日本の国会、対テロ共謀罪の法案可決

参議院の与党議員たちが起立して新法に賛成した(15日午前)

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日本の国会は15日朝、テロ攻撃の共謀行為を計画段階から処罰できるようにする法案を可決成立させた。「共謀罪」を含む「改正組織的犯罪処罰法」については、国内で反対の声も多い。

安倍晋三首相率いる連立与党などは参院本会議で、採決を強行した。複数の野党は廃案を声高に求めていた。投票総数235票のうち、賛成165票、反対70票だった。

日本政府は2020年東京五輪までにテロ警戒態勢を強化し、国際組織犯罪防止条約の締結に不可欠だと説明してきた。しかし反対勢力は、法律の文言があいまいで、市民の自由を損ない、罪のない一般市民の不当な監視を可能にするなど乱用の恐れがあると批判する。政府は、法に従う一般市民には適用しないと主張するが、反対の声は根強く、法案に反対して国会議事堂前をはじめとする各地で、連日のように抗議集会が開かれていた。

新法は277の対象行為について、計画段階で犯罪とみなし、処罰を可能にする。政府は当初、国際組織犯罪防止条約の解釈上、対象犯罪は676で減らせないと主張したが、 多くの反対に遭い、今国会で「テロ等準備罪」法案に名称を変更して提出する際、対象犯罪を半減させた。

対象行為には、資金調達や現場の下見など犯罪の準備行為が含まれる。「組織的犯罪集団」の一人が、犯罪準備した場合、その集団全体が訴追され得る。集団とはこの場合、二人以上の者と定義されている。

対象行為にはテロの実行に関するものなど重大犯罪も含まれるが、反対する人たちは、音楽の違法コピー(著作権法違反)や保安林のキノコ狩り(森林法違反)など、より軽い犯罪も対象になることを批判している。

これについて政府は、違法な音楽コピーやキノコ狩りなどは犯罪組織の資金源になる可能性があると説明してきたが、毎日新聞は4月の社説で「海の幸の違法採取はどうなのか。盗んだ海産物を売れば資金源になりそうだが、対象犯罪ではない。山と海では何が違うのか」と書き、対象犯罪を選んだ基準が「政府の説明では分からない」と批判した。

採決にあたって自民、公明両党は、委員会採決を省略できる「中間報告」の手続きにもとづき、一方的に参院法務委員会の審議を打ち切り、本会議採決を強行した。

反対勢力はこれについて、安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部を国家戦略特区に新設することをめぐる問題で、首相への追及が続くことを阻止するのが目的だったのではないかと批判している。