【グローバルアイ】水俣と福島
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2011.06.18 09:42
数年前、熊本県水俣市に出張した。私たちには水俣病でよく知られているところだ。100年前ここにできた化学会社「チッソ」の工場は1950年代、水銀が含まれた工場廃水を川と海に流してしまった。水銀に汚染した魚介類を食べた人と動物は、四肢のしびれや精神錯乱を起こして死亡していった。水俣病が確認されて今年で55年になる。
記者が訪問した水俣市は平和な漁村だった。水銀に汚染したスラッジは除去され、長年にわたって禁止された釣りと操業も再開された。水質調査の結果、今では日本でも有数のきれいな海水を誇る水俣は、今まで偏見と差別を経験してきた。
チェックインするため海辺にある5階建てのホテルに入った。アニメーション「千と千尋の神隠し」の旅館を連想させる建物、日本で最も長い洞窟温泉があるという案内文に引かれて予約したところだった。ところがホテルの入口にある宿泊客歓迎名簿には私の名前一つしかなかった。職員の案内を受けて部屋へ向かう途中、90年代に韓国で人気を呼んだ歌が流れていた。「これは韓国の歌謡曲のようですが…ひょっとして今日の宿泊客は私一人でしょうか」。20代前半の若い女性職員は親切な笑顔でうなずいた。「韓国のお客様がいらっしゃった場合は、歓迎の意を込めて韓国の音楽をかけています。私ども全職員は今日、お客様一人に最善を尽くしてお迎えします」。