(A) より (B) のほうが修飾関係がわかりやすく、文章も読みやすい。

たとえば

(A) ...新しい機能は3.0にアップグレードした
    あとで、使うかどうかを決めればよいし、...
(B) ...新しい機能を使うかどうかは3.0にアップ
    グレードしたあとで決めればよいし、...

この例なら「新しい機能」と「使うかどうか」が修飾関係にあり、また「アップグレードしたあとで」と「決めればよい」も修飾関係にある。そしてそのどちらも (A) では離れているのに対して (B) では隣接している。そのため、(B) のほうが修飾関係がわかりやすく、文章が理解しやすい。

え、そんなのどっちでもいいじゃんって?うん、まあ、文法上はどっちでもいいんだけどね、読む人のことを考えると、修飾する語とされる語は近いほうがわかりやすいと思うよ。

ちょうど、変数の宣言箇所と使用箇所は近い方が好ましいのと一緒。ってわかりにくいか。

修飾関係は明確に

好ましい順番を決めるもうひとつのルールは、「修飾関係があいまいな順番はだめ」というもの。そんなの当たり前やんと思うだろうけど、結構難しいよ?

たとえば:

黒い髪のきれいな女の子

この文章にはあいまいさが含まれている。

  • 「黒い」のは髪なのか女の子なのか?
  • 「きれい」なのは髪なのか女の子なのか?


こういったあいまいさを解消する方法はいくつかある。
たとえば:

- 黒い、髪のきれいな女の子   # 句点をいれる
- 黒い髪の、きれいな女の子   # 句点をいれる
- 髪のきれいな黒い女の子     # 順番を入れ替える
- 髪の黒いきれいな女の子     # 順番を入れ替える
- 黒髪がきれいな女の子       # 言葉を変える
- 黒い髪をしたきれいな女の子 # 言葉を変える

やっかいなことに、修飾関係があいまいかどうかは、文法ではなく意味によって決まってくる。
たとえば:

(A) 黒い髪がきれいな女の子  # あいまいさがある
(B) 長い髪がきれいな女の子  # あいまいさがない

この例だと、(A) では「黒い」のが髪なのか女の子なのか、あいまいさが残る。けど (B) では「長い」のは髪であって女の子ではない、つまりあいまいさがない。
似たような文章なのになぜ (B) はあいまいさがないのか。それは、単に「長い女の子」というのが意味としておかしいから、消去法で「長い髪」に決まるというだけのこと。文法じゃなくて、意味によって決まっていることに注意。

ほかの例

(A) ...パスに応じてリクエストを登録してあるアプリ
    ケーションに振り分けてくれます。
(B) ...パスに応じて、登録してあるアプリケーション
    にリクエストを振り分けてくれます。

これだけを読むと、「リクエストを」が修飾しているのは「登録してある」だと思うだろうけど、実はそうではなく、「振り分けてくれます」のほうなんだよね。前後の文章を丁寧に読めば分かるんだけど、これは修飾関係があいまいになっているこの文章が悪い。(B) のように修飾する語とされる語を近くに置くことで、あいまいさを取り除くべき。

「〜の」を続けない

これはよくあるよね、「〜の〜の〜の…」っていう文章。これはうまい文章とはいえない。
たとえば:

(A) 『君に届け』のイケメン役の風早くんが爽やかすぎて死にたい
    # 「〜の」が続いている
(B) 『君に届け』に出てくるイケメン役の風早くんが爽やかすぎて死にたい
(C) 『君に届け』のイケメン役である風早くんが爽やかすぎて死にたい
    # 「〜の」が続いていない

最初の (A) では「〜の」が続いている。これでも意味は通じるけど、文章としてはあまり上手ではない。
これに対し、(B) と (C) では「〜の」が重なるのをうまく避けている。こちらのほうが読んでいて自然である。

ちなみに論文のタイトルだと、「〜の」が 2 つ重なったら最初の「〜の」を「〜における」に取り替えると、うまく納まることが多い。

(A) PHP の GC の改善案について        # 最初の「〜の」を
(B) PHP における GC の改善案について  # 「〜における」に変える

また「〜の」が 3 つ重なった場合は、真ん中の「〜の」だけを変えるだけでよい。
たとえば:

(A) 後ろの席のハルヒの髪型は、曜日によって毎日変わっていた。
(B) 後ろの席にいるハルヒの髪型は、曜日によって毎日変わっていた。

4つ以上重なっていたら、もういっそのこと文章ごと変えたほうがいい。
たとえば:

(A) 俺の後ろの席のハルヒの髪型は、曜日によって毎日変わっていた。
(B) 席が俺の後ろであるハルヒは、曜日によって髪型を毎日変えていた。


#長い髪のときのハルヒのポニーテールの威力は異常。


 * * * * * * * 


というようなのをさ、一生懸命書いてたんだけどさ、Emacs の操作を間違ったせいで下書きのデータが壊れちゃったのさ。だからもう、おしまい。
#つうかこれって、日本語文法の解説ちゃうやん?タイトルに偽りあり。
とりあえず、「日本語では主語は述語を修飾する存在でしかない」というのが分かってもらえれば、それでいいや。


あわせて読みたい