「日常のくだらないやりとりを楽しむ」か、「未体験の日常に触れて成長する」か? ―「日常系」に関する私的まとめ
シャケだああああああ!!! ハバネロです。
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それはさておき、「日常系」って不思議な言葉というかジャンルじゃないですか?
「日常系」ニアイコール「『あずまんが大王』の系譜を組む萌え四コマ作品」的な考えもあるような気がしますが、どうなんでしょうか。
ちょっと色々と気になったので私的な「日常系」のまとめみたいなのを。
「あずまんが大王」から連なる、「仲間内のくだらないやりとり」の系譜
今回の記事を書く直接のきっかけはこちらの記事でした。
・全力で友達を笑わせようとする学生のリアル、それが『日常』の一面! - ピアノ・ファイア
「学生同士で友達を笑わせようとしてる感じ」と言いますか、(女子同士の関係はよくわかりませんが)男子同士の付き合い方としてはリアルに感じたり、郷愁を覚えたりする空気ではないでしょうか。
「日常」という作品は日常系としては特異点な気がするんですが、なるほどこうして考えると、あずまんが大王を祖とする日常系の系譜にきっちりとあてはまるな、という印象でした。
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「らき☆すた」や「けいおん!」もそうですが、「仲間内のくだらないやりとり」がリアリティ、あるいはノスタルジーを表す重要な要素として機能していると言えるでしょう。
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今季放送されているアニメだと「Aチャンネル」はまさに典型例ですし、10月からアニメ化される堀田きいちの漫画「君と僕。」もその色合いが強いです。
「君と僕」は女子高生じゃなくて男子高校生の日常モノですが、やってることは他の作品とさして変わりがありませんw
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【旧作】 黒歴史アニメ 「するめいか」 最終回【第一期】 ‐ ニコニコ動画:GINZA |
こういう具合に、いま「日常系」と言うと、中高生の少年少女がくだらない日常的なやりとりをやってるイメージ、というのが湧いてくるかな、という気がします。
乱暴な言い方をしてしまうと、これはそのまま萌え四コマの系譜、と言ってしまってもいいかもしれません。
日常のなかで触れるキラキラしたモノが、心の成長を促すというもうひとつの系譜。
さて、そんな萌え四コマ的な「仲間内のくだらないやりとり」でくすっと笑わせてくれるような作品の他に、日常系にはもうひとつの系譜があるような気がします。
それは、「日々の中で出会う何気ないものの大事さ」を魅せてくれるタイプの作品です。
その代表格としてあげられるのは、「あずまんが大王」の作者あずまきよひこによる「よつばと!」です。
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天野こずえ「ARIA」やヨシノサツキ「ばらかもん」も非常にそれと近い印象を与えてくれます。
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このように「日常系」のもうひとつの系譜として、その『場』で生活している人にとっては何気ないモノが、主人公にとってはかけがえの無いモノに見える、ということがあるんじゃないでしょうか。
「外側」からやってきた主人公が未体験の日常ゾーンに触れるカタルシス、と言い換えることもできますね。
「よつばと!」ではよつばは小さいから何もかもが未経験、「ARIA」では、地球からやってきた灯里にとって火星の街であるネオ・ヴェネツィアの風習や日常は新鮮な物ですし、「ばらかもん」では半田先生は東京からド田舎の五島列島にやって来ます。
そういう意味では、「けいおん!」という作品は萌え四コマの系譜を持ちながら、特にアニメ版では唯が楽器演奏・バンド活動という未体験日常ゾーンに触れていく、というもうひとつの系譜を合わせ持った作品と言えるかもしれません。
・参考→けいおん!の演奏シーンという『非』日常性とノスタルジーについてのメモ書き - 日々の御伽噺
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「未体験日常ゾーンを体験する」タイプの日常系作品ではもうひとつ、内面の成長が描かれるのも特徴的な要素です。
先ほど例に挙げた「ARIA」と「ばらかもん」を再び引き合いに出しますが、両作品では日常に触れていくことで起きる主人公の内面の成長が少しずつではありますが描かれていきます。
「ARIA」においては、灯里が水先案内人(ウンディーネ)として、「両手袋(ペア)」から「片手袋(シングル)」を経て、一人前のプリマウンディーネになるまでがきちんと描かれていますし、「ばらかもん」では、人格的問題から田舎に島流しにされた書道家・半田先生の成長が物語のひとつの軸になっています。
そこで今季のアニメを見てみると、こちら側の系譜を色濃く引き継いでいるのは「花咲くいろは」なのではないかな、と。
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放送当初「朝ドラアニメだ」なんて言われてましたが、朝ドラってまさに日常の世界ですよねw
日常系アニメがあふれる時代の「日常」の在り方
ここまでで、日常系、と一口にいっても大きく分ければ二つの系譜があるんじゃあないだろうか、ということを述べてきましたが、「系譜」は二つあっても「やろうとしていること」は本質的には同質です。
その「やろうとしていること」はリアルの中にあるファンタジーを描く、ということ。
実在の場所を背景として忠実に再現し、仲間内のくだらないやりとりで「あるある」という感じを抱かせる「リアリティ」を保ちながらも、「こういう生活がしてみたい」「日々の中での再発見」「二次元的なキャラクター設定」といった「ファンタジー」な要素を見せていく、という手法は「日常系」の作品に共通の手法と言えるでしょう。
・参考→日常系としての新しさと古典性/ノスタルジー ー日常系としての『日常』の新しさー - レスター伯の躁鬱
現在、そのような日常系の作品が世間には数多く存在します。
そんな中で、「日常」という作品はどういう位置づけになっていくのでしょうか。
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最初に述べたように、ゆっこ・みお・まいちゃんの三人のやりとりは「萌え四コマ的」な日常系の系譜と言えますが、一方であの不条理なギャグ展開の圧倒的物量はその枠を明らかにハミ出ていますw
また、女子高生三人組ともうひとつ、軸をなしている東雲研究所の面々(はかせ・なの・阪本さん)はどちらかというとドラえもん的というか、藤子F不二雄的な「SF=すこしふしぎ」な世界観の住人であると言えます。
さて、「仲間内のくだらないやりとり」を重視するタイプの日常系作品としては、同じ京都アニメーション製作ということもあり、「日常」は「らき☆すた」や「けいおん!」の流れを組んでいると言えるのでは、ということは最初に述べました。
おそらく「らき☆すた」がそういった日常系アニメブームを作ったひとつの原因であると思うのですが、その少し前に京都アニメーションが製作し大ヒットを飛ばした作品といえば、「涼宮ハルヒの憂鬱」があげられます。
ちょっと考えてみると、「ハルヒ」と「日常」は全く逆の構造を持っていることが分かります。
非日常的なSF要素を高校生活という日常で覆う(そして、物語としては一貫して非日常から日常への回帰を描いている)、という構造を取る「ハルヒ」に対して、「日常」では、日々の生活を不条理ギャグやSFっぽい非日常的要素で覆う構造を取っています。
「ハルヒ」を経て、「らき☆すた」「けいおん!」で日常系アニメブームを確たるものにした京アニですが、その次に「日常」が来るということは、ヒットメーカーとしての京アニを考えると、非日常→日常への回帰、そして日常系の時代を経て、再び非日常に向かおうとしているのかもしれません。
後で考えてみたら、「日常」が「日常系アニメの時代」に終止符を打った、という形になる可能性はゼロではないような気がします。
まあ、「日常」を見てる時の僕はそんな難しいこと微塵も考えないで爆笑してるわけですが。
難しいことを考えないで楽しめる、というのもまた、「日常系作品」の大きな特徴でありセールスポイントでもあるわけですから。