X-MENになるまで『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』

X-MEN:ファースト・ジェネレーション』を観に行ってきました。前夜祭の盛り上がりをちらちらと散見して、初日に期待値をあげて出かけましたが、その期待を上回るくらい楽しい面白い作品でした。X-MENシリーズをきちんと観ておらず、事前の知識はあまりなかったのにこれだけ楽しめたのだから、きっとシリーズをちゃんと観ている人はもっと楽しめるでしょうね。や、もしかしたらよく知らないからこそ結構楽しめたのかも、という気もしてきた。それくらいとっつきやすい作品だったのです。
プロフェッサーXとマグニートーの若き日を描くわけですが、この2人がたいそう魅力的。環境や生い立ちによる思想や理想や世界のとらえ方の違いが、彼らのその後の生き方を運命づけてる。この2人の関係性を軸に、X-MENの特異な能力を持つミュータントたちが参集するわくわく感やそれぞれの特殊能力などの見せ場、キューバ危機という実際の歴史を利用した虚実皮膜の外連などが詰まっている。冷戦時の世界情勢などもクドく説明的にならないさらっとスタイリッシュに見せるのがうまい。
なによりチャールズを演じるジェームズ・マカヴォイとエリックを演じるマイケル・ファスベンダーのはまりっぷりですよ。すばらしいキャスト。インテリジェントで、自信家かつジェントルなチャールズは、ずば抜けたテレパシー能力を持っている。彼はこめかみに指をあてて集中して、人の心を読んでいく(あるいは人の心のなかに入り込む)のですが、そのポーズの様になってることったら、もう、ね(あとエリックの後方にいるときの斜め立ちもたまらなくカッコいい)。対するエリックの憂いに満ちた面立ち…タートルネック姿がこれほど似合うとは(タートルネック=ミステリアスの方式にはまるエリック)。怒り、悲しみが彼の磁力をあやつる能力と直結している。2人は対照的だけど、それは太陽のあたる月の表側と、影になってる月の裏側みたいに表裏一体なんですよね。特異な能力を持つミュータントとして生まれてきてしまった苦悩を分かち合えるこの2人が親友となることは必然だった。自分たちという存在の孤高や疎外感に由来する思想を共にし、誰よりもお互いのことが分かっているがゆえに、いずれ別々の道を歩む運命であることを最初からきっと自覚していたんでしょう。軸となるこの2人のドラマがよかった。
各地から参集するX-MENたちのキャラをテンポよく説明的になりすぎず見せるのも長けてましたね。ミュータントたちの幼さと練習により段々能力を制御できるようになる過程の見せ方がうまい。やっぱり練習が大切なんだな。ビーストは『シングルマン』でコリン・ファースと海辺で全裸で戯れる大学生だったニコラス・ホルトなんですね。パンフで確認しておぉっと思った。ナイーブだけど触る者みな傷つけるリバー・フェニックス枠(?)のハボック(ルーカル・ティル)もよかったし、音波の使い手バンシー(キャブラ・ランドリー・ジョーンズ)のちょいダサ加減も適切。X-MENたちの衣装のデザインがレトロモダンな感じでまたよかったな。そんなX-MENたちの中で重要な役を演じていたのがミスティーク(ジェニファー・ローレンス)。彼女のさみしさ、ありのままの自分を受け入れるまでの過程のドラマはX-MENの前日譚としては必要な要素だったでしょうね。そう、これは“X-MENになるまで”の物語。遺伝子の突然の進化により特殊能力を持ってしまった彼女は、そうである自分を受け入れられなかった。普通の人間でありたいと思い続けてきた。ありのまま自分を受け入れる、アイデンティティを確立するための道程には、同種の仲間がいることを知ること、そして名前をつけることが必要だった。自分たちは進化した存在X-MEN、自分の名前はミスティーク、ミュータントである自分を誇りに思うこと。同監督の『キックアス』もまず名前つけてから行動してましたよね。敵に対して名乗りをあげたり、必殺技に名前をつけたり…名付けにより世界に自分をどう位置づけるか意識する。
そしてX-MENであることを受け入れるために御膳立てされた悪役はケヴィン・ベーコン演じるセバスチャン・ショウ率いるヘルファイヤークラブなわけです。悪役としては必要十分な存在感でした。ケヴィン・ベーコンはもすこし恰幅がよくてもいいかもしれないけど、安定の“悪い感じクオリティ”はさすが。あと、ヘルファイヤークラブのミュータントがめっぽう強いっていうのもいい。CIAでの大殺戮はすごかったな。というか皆殺ししすぎだろうに。チャールズ及びエリック、そしてミスティークらミュータントたちも敵役がいて、自己規定することができる。はたして自分は世界及び人類に対してどういう位置に立つのか。
最後にミスティークたちX-MENのとる選択は、それぞれの立場で自分のアイデンティティを確立し受け入れたことを示してる。さー、これから始まるぞ。次回作もこのキャストで、あるよね?その前にこれまでのシリーズも観たいな。

X-MEN:ファースト・ジェネレーション』監督:マシュー・ヴォーン 出演: ジェームズ・マカヴォイマイケル・ファスベンダーケヴィン・ベーコンジェニファー・ローレンスニコラス・ホルト
http://movies2.foxjapan.com/xmen-fg/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18524/
かっこいい
※ファスベンダーのドイツ語、英語つかいこなしっっぷり
※ミスティークやビーストのCGに頼りすぎてない特殊メイクもよかった