吸着音(英:click)は、子音の一種である。「クリック」もしくは「舌打ち音」と和訳されることもある。
概要
コー語(Xoo)、クー語(Xu)などのコイサン系言語、コーサ語(Xhosa)やズールー語(Zulu)などの南部バンツー系言語など、アフリカ南部の一部言語で使用されている子音で、閉鎖音の一種。
[閉鎖音(英:stop)…口腔内の空気の流れを舌等で完全にブロックしたのち開放することで、気圧の急激な変化によって音を作り出す子音。代表例は[p]や[d]、[k]など]
吸着音の最大の特徴は、世界の母音・子音の大部分で使われる「肺の呼気」を音源発生に使わず、代わりに、いわゆる「舌打ち」と同様の仕組みを音源としていることである。
吸着音の出し方
- 後舌と軟口蓋に閉鎖を作る。
[軟口蓋(なんこうがい)…上顎内側の後部。[k]の発音時に舌が接触する場所] - 同時に、軟口蓋よりも前(両唇、歯、歯茎、硬口蓋、歯茎側面のいずれか)にも舌で2つめの(前側の)閉鎖を作る。
(両唇(上唇+下唇)の場合は舌を使用しない)
[硬口蓋(こうこうがい)…上顎内側の中央部。日本語の「ひ」の発音時に舌が最接近する場所]
この状態で、1.と2.の閉鎖の間に密閉空間ができる。 - 後舌(1.の閉鎖)を密着状態のまま後ろに引き、密閉空間を広げる=気圧を急激に下げる。
これにより、2.の前側閉鎖の前にある空気が閉鎖をこじ開け、中央の密閉空間へ急激に入り込む。
このときに舌打ちのような音が出る。
上述の南部アフリカ諸言語では2.の閉鎖位置(調音位置)によって別々の子音として、もしくは頻繁に肺呼気系子音(破裂音や鼻音など)と同時に発音するなどして使いこなしている。無論、言語によって使用される吸着音の数は異なる。
[破裂音(英:plosive)…肺呼気の圧力が口腔内の閉鎖を前方向に突き破ることで音を生み出す子音]
(吸着音を表す音声記号については→IPAの母音・子音表(PDF)の「Clicks」の項を参照)。
しかし日本語や英語を始めとする多くの言語では、多くの閉鎖子音に破裂音を使用しており、舌打ちはせいぜい「不快感を表す動作」として単独で用いるのみである。
よって、日本語話者を始めとする多くの人にとって吸着音はなじみの無い子音であり、肺呼気系の母音・子音の間にそれ以外の子音を混ぜることも慣れないうちは難しく、習得する際には発音のメカニズムをしっかりと理解する必要がある。興味のある人はいろいろ調べてみるとよい。
関連動画
関連商品(参考文献)
関連項目
- 3
- 0pt