アイマスDSのあらすじ

 アイドルマスターDS。販売実績的にはそれほどでもなかったようすながら、根強いファンを抱えるアイマス番外編。
 映像にも音質にも見るべきところはないDSソフトだったのだけれども、不思議と、僕にとっても、ぬぐい去れない印象を残した。
 ふと思い立ち、もうそろそろ良いであろうと勝手に判断して、僕なりの解釈で、あらすじと、若干の所見を記す。当然ネタバレ。


水谷絵理
 
 「踊ってみた」系の投稿動画が新進気鋭の尾崎プロデューサー(P)の目にとまり、デビューすることになったひきこもり。順調に見えたアイドル活動だが、ネット上に「えこ贔屓されている」と悪評が立ち始めたことで事態は急転。なんと尾崎Pが失踪してしまう。
 
 絵理を密かにプッシュしていたのは、テレビ局長の五十嵐だった。かつてアイドルであった尾崎をプロデュースしていたのは、彼が愛し、引き上げた息子雄太。だがそれがスキャンダルとなり、尾崎たちのユニットriolaは解散してしまう。失望し失踪した彼の息子の罪滅ぼしとして、局長は尾崎のプロデュースする絵理を援助していた。

  
 「あなたは、同じ間違いを繰り返そうとしている」。絵理は局長に告げ、援助もPもなしで、自らの実力を証明するためにステージに立つ。自分の犯した過ちに気づいた局長は、責任を取って辞任。尾崎も過去と決別し、あらためてプロデューサーとして生きることを決意する。


 

☆尾崎プロデューサー、五十嵐局長、そして五十嵐雄太という三人の悲しい大人たちが登場。絵理がどうしてひきこもっていたのかについては、最後まで明かされない。つまり、そんなことはどうでもいいということだろう。絵理を中心として、過去からの因縁が再演され、そして彼女の活躍により、解決される。どこか不思議な雰囲気が漂う。サイゼ・・・。


秋月涼
 
 女顔に悩み、男らしくなりたいとアイドル事務所の門を叩いた彼は、どういうわけか女性アイドルとしてデビューさせられる。「トップアイドルになることができれば、素性を明かしてもよい」という約束を信じ、活動に励む涼の前に現れたのは、別事務所のアイドル、桜井夢子。当初は親切を装うものの、その実、姑息な手でライバルを排除する少女だった。夢子は芸能界において有力な後ろ盾のないことに挫折し、捻くれてしまっていたのだ。

 
 彼女の本心を知った涼は、彼女を立ち直らせるためにも、嘘偽りのない自分を見せることを誓う。しかし、今や女性アイドルとして人気を博している涼のカミングアウトを妨げたのは、まさに芸能界そのものであった。すっかり仕事を干された涼に救いの手を差し伸べたのは、彼の才能と正体を見抜いた音楽プロデューサー、武田蒼一。

 
 「老若男女、皆が口ずさむような歌を歌う存在、それがアイドルだ」。彼の手助けと助言によって、ゴールデン番組内での正体告白が成功する。驚いたことに、涼のファンたちは、彼が実は男でも変わらず、むしろよりいっそう熱烈なエールを贈るのだった。


 
アイマス史上、最大最強の敵が登場。対して、自らの夢を叶え、失意の夢子を救い、武田の信念をも実践してみせるのは、アイマス史上初の男の娘アイドル、秋月涼である。コミカルタッチのラブロマンスであるのと同時に、女装英雄叙事詩の系譜につながる?名シナリオ。あとアイマスDS内唯一と言える尊敬できる男、武田蒼一。色々特異点


日高愛
 
 かつて伝説とも呼ばれたS級アイドル・日高舞を母に持つ主人公は日高愛。何をやっても母を引き合いに出されることにウンザリした愛は、自分自身もアイドルになって、一人の人間として認めて貰うことを決意した。

 
 しかし、元気と大声だけが取り柄の彼女は、毎度オーディションに落選。めげそうになるところを、偶然通りかかった765プロの有名アイドル、天海春香に応援され、何の間違いかラストチャンスをものにする。めきめきと頭角を現し、次々と強力なアイドルたちとの勝負に勝利していく愛。そんな愛娘の姿を見た日高舞は、突如芸能界復帰を宣言する。かつて各種芸能賞を総なめにしながら、彼女が突如引退した理由とは、「勝負になる相手がいなくてつまらなかった」からだったのだ。
 
 今や国民的トップヒロイン日高愛、そして伝説のトップアイドル日高舞。二人の決戦のために選ばれた曲は、舞の最高の持ち歌であり、これから生まれてくる、彼女の娘のために捧げられた『Alive』。ステージを競い合う中、舞は突然歌うことをやめる。それは、娘の歌う『Alive』に聞き惚れたからだった。ついに母に勝利したことを喜ぶ愛だが、「張り合いができた」と大喜びで芸能界完全復帰と再戦を告げる母の言葉に、絶句する。


 
☆家族へのコンプレックスという点では、アイマス無印水瀬伊織を思い起こさせるシナリオ。また、親の七光りや有力な後ろ盾への言及は水谷絵理シナリオを、一人の人間としての自分を求めるという点では秋月涼シナリオを想起させる、アイマスDSの総括的シナリオである。
 個人的には愛ちゃんが最初のオーディションに合格するというあたりから「あり得ないルート」に分岐している認識なので、大声でがなる愛ちゃんがトップアイドルになっても、舞さんが会場に戦車で突入してきても別に驚かない。

 そうそう、涼シナリオで謎の失踪をしたまなみさんの事情が分かるのは愛シナリオにおいてである。彼女に関しては別に記事を投稿したので必要であれば参照のこと。


 

 不思議とプレイ後感が良いことに長らく悩んでいたが、あらすじをまとめてみて気づいた。アイマスDSのヒロインたちは、どれも主体的に物語を動かしていく。つまり、きちんと主人公として物語に関与する。

 無印やアイマス2の主人公は、プレイヤーであるプロデューサーであって、アイドルではなかったのはもちろんなのだが、その次元を越えて、彼女らは文字通りのヒーローとして、悩める大人たちを救っていくのだ。

 こんなに分かりやすい、まるで古典的な筋書きのお話なのだから、読後感がすっきりしていても当然だった。おまけに、可愛くて歌って踊る・・・。


 
 (注:参考映像)