上司が「評価基準」を明確に示すべき

あたりまえだが、職場にはいろいろな人がいるし、自分にとって快適なリズムは人それぞれ違う。何も言わずに放っておけば、みんな好きなようにやるに決まっているのだ。しかし、こと仕事に関しては、あまりにも極端なマイペースは直してもらう必要がある。ところがそれをせずに、仕事は丁寧だがいつも期限に間に合わない人や、仕事は速いがミスを連発する人を黙認し続けることは、組織全体に「質さえ高ければ(スピードさえ速ければ)、遅れても(雑でも)いいんだよ」というメッセージを送っていることにほかならない。これはあまりいい影響を与えないだろう。

この状態を改善するには、多少独断でもいいから、上司が望ましい速さや丁寧さの規準を定め、それを繰り返し周知徹底することだ。

質を重視する職場であれば、「少しくらい期日に遅れてもなんとかなる。その代わり、絶対に他社に負けない素晴らしいものをつくれ」。スピードが命の部署なら、「ある程度のレベルを超えたらその時点で提出しろ」というように、わかりやすい規準を示すことである。

仕事が遅いけれど丁寧な人は、「丁寧にやる」ということに対するこだわりが強すぎる。結局、スピードを出すかどうかは意欲の問題である。それをしないのは単にスピードアップしようという意欲がないだけだ。本当は走れば間に合う能力があるのに、点滅する黄信号を走って渡らないのは、走ったら疲れるし、息が切れるというだけの理由だ。たいていの場合、急げばスピードアップするのである。

このようなタイプは、「スピードを出すことに対する意欲の足りなさ」を、仕事の質の高さや正確さで補っているともいえる。しかしそれは決して褒められた話ではなく、そうするのが自分にとって一番楽だから、そのスタイルを貫いているだけだ。このような、遅くなったせいで周囲に迷惑をかけている自覚がないタイプには、上司がはっきりと、「いくら完成度が高くても、期日に間に合わなければ無意味だよ」と言わなければならない。