沖縄県産グルクン激減 潜り手不足 食卓届かず 水揚げ拠点 宮古・伊良部


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約800キロのグルクンが入った袋網を海面に一気に引き揚げる=2008年7月(花城太撮影)

 【宮古島】沖縄県内で宮古島市伊良部のみで行われる伝統漁の潜り手不足で、県魚のグルクン(和名・タカサゴ)の水揚げが激減し、県内市場に県産グルクンがほとんど流通していない事態となっている。県水産海洋技術センターによると、県産グルクンは同市伊良部の大型追い込み漁「アギヤー」で8割が漁獲されているとみられる。だが潜り手の不足により5月以降、漁が行われておらず再開の見通しも立っていない。これに伴い県内大手スーパーでは県産グルクンがほとんど流通しておらず、一部では県外産を取り扱っている。県産グルクンが県民の食卓へ届きにくい異例の状況だ。

 現在アギヤー漁は伊良部島の国吉正雄さん(65)が率いる国吉組の7人のみが行う。組の最年長は80代で平均年齢は60歳を超える。6月に1人が辞め、現在潜り手が不足している。国吉さんは「ダイバーの人員が足りない。再開の見通しは立たない」と話した。

 県内の大手スーパーによると、現在県産はほとんど扱っていない。サンエーとイオン琉球は奄美群島から取り寄せている。食料品店などで提供されているから揚げにはベトナムから輸入した冷凍物が使用されることが多いという。

 サンエーの仕入れ担当者は「鮮度の問題があり、グルクンの漁法としては追い込み漁が最も適している。今後は県外産が増えてくるのではないか」と予測した。県水産課は「アギヤー漁は県魚グルクンを確保する上でも大切な漁法だ。地元漁協とも調整しながら後継者づくりを進めたい」とした。
(梅田正覚、知念征尚)

 <用語>アギヤー漁
 サンゴ礁に沿って移動するグルクンを追い、潮流を読みながら袖網や袋網を張り、魚群を複数の潜り手で追い込む伝統漁法。1877年ごろに与那城漁民が編み出したとされる。伊良部島へは大正初期ごろ、糸満漁民が伝えたとされる。糸満や八重山でも盛んだったが、現在は伊良部島のみで行われている。グルクンの漁獲量は日本復帰の1972年以降、81年の1244トンがピークだった。グルクンは70年に県魚に指定された。