経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・とうとう表れた基調の衰え

2018年12月02日 | 経済(主なもの)
 今週、公表された10月の経済指標は、軒並み強いものだった。この勢いなら、10-12月期のGDPは、3%近い高成長が期待される。ただし、災害続きでマイナス成長だった7-9月期の反動増が大きく、むしろ、基調は衰えを見せる。昨年までの輸出の好調さに慢心し、緊縮型予算で臨んだところ、今年に入って輸出が失速し、緊縮に足を取られた形だ。せっかく、設備投資が動き始めたのに、景気は勢いに乗れずにいる。この分では、次の1-3月期は、再び落ち込むジグザグコースをたどりそうだ。

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 10月は、日銀・実質輸出が前月比+6.6と伸び、7-9月期より+3.0高い水準だった。鉱工業生産も前月比+3.0と、7-9月期比+2.8であるだけでなく、11,12月の生産予測を単純に延長すると+4.0にまでなる。しかし、これらには、7-9月期の実質輸出が前期比-2.1だったり、鉱工業生産が-1.5だったりした反動増が含まれる。災害続きの遅れが上乗せされていて、実勢以上となっており、これが抜ける1-3月期には、逆に大きく下がる要因となる。

 実勢の衰えは、雇用に出ている。10月の新規求人倍率は2.40倍と前月比-0.10となり、頭打ち状態である。特に、製造業や建設業の前年同月の求人増加数が下がっており、飲食宿泊業に至っては、マイナス基調にある。また、労働力調査では、10月の雇用者数は、男女ともプラスになったものの、男性は、6月以降、ピークを超えられないままで、女性も、3か月間、横バイ圏内にとどまり、停滞は否めないところだ。 

 物価を見ると、11月まで公表された東京都区部のサービス(除く帰属家賃)の前年同月比は、夏までの上昇傾向が終わり、秋以降は+0.6に落ち着いてしまった。全体では、エネルギーの高まりで上昇する中、内需や賃金と裏腹の関係にあるサービスには陰りが見える。そして、毎月勤労統計では、9月分までとなるが、7-9月期は、常用雇用の増加が鈍く、現金給与は減退がうかがわれるほどである。

 結局、災害からの揺り戻しで輸出や生産は強くても、基調を示す雇用には弱さが見られる。したがって、10-12月期は高成長になっても、1-3月期になると基調どおりの低成長が表れることになろう。数字が出る4月頃は、消費増税まで半年であり、最終判断を迫られ、「退くも地獄、進むも地獄」という日本流の自暴自棄のセリフが聞かれるかもしれない。そこまでして、消費と物価を抑制しなければならないものか、理解しがたい心性だ。

(図)



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 10-12月期は良くても、1-3月期が心配というのは、消費にもある。10月の商業動態の小売業は、前月比が+1.2にもなった。こちらは、名目値であるにせよ、ボーナスの6月以来、着実に増えている。それにもかかわらず、7-9月期GDPの消費がマイナスであったのは、物価上昇が大きく押し下げたからである。これが10-12月期は一服するため、消費が大きく伸びることが期待される。むろん、それは一過性のものに過ぎない。

 10-12月期には、前年実績が反映されるボーナスが含まれ、消費を浮揚させる方向に働くが、これも1-3月期に続くわけではない。勤労者世帯は、収入が伸びている割に、消費が振るわず、消費性向が低めだ。この背景には、雇用の伸びの停滞があり、景気ウォッチャーや消費者態度指数の雇用の項目は、まだ底入れしていない。消費についても、1-3月期は、なかなか思うようにいかないだろう。

 そんな中でも、設備投資は、10月の資本財生産(除く輸送機械)が+1.8と3か月連続の増となり、反動増を感じさせない動きとなっている。先行きも、11月+2.0、12月+4.6と高い。輸出の失速にもかかわらず、高収益と人手不足の下で、順調に推移している。こうして、設備投資が先導し、賃金が上昇するという展開になってもらいたいものだ。ところが、そこへ外国人労働者を入れて、冷まそうとするのがアベノミクスである。

 厚労省の「外国人雇用状況の届出状況まとめ」によれば、2017年10月時点での前年同月比は+19.5万人であり、労働力調査における2017年10月での雇用者数の前年同月比が+61万人だった。このボリュームからすれば、賃金の上昇に影響がないとは言いがたい。しかも、賃金が劣悪な上に、仕送りの多い外国人労働者では、国内消費への波及も薄まる。賃金や物価がなかなか上がらない原因の一端は、ここにもある。

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 「ネオリベ」の連中は、移民だの緊縮だので、賃金と物価を徹底的に抑制し、金融緩和を進めて資産価格を高騰させ、破格の利益を得ようとする。国民経済の産出力の増強を図る実体的な成長とは、無縁の存在だ。自由とか財政再建とかの美名の陰には、独善たる強欲がある。米国を反面教師に、そんな国にはしたくないと思ってきたが、グローバル・スタンダードとありがたがるうち、あらぬ道へと引き込まれてしまったようだ。


(今日までの日経)
 日米、貿易投資拡大で一致、トランプ氏、F35購入に謝意。社会保障費、自然増5000億円 来年度予算案。

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