福島原発設計者の告白「大津波は想定せず設計」「私自身も原発を設計したので極悪人だ」 | すくらむ

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 ※「連合通信・隔日版」(2011年3月17日付No.8438)からの転載です。連合通信編集長は、この記事を配信するにあたって、「原発事故をめぐる報道では、『安心』を強調するものが目立ちます。不必要な不安をあおるのは論外ですが、現実は正確に見るべきです。原発設計者らの分析・見解を紹介します」とコメントしています。同感です。(★「連合通信」の購読申し込みはこちら


 「大津波は想定していなかった」/福島第一原発の設計者明かす/原子力資料情報室の記者会見で


 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故に関して、NPO法人の原子力資料情報室は3月16日夜、都内で記者会見を開いた。このなかで、同原発の設計を担当した元東芝の小倉志郎氏が「設計条件に(今回のような規模の)津波は想定されていなかった」と告白。日本の原発の「安全神話」がいかに虚構であったのかが明確になった。


 ●甘すぎた設計条件


 小倉氏は会見で、福島第一原発の第1~3号機と5~6号機の設計を担当し、主に災害時の消火システムを手がけたと自らを紹介。そのうえで、今回の大震災が「原発の設計条件をはるかに超えるもの。非常時に備えたシステムを多重に仕組んでいたのに、全く稼動していないことに驚いている」と語った。


 具体的には、設計当時に耐震基準を決めた際に「マグニチュード8.0以上の地震は起きないと言われた」と明かし、大津波についても「(設計条件に)与えられていなかった」と述べた。「その後、東京電力と東芝で大津波に耐えられる設備増強を検討したが、大丈夫との結論が出た。そのときの津波想定も今回の震災よりもはるかに小さかった」とも語った。


 ●地震立国を加味せず


 甘い設計が許された背景については、福島第一原発が日本で初期に建設されたことを挙げた。設計自体を米国原発メーカーのゼネラル・エレクトリック(GE)社に依存した状態で、「乱暴な言葉を使えば、国内の技術者は無知に近いレベルだった」と発言。「その後に東芝独自で設計した部分も、GE社の規格を踏襲してしまった」と語り、地震が多発する日本特有の条件がほとんど加味されていなかった事実を暴露した。


 会見は日本外国特派員協会で行なわれ、各国の報道機関の記者が参加。小倉氏の告白に対して、厳しい質問が投げかけられた。


 ●厳しい指摘相次ぐ


 米国人記者は「福島第一原発が建設される前の1960年にチリ地震(マグニチュード9.5)が起きていた。なぜ設計で考慮しなかったのか」と指摘。放射能漏れの原因は津波で核燃料を冷やすシステムが失われた点にあるとして、「システム装置を原子炉よりも海岸近くに置き、地上にさらしていたのは疑問。外国の原発では(水が低いところへ流れる性質を利用して)冷却水プールを原子炉よりも高い場所に置いているケースが多い。なぜ低いところに設けたのか」と批判した。


 小倉氏は現在、新潟県の柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える立場。しかし、記者の指摘に対しては「まったく同感」とうなだれた。


 ▼〈用語解説〉/福島第一原発
 福島県大熊町、双葉町に位置し、東京電力が1971年に営業開始した。日本で最も古い原発の一つで、計6機の原子炉があり、各炉に69~94トンの核燃料を抱えている。3月16日に白煙を上げた3号機では、昨年9月から使用済み核燃料を再利用して発電する「プルサーマル」が実施されていた。



 〈緊急連載〉/福島原発で何が起きているのか(上)


 東京電力福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故は深刻な事態だ。一体何が起きていて、何をもたらそうとしているのか。3月16日の原子力資料情報室の記者会見で飛び出した専門家の見解を紹介する。


 ■「チェルノブイリが頭に浮かぶ」/

  元東芝原子炉格納容器設計者 後藤政志氏


 事故を防ぐ作業環境は悪くなっている。


 6機ある原子炉のうち、1号機と3号機は水素爆発で建屋がなくなり、2号機も原子炉を守る格納容器の一部に損傷が生じている。大震災の発生時は運転していなかった4号機でも、使用済み核燃料を保管するプールの水位低下による燃料の高熱化が原因とみられる火災を起こしている。5~6号機でも核燃料の熱が高まってトラブルを起こす心配がある。


 ●ヘリ放水の効果に不安


 事故原因は、核燃料の熱を取る冷却水を動かす電源が津波ですべて喪失されたことだ。核燃料は水で冷まし続けることではじめて放射能漏れを防げる。すでに原子炉周辺では多量の放射能が漏れているので、作業員は近づけず、原子炉の状態も把握できなくなっているだろう。(自衛隊の)ヘリコプターが原子炉に水をまいているが、上空も強い放射能があふれているはずで継続して注げるかどうか。余震の発生も心配だ。


 事故の規模がどこまで広がるか分からないが、少なくとも東京周辺に住む人は、低い線量でも被ばくを受け続けることになるだろう。それ以上の被害が出るかは、風向きなどの気象条件で変わるので不確定。ただし、私は(25年前の)チェルノブイリ事故を思い出さずにはいられない。


 ●原因は設計にアリ


 東京電力の事故後の対応には問題もある。原子炉の爆発を防ぐために圧力を減らそうと、ダクト(空気管)を開いたが管が細くて圧力がうまく逃げていない。本来は火災を消すために使う水を核燃料の冷却に回そうと管を新たに設けたが、あくまで臨時で信頼性は落ちる。


 しかし、そもそも問題は原発の設計段階で安全が確保されていなかった点だ。


 欧州では原子炉の格納容器内に放射能漏れを防ぐフィルターを設けているが、日本では「サイズが大きい」として採用が見送られてきた。その真の理由は「今回のような過酷事故が起こらない」と考えられてきたこと。「原発が地震や津波に弱い」との懸念は国内でも長く指摘されてきたのに、政府や電力業界は無視し続けた。


 ●「私も極悪人だ」


 東電は、柏崎刈羽原発が2007年の新潟中越沖地震で放射能漏れを起こしたのに、「安全は保たれた」として再稼動した。「悪い成功体験」が震災の想定を甘くして、今回の事故を引き起こした。


 私自身も原発を設計したので極悪人だ。今、現地で多くの人間が被ばくし、体を犠牲にしながら作業にあたっている。それを思うと心が痛んで…(涙で声が出ず)。