深刻さを増す出版不況、電子書籍の進化、大規模チェーン店の攻勢等々で全国の中堅・中小書店が窮地に追い込まれていることは何度も当コラムで触れてきた。

 出版業界を取り巻く厳しい環境の下、ある地方書店が目新しい試みを実施し、業界関係者の注目を集めた。個人のつぶやきをネット上に投稿する「ツイッター」を使い、読者をリアルな書店に誘導するというのがミソだ。

 岩手県盛岡市を中心に店舗を展開する「さわや書店」の「なう」を追った。

知る人ぞ知る「手描きポップ」の元祖

 本稿読者に馴染みは薄いかもしれないが、書店や出版業界で「さわや書店」(岩手県盛岡市大通)の名を知らぬ人間はいない。ここは、店員の一人ひとりが徹底的に書籍を読み込み、独自に売れ筋を見出した上で販売する「ソムリエ型」を定着させた書店なのだ。

 同書店が発信源となり、ベストセラーが生まれることも珍しくない。つい最近では『永遠の0(ゼロ)』(百田尚樹著、講談社文庫)を3000部以上販売し、同書を全国区のロングセラーにした。また、1986年に発刊された『思考の整理学』(外山滋比古著、ちくま文庫)に再スポットを当て、150万部のヒットに導いたのも同店だ。

 そうしたヒットの起爆剤となったのが、書店員が売場に設置する小さな広告「ポップ」である。さわやは小さな販促グッズの積極活用を全国的に広めた元祖的存在としても知られる。同書店の展示書籍を参考に売場作りを行う他の地方書店も少なくない。

 さわやの本店、各支店は、書店員の手描きポップが溢れ、手作り感が満載だ。デジタル化された現代の流通業の中で、時代の流れに逆らうようなアナログの代表格とも言える。

ツイッターポップをリアルタイムで書店内で表示

 だが、そんなアナログのイメージが強いさわやが、実は早い段階からツイッターの利用を開始し、各店員がお薦め書籍をつぶやいている。10月10日からは2週間にわたって、岩手大学と共同でツイッターを利用した新企画「さわやポップ大賞」を展開。地元客やメディアの注目を集めた。