以前、農薬取締法について と言うエントリと、そこから派生して特定農薬にならなかった資材について を書きましたが、つまり特定農薬の候補に挙がった検討資材については使用者の自己責任で使っても良いよと言う話でした。
 農薬取締法だけを読むならそういう話は出てこない(登録農薬と特定農薬【3種類だけ】以外の資材は農薬として使ってはならない)ので、例え検討資材であっても使ってはいけないはずだと、私はずーっと思っていたのですがそうではなく、また検討資材には「明らかに安全である」とはとても言えない物がたくさん含まれていたので(効果もありそうにない)、かなりショックでした。


 さて月日は流れていて、検討委員会は重ねられているらしく、今年の2月4日にとりあえず進んだと言えるものが上がっています。


農林水産省/特定防除資材(特定農薬)について
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/


特定農薬(特定防除資材)の検討対象としない資材について(平成23年2月4日)
http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/pdf/honnbunn.pdf  (pdfです)


 これによると、別表http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tokutei/pdf/beppyou.pdf  (pdfです)に上げられたものは特定防除資材として検討しないことが決まり、農薬としては使用できないことになりました
 この中で注目は別表2で、中にジベレリンやボルドー液の材料などが入っています。これらは登録農薬としても存在するもので、要するに「登録農薬を使え」と言う意味であり、これまで「無農薬農法のために」登録農薬でないボルドー調剤を使用していた農家は禁止となりました。


 とはいえよく読むと前回のエントリで上げた検討資材全てが使用禁止になったわけではなく、依然検討中の資材は暫定的に使用できそうな感じです。その検討中資材のリストが上がっていないのでよくわからないのですが、例えば木酢液や焼酎などです。
 農薬取締法ではやっぱり「登録農薬と特定農薬(3種の)以外は使用禁止」と書いてあるので、検討中資材も使用禁止とし、特定農薬として承認されたら改めて使用可にすれば良いのにと思います。


 この話を知ったのは、twitterに流れてきたとある農家のブログだったのですが、「木酢や海水、石灰といった今まで有機農業で頼りにされていた資材が使用できなくなった」と言う表記が気になりました。
 私に言わせれば、農薬が使えないからと言ってそういう(農薬以外の)資材に頼ろうとするのがすでに本当に有機農法の精神から外れているように思います。


 農取法の定義から言えば海水だって農薬目的に使えば農薬で間違いないのでして、むしろ安全性が農薬ほどには確かめられていない資材を使って何が良いのだと思います。
 こういう考え方において「無農薬」とは単に「無農薬と言う看板が欲しいだけ」でしょうし、言葉を変えれば「叩いちゃいけないといわれたから、蹴飛ばした」のような言葉遊びに過ぎません。
 有機や減農薬を本当に意味のある試みにするならばまずそもそも農薬を必要としない土作りであったり、異種混作であったり、物理的防除(テデトールなど)が肝要で、そして無ではない減農薬であればおそらく「農薬をいかにして使わないか」ではなく「いかに上手に農薬を使うか」を考えた方が正解は早いです。


 そして大前提として、それらの試みが作物の品質を上げること、環境負荷を低減すること等に向かっていなければなりません。ただ単に農薬を減らした程度で野菜が美味しくなったり安全性が高まったりするほど世界は楽じゃありません。


 ところで木酢液に関する検討http://www.maff.go.jp/j/council/sizai/tokutei_noyaku/11/pdf/data4_3.pdf では、市販の木酢液を調査したところ平均300ppm近く、最大600ppmを越えるホルムアルデヒドが検出されているのですが、そういうものをふんだんに使用する「有機野菜」について化学物質過敏症患者はどう思うんでしょうかねえ。